69.味噌バターコーン
製粉工場を出ると、もうすぐお昼という時間になっていたので、俺達はラーメン屋を探す事にした。
「さーて、どこのラーメン屋にするかな~」
ラーメン屋を探していると、エレナが何か上の方を見つめていた。
「セイジ様、あの大きな髭の男の人の肖像画は何ですか?」
どうやらエレナは広告の看板が気になっていたようだ。よく見るとあの看板、どことなくドレアドス王に似ている気がする。
「あれはウイスキーの看板だな」
「ういすきーですか?」
「麦から作ったお酒だよ」
「それであの男の人は麦の穂を手に持っているのですね」
「じゃあ、ウイスキーでも買っていくか」
「兄ちゃん、エレナちゃんにウイスキーを飲ませる気?」
「わ、私はお酒は飲めませんよ?」
「違う違う、ドワーフの武器屋さんが居たろ? あの人へのお土産にしようかと思ってな」
「なるほど、あの人お酒が大好きだったもんね」
「あのー、お土産でしたら、アリアさんの所の子供たちにも、何か買って行ってあげてもいいですか?」
「そうだなー、小麦粉も大量にあるし、小麦粉で何か美味しいものを作りに行くか」
「はい、それはいいですね! あの子達もきっと喜びます」
「それじゃあ、ちょっと買い物してラーメン食べた後は、お土産渡しにやっぱり異世界に行くか」
「はい」「はーい」
そうと決まれば買い物だ。
まず、有名なコンテストで金賞を受賞したというウイスキーを購入した。たった180mlで5千円もしやがった、たけーよ!
あとは小麦粉料理に使う、北海道の新鮮な牛乳や卵なども購入した。お土産はこんなもんでいいかな。
俺達はやっと、美味しそうなラーメン屋を探し出し、カウンター席に座り、3人それぞれ別々のラーメンを注文した。
俺は、チャーシューメン
アヤは、ホタテラーメン
エレナは、味噌バターコーンラーメンにした。
「ホタテうまうま~ エレナちゃんにもホタテ1個あげるね」
「アヤさん、ありがとうございます」
むむむ、アヤのくせに生意気だ。
「じゃあ、俺はチャーシューを2枚やろう」
「セイジ様、ありがとうございます」
俺とアヤが睨み合いで火花を散らしている真ん中で、エレナは味噌バターコーンホタテチャーシューメンを美味しそうに食べていた。そういえば、エレナは箸を普通に使って食べてるけど、もうこんなに箸の使い方が上手くなったんだな。
「それじゃあ、まずは『スガの街』に行くぞ」
「はい」「はーい」
俺達は札幌の裏路地から『スガの街』へと飛んだ。
そこからは、いろんな街の各ギルドを色々周った。
1『スガの街』
・『冒険者ギルド』
【スライムの核】の納品。
+50G×40=2000G
【狼の牙】の納品|(『35.危険な夜道』参照)
+100G
◆ギルドポイント:+70(合計105)
・『商人ギルド』
【小麦粉】25kg×1袋の納品。
+2500G
・『職人ギルド』
【マンドレイクの根】×10本購入
ー100G×10=-1000G
薬品の売却
【病気軽減薬+1】×2
+30G×2=60G
【病気軽減薬+2】×1
+40G
【傷治癒薬+1】×29
+150G×29=4350G
【傷治癒薬+2】×30
+200G×30=6000G
【傷治癒薬+3】×1
+400G
2.『ニッポの街』
・『冒険者ギルド』
【大ネズミの前歯】納品
(『35.危険な夜道』参照)
+50G×4=200G
◆ギルドポイント:105→111
・『商人ギルド』
【小麦粉】25kg×1袋の納品。
+2500G
・『職人ギルド』
【マンドレイクの根】×3本購入
ー100G×3=-300G
3.『ドレアドス王都』
・『商人ギルド』
【小麦粉】25kg×1袋の納品。
+2500G
・『職人ギルド』
【マンドレイクの根】×10本購入
ー100G×10=-1000G
『スガの街』で【スライムの核】を納品した時点で、3人のギルドポイントが100を超え、冒険者ランクは『E』から『D』に上がった。ちなみに、次の『C』ランクに上がるために必要なギルドポイントは300だそうだ。
ゴールドは、なんと合計で18350Gも増えてしまった。しばらく金策はしなくても済みそうだ。これを日本円に両替出来れば、日本でも贅沢な暮らしができるんだけどな~
そんなこんなで、お土産第一弾、武器と防具の店のドワーフのおっちゃんに会いに来た。
「こんにちは~」
「おぉ、この前の兄ちゃんじゃねえか、って名前なんて言ったっけ?」
「ははは、お互い名前を言ってませんでしたね、俺はセイジです」
「そうだったけか、わしは『ガムド』って名だ。改めてよろしくな」
俺とガムドさんは、ガッチリと握手をした。
「所で、今日は何のようだ? 武器か? 防具か?」
「その前に、今日はお土産を持ってきたんですよ」
「土産ってまさか……」
俺はニヤリと笑みを浮かべて【ウイスキー】をテーブルの上に置いた。
「エールじゃないのか。でも、これは酒、なんだろ?」
「ええ、俺の故郷の酒の大会で1位になった酒ですよ」
「なんじゃと!?」
ガムドさんは、ガタッと身を乗り出してきた。
「まあ、まずはストレートで」
俺は、インベントリからグラスを取り出し、ほんの少しだけウイスキーを注いだ。それと同時に、やわらかく甘いモルトの香りが辺りに広がった。
「な、なんだ、この香りは! これが酒の香りなのか!?」
「では、一口どうぞ」
「う、うむ」
ガムドさんがおそるおそるグラスを口に近づけると、強い香りが鼻を通り抜けた。ガムドさんは一瞬たじろいだが意を決して口に流し込んだ。
口に入れた瞬間にガツンと来た後に、スッキリしているのにコクの有る濃厚な味わいが口いっぱいに広がった。
「……」
ガムドさんは無言で後味の余韻に浸っていたが、いつの間にか目から一滴の涙がこぼれ落ちていた。
「おじさま! どうなさったのですか!?」
「嘘だ…… こんな旨い酒が、この世にあるはずがない……」
「そんなに美味しかったの?」
「ああ、ああ、もう旨いなんてレベルじゃない……」
「喜んでもらえてよかったです、俺も持ってきた甲斐がありましたよ」
「くそう、こんな旨い酒を持って来られたら、ワシはどうすればいいんだ! こんな旨い酒を買うような金は無いぞ!」
「今日は酒を売りつけに来たんじゃなくて、防具を買いに来たんですよ。それに、これはお土産で持ってきたんですから、差し上げますよ」
「そうか、防具か! ようし! お前たちにぴったりな最高の防具を作ってやるからな!!」
俺達は、ハイテンションになってしまったガムドさんに寸法を測ってもらったり防具の希望を伝えたりしたが、防具が出来上がるのに一週間かかるということなので、ガムドさんにまかせて俺達は店を後にした。
なるべく平常心を保とうと努力をしている最中です……
ご感想お待ちしております。




