78.ゴブリン殲滅作戦開始
作戦が決まり、ゴブリン殲滅作戦を開始しようとしたその時、俺の地図に新たな『警戒』の点が、別方向から現れた。
「待て! 何かが近づいてくる」
俺達は身を潜め、状況をうかがっていた。
幸い、その点は俺達に向かってくることはなく、村の方へと進んでいった。
「よかった、気づかれたわけじゃなかったらしい」
「兄ちゃん、あれ見て!」
アヤの指差す方向を見てみるとー
そこにいたのは、ゴブリンではなくオークだった。
「なんでこんな所にオークが!?」
「もしかしたら、オークがゴブリンの村を攻撃しに来たのか?」
「セイジ様、どうやら違うようです」
オークは何故かゴブリンたちに向かって跪き、持ってきた大きな箱をゴブリンに渡していた。
「なんで、オークがゴブリンに従ってるんだ? どう見たってゴブリンよりオークのほうが強いだろうに」
「あ、セイジ様! あれの中に人が入っています!」
「なんだって!!」
よく見るとオークが持ってきたのは、人が閉じ込められた檻だった。オークが人を拐っていたのはゴブリンに渡すためだったのか! しかし、何故ゴブリンはオークに人を拐わせていたのだろう? イマイチよく分からん。
そうこうしている内に、オークは村から立ち去っていった。
「早く、あの人達を助けないと」
「まて、まずは雷精霊で様子を見てみよう」
【雷精霊召喚】を実行し、雷精霊が登場した。
「また偵察? あたいは偵察精霊じゃないんだけど~」
「仕方ないだろ!」
「わーったわよ!」
アヤの追跡用ビーコンを一時的に雷精霊へ付けて、偵察に行かせた。
村にはゴブリンだけではなく、体の大きなゴブリンも居て、普通のゴブリン達に指示を出したりもしていた。
「あの大きなゴブリンはなんだろう?」
「あれはホブゴブリンです」
エレナが教えてくれた。
更に調査を続けると、人が捕らえられている建物を見つけ、精霊は中に潜入した。
「あ、人が働かされてる」
「何かを作らされていますね」
「何を作らされているんだろう?」
精霊は作っている品物に近づいた。
「あ、魔石です」
「ゴブリンがオークを使って人を拐っているのは、魔石を作らせるためか」
「でも、働いてる人達、なんかバラバラだね」
そう、働いているのは年齢は12歳くらいから50歳位まで年齢も性別もバラバラ、魔石が作れる人を狙ってさらってきているわけじゃ無さそうだ。
精霊がとなりの部屋に移動すると、一人の職人っぽい人が、大勢の人に魔石の作り方を教えていた。
『もし、魔石の作り方を覚えられなかったら、ゴブリン達に殺されてしまいます。皆さん、頑張って魔石の作り方を覚えましょう』
『『はい』』
なるほど、適当に人を拐ってきて、無理やり教えこませているわけか。
精霊は、偵察を終えて戻ってきた。
「ありがとう、助かったよ」
「また魔法で村を壊滅させるか?」
「いや、今回はいいよ」
「そうか、それじゃ、あたいは帰る」
そう言うと、精霊は帰ってしまった。
「直ぐに助けに行きましょう」
「いや、当初の作戦通りやろう」
「なんで?」
「人質が多すぎる。あの人達を盾にされたら戦えない」
「そうか~」
「だから、ゴブリンを村からおびき出して倒す作戦のほうがいい。エレナもいいな?」
「はい」
俺達は、予定通り作戦を実行に移すことにした。
「アヤ、初っ端はなるべく少なめで頼むぞ」
「分かった」
アヤに追跡用ビーコンを付け直して、ゴブリン釣りに向かわせ、俺とエレナは目印となる大きな木の下に移動し、アヤの映像を見ながら待った。
アヤは拾った小石を、村の近くの森の中からゴブリンに投げつけた。
「ファ!?」
小石がゴブリンの頭に当たり、ゴブリンが、小石の飛んできた方向を振り向くと、アヤが『お尻ペンペン』していた…… お前は子供か!!
「フゴッフゴッ!」
小石をぶつけられたゴブリンが、アヤに向かって走りだし、そのゴブリンの行動に気がついた他の2匹のゴブリンも、それに続いた。
「兄ちゃん、3匹釣れた」
「よし、いい感じだ! エレナ、頑張るんだぞ」
俺は応援の気持ちを込めて、エレナに【クイック】と【バリア】、ゴブリンたちに【スロウ】の魔法を掛けた。
「ご覚悟を!」
エレナは、【魔力のロッド】を右手に持ち、オドロキ戸惑っているゴブリン達に駆け寄り、テニスのバックハンドの様なフォームで、一番手前のゴブリンの脇腹を打ち抜いた。
スパーンッ!
攻撃されたゴブリンはすっ飛び、キリモミ回転しながら離れた位置の木まで飛んでいき、衝突してそのまま動かなくなった。
あまりの出来事に、残ったゴブリン達は呆然としていた。そしてエレナは…… エレナも呆然としていた。魔力のロッドの威力に、自分で驚いてしまったのだろう。
「エレナ! 気を抜いちゃダメだ!」
「あ、はい!」
俺の声を聞いて気を引き締め直したエレナは、残りのゴブリンに慎重に近づいた。
残った二匹のゴブリン達は、おじけづいて後ずさりしている。
「ギッ!」
ゴブリン達は追い詰められ、1匹が闇雲にエレナに向かって突進してきた。エレナは少したじろいだが、グッと思いとどまり、突進してくるゴブリンを押し戻そうと、魔力のロッドをゴブリンの胸辺りに向けて突き返した。
ドンッ!
エレナの突きによって、ゴブリンは後ろに吹き飛び、もう一匹のゴブリンに衝突し、二匹はもつれ合ってぶっ倒れ、動かなくなった。
「エレナちゃん凄い! 二匹同時に倒した!」
「え!?」
エレナは自分で自分のした事が信じられないようで、オドロキ戸惑っていた。
「エレナいいぞ! この調子だ!」
「はい」
「よしアヤ、次も同じくらいでよろしく」
「はーい」
アヤが次に連れてきたのは、5匹のゴブリンだった。
「ごめん、ちょっと多くなった」
「よしエレナ、まずは魔法で攻撃だ」
「はい!」
エレナは左手に【水のロッド】を持ち、【豪雨】の魔法でゴブリン5匹の真上に雨を降らせた。以前より魔力が上昇したためか、雨の勢いが物凄い。
豪雨にもがき苦しむゴブリン達だったが、1匹だけ豪雨から抜け出して来てしまった。
「ちゃんと雨に当たりなさい!」
豪雨の周りで準備していたアヤは、雨から抜け出てきたゴブリンを蹴飛ばして、中に押し返す。
やがて、雨が上がると、5匹中4匹は溺れて動かなくなっていたが、1匹だけ、まだ息があった。
「エレナ、1匹残ってるぞ」
「はい!」
エレナは、右手に持った魔力のロッドで、最後のゴブリンを殴り飛ばし、トドメを刺した。ロッド二刀流もいい感じだ。
エレナの貴重な戦闘シーン……
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