63.職人ギルド
2015/07/06 02:37 漢字間違いだった「制作」を「製作」に変更
翌朝、アヤとエレナと合流し、宿屋の食堂で朝食を食べているとー
「兄ちゃん、昨日の夜は何処に行っていたの?」
「へ?」
「トボけたって無駄なんだからね!」
「セイジ様、昨日の夜、遠くで物凄い雷が何度も鳴ってて、怖くなって私達、セイジ様の部屋に行ったんです」
「か、勘違いしないでよね! 私は別に全然怖くなかったけど、エレナちゃんが怖がるから仕方なく行ったのよ」
アヤは、わざと言っているのだろうか?
「別に隠してるわけじゃないよ、昨日は試してなかった危険な魔法を使ってみただけ」
「『危険な魔法』なにそれ!? どんな魔法?」
「【雷精霊召喚】」
「精霊!? 見たい見たい!」
「私も見てみたいです」
「後でな」
朝食を食べ終わり、食後のお茶を飲んでいる時、
俺は、ある事を思い出した。
レベルと雷の魔法レベルが上がって、MPや魔力がかなり増えた。
もしかして、それによって【追跡用ビーコン】の数も増えてたりするんじゃないか?
物は試しとアヤに【追跡】魔法をかけてみた。
成功した!
4つ目の【追跡用ビーコン】をアヤに掛ける事ができた。
さらに、そこら辺に居た女性にも【追跡】魔法をかけてみるとー
5つ目の【追跡用ビーコン】も掛けることが出来た。
6つ目は掛けられなかった。
現在の俺のMPは5010、魔力は505なので
おそらく、MP1000もしくは魔力100毎に【追跡用ビーコン】が1個増えると考えるべきだろう。
今後はそれを目安にすることにしよう。
「兄ちゃん、さっきから何してるの?」
「いや、なんでもないよ」
朝食を終えた俺達は、後片付けをしていた宿屋のおばちゃんを呼び止めて、自作した薬を買い取ってくれる所がないか聞いてみた。
どうやら『職人ギルド』というものがあって、そこで買い取ってくれるそうだ。
俺達は、早速『職人ギルド』に向かった。
『職人ギルド』は、市場のような雰囲気だった。
でかいショッピングモールのような広さで、エリアが幾つかに分かれていた。
調理、薬品製作、革細工、木工、石材加工、金属加工などのエリアがあった。
薬品製作エリアの入り口にエリアの総合窓口があったので、話を聞いてみた。
「すいません、薬品を買い取ってもらいたいんですが」
「薬品の買い取りでしたら、3番窓口にお願いします。」
窓口のお姉さんに無愛想に説明され、3番窓口へ
「すいません、薬品を買い取ってもらいたいんですが」
「ここに出しな」
3番窓口のお兄さんに、無愛想に言われ
窓口の机に薬品を出した。
「あーダメダメ、こんな容器じゃなくて、ギルド認定の瓶に移してもらわないと、
瓶の販売は1番窓口なので、そっちに行って」
「あ、はい」
なんかたらい回しにされてる感じだ。
1番窓口の受付は、若い女性だった。
「すいません、ギルド認定の瓶が欲しいのですが」
「えーと、薬の種類ごとに瓶が違います。どの薬の瓶がご入用ですか?」
なるほど、そういうシステムか。
「えーと、【体力回復薬】、【病気軽減薬】、【火傷治癒薬】の3種類です」
「それぞれ、1瓶2ゴールドです。お幾つご用意いたしますか?」
「【体力回復薬】を3個、【病気軽減薬】を6個、【火傷治癒薬】が20個お願いします。」
俺はそう言って58ゴールドをテーブルに置いた。
受付の女性は、俺がテーブルに置いた58ゴールドを不思議そうに見つめ首を傾げながら、変な石を並べて何かをしている、何をしているんだろう?
しばらくしてその女性は
「合計で58ゴールドになります」
と言って、ドヤ顔で俺の顔を見た。
俺が、テーブルの上に置いた58ゴールドを指さすとー
「え?」
女性は少しびっくりしながらゴールドを数え始めた。
「ちょうど、58ゴールド、です……」
どうやら、暗算に驚いているようだ。
そして、女性は、さっきのドヤ顔から一転してションボリした顔になってしまった。
もしかしてこの人は、計算の技能が自慢だったのかな?
そうだとしたら、ちょっと悪い事しちゃったかな?
あ、そうか! さっきの、変な石を並べていたのは計算機のようなものだったのかも。
女性は、しょんぼりしながら薬用の小瓶を出してくれた。
瓶に薬を移し替える作業が出来る場所が無いか聞いた所、作業用のテーブルに案内された。
そのテーブルで、薬を小瓶に移し替える作業を終わらせ、やっと3番窓口に戻ってきた。
ここまで長かった……
「薬を瓶に詰めてきたので、買い取りをお願いします」
「はい、それでは、ここに並べて下さい」
俺が、瓶を並べると
「あれ? これは同じ薬ですよね? 何故分けて置いているのですか?」
「えーと品質が+1~+3で違うので、分けたんだけど?」
「ああ、【鑑定】技能をお持ちだったのですか、失礼しました。
しかし、規則ですので、こちらで鑑定し直す形になりますが、よろしいですか?」
「はい」
受付のお兄さんは、薬の瓶をトレイに乗せて裏に持っていき、薬を鑑定してもらって戻ってきた。
「確かに、申告頂いた通りの品質でした。
それで、こちらが薬の買取価格になります」
渡された紙には薬の買取価格が書かれていた。
・体力回復薬 無印:5G、【+1】:7G、
【+2】:10G、【+3】:20G
・病気軽減薬 無印:10G、【+1】:15G、
【+2】:20G、【+3】:40G
・火傷治癒薬 無印:25G、【+1】:27G、
【+2】:50G、【+3】:100G
「この価格で買い取りますが、よろしいですか?」
「はい、お願いします」
さて、この難しい計算はどうやってやるつもりだろう
そんなことを考えているとー
お兄さんは、並べられていた【体力回復薬+1】を手に取って、代わりに7ゴールドを置いた。
次に【体力回復薬+2】を取って、10ゴールドを置いた。
そして、【体力回復薬+3】を取って、20ゴールドを置く。
なるほど、1個ずつ個別にお金に替えていくのか。
しばらく見ていると、【病気軽減薬】まで終わった所で、【火傷治癒薬】の【+1】と【+2】を飛ばして、処理を進めていた。
この2種類は9個と10個で、数が多いから後まわしにしているのかな?と思っていたら……
「おーい、サラ! こっち頼む」
お兄さんは誰かを呼んだようだ。
そこに現れたのは~
1番窓口の女性だった。サラと言う名前なのか。
サラは、俺達に気が付いて恐縮したような表情で挨拶した。
「これの計算を頼む」
「はい」
どうやらサラは、ここの計算を一手に引き受けている人みたいだ。
サラは『27×9』と『50×10』の計算を始めた。
さすがに『50×10』は素早く計算を終えたが、『27×9』の計算は物凄い時間がかかった。
ここの人たちは、こんな計算能力で本当にやっていけてるんだろうか? ちょっと心配になってきた。
結局、薬の買取価格は
【体力回復薬】が37ゴールド、
【病気軽減薬】が130ゴールド、
【火傷治癒薬】が843ゴールドになって、
合計1010ゴールドだった。
サラは一仕事終えた充実感を感じている顔をして、持ち場に戻っていった。ご苦労様でした。
今度は、薬の材料の販売をしている場所を聞き、2番窓口にやって来た。
「すいません、【マンドレイクの根】はありますか?」
「えーと、1個100ゴールドで在庫は7個あるよ」
2番窓口のおばちゃんが答えてくれた。
「それじゃあ、7個全部ください」
「はいよ、まいどあり」
やった、これで【精力剤】が作れるぜ!
そう、【マンドレイクの根】は【エリクサー】の材料だが、【精力剤】の材料でもあるのだ。
え? 【精力剤】を使うのかって?
あはは、彼女いない歴と年齢がイコールの俺が、使うわけ無いじゃん!
まあ、あれだ、【薬品製作】のレベル上げ用だよ。
あー、でも、いつかそういう時が来たら、使うかもしれないけど、まあ、可能性の問題だよ、可能性の。
「ねえ、兄ちゃん、そんな変な根っこにお金使いすぎじゃないの?」
「そそそ、そんな事は、ないよ~」
「お金の残りが、だいぶ少ないんじゃないの?」
「うん、まあ、そうだけど」
「じゃあ、さっさと魔物を倒しに行ってお金を稼ごうよ、それに精霊を見せてくれる約束忘れてないよね?」
「ああ、忘れてないよ」
俺達は『職人ギルド』を後にした。
正直、暗算が出来ない人達の世界って、イマイチ想像できないな~
ご感想お待ちしております。




