59.3匹のオークと…
俺達は、森で【薬草】探しをしていた。
俺の【鑑定】を使って、森の入り口付近の薬草を採取してた所、【薬草】120本、【紫草】30本、【氷草】110本を入手できた。
それぞれの薬草の鑑定結果は以下のとおりだ。
┌─<鑑定>────
│【薬草】
│食べると若干体力が回復する
│何種類かの薬品の材料にもなる
│森の入口付近に自生している
│レア度:★
└─────────
┌─<鑑定>────
│【紫草】
│葉は【病気軽減薬】の材料
│根は【傷治癒薬】の材料になる
│森の中に自生している
│レア度:★★
└─────────
┌─<鑑定>────
│【氷草】
│食べると胸焼けに効く
│葉が【病気軽減薬】、
│【火傷治癒薬】の材料になる
│スガの街周辺に自生している
│レア度:★★
└─────────
採集のついでに、近くに居たゴブリンを10匹ほど倒し、【ゴブリンの耳】も収集していた。
この辺の薬草を採りつくしてしまうわけにはいかないので、ここでの採取はこのくらいで止めておこう。あとは森の中に自生しているという【紫草】がもうちょっと欲しいかな。
「もうちょっと奥に行くか」
「うん」「はい」
しばらく奥に進むと、【紫草】が多く自生している場所を発見した。
「ここら辺でまた採取しよう」
「はい」
「兄ちゃん、魔物は居ないの?」
「近くに何匹か居るみたいだ。採取し終わったら様子を見に行ってみよう」
「はい」「はーい」
【紫草】をあらかた採りつくし、移動しようかと思ったその時だった。
「キャー!」
遠くで女の子の悲鳴が聞こえた。
「行くぞ!」「うん」「はい」
俺達は短く会話して、その悲鳴のした方へ走った。
その場所に到着すると、よく分からない状況になっていた。
この前戦ったのと同じ肌の白いオークが3匹、その内の1匹が女の子を小脇に抱えている。
そして、残りの2匹は、肌の黒い別のオークと戦っていたのだ。
これ、どういう状況? 白と黒、どっちかが女の子を助けようとしているのか?
俺が、判断に迷っているとー
エレナは躊躇なく両方のオークに向けて【豪雨】の魔法を使用した。
行き成りの【豪雨】に驚いた白と黒のオーク達は混乱し、オークは思わず女の子を手放してしまった。
地面に放り出された女の子は、怖さからなのか震えてしまって身動きがとれないでいた。
俺は、【瞬間移動】で女の子の側に行き、抱きかかえて直ぐに【瞬間移動】で戻った。
「大丈夫か?」
「あ、ありがと……」
女の子はそのまま、気を失ってしまった。
俺は、インベントリからバスタオルを取り出して女の子を包んだ。
「エレナ、オークは二種類いるのか?」
「この辺ではあまり見ないですが、黒いのは『黒オーク』と呼ばれています。普通のオークと『黒オーク』は仲が悪いので、遭遇すると戦いになることが多いそうです」
「どちらかが、女の子を助けようとしてた訳じゃないのか?」
「違います、どちらも人間を見ると襲ってきます」
つまり、獲物を横取りしようとしたとか、そんな感じなのか。
そんな話をしていると、オーク達は混乱から回復して、また戦いを始めていた。
「どうする? 両方やっつけるか?」
「うん、やっつけよう」「その方がいいと思います」
「じゃあ、俺はこの子を見てるから二人で戦ってみるか?」
「うん」「はい」
「じゃあ、【クイック】をかけたら戦闘開始だ」
俺が、二人に【クイック】をかけると、エレナはまた【豪雨】を使ってオークたちを攻撃した。
それと同時にアヤも飛び出し、合計4匹のオーク達の周りをぐるぐる回りながら日本製ナイフで切りつけていった。
しばらくして、アヤの素早い移動が【竜巻】を生み出し、【豪雨】と合わさっていった。
まるで『ミキサー』の様に水流が回転していた。
オークたちが水流から逃れようと外に出てくると、アヤのナイフで切りつけられ、水流の中へ押し戻されてしまう。
しばらくオークの回転が続き、オークたちが動かなくなったのを確認したので、アヤは『ミキサー』の回転を止めた。
そこに残っていたのは、動かなくなった3匹の普通オークと、ぎりぎり生き残った黒オークだった。
「まだ、生きてるぞ!」
「うわ、しつこい!」
エレナは、今度は【雪】を降らせ始めた。濡れた体を冷やして体力を奪う作戦なのだろう。
アヤもそれに合わせて、【氷の球】で黒オークを攻撃した。
しばらく後、そこには黒オークの氷漬けが完成していた。
「いえーい」
アヤとエレナはハイタッチをしてお互いを称え合っていた。
「お前ら、凄いな!」
それは、俺の心からの感想だった。
しかし、ドライヤーとか、扇風機とか、ミキサーとか、アヤの魔法は、家電みたいなのばっかりだな。
「この子を街に連れて行かないといけないから帰るぞ」
「「はい」」
俺は、イカ臭い3匹の普通オークと黒オークの氷漬けをインベントリにしまって、スガの街の入り口から少し離れた位置に【瞬間移動】した。
「すいません、森の中でオークに拐われていた女の子を保護したのですが、どうしたらいいですか?」
俺が街の門番の兵士に事情を説明すると、俺達は詰所に案内された。
詰所のベッドに女の子を寝かせると、しばらくしてその子は目を覚ました。
話を聞き、失踪届が出ていた『メグちゃん』であることがわかり、兵士がメグちゃんのお母さんを連れてきてくれた。
「メグ! 無事でよかった!!」
「お母さん!!」
話しを聞くと、街の中で遊んでいたはずのメグちゃんが急にいなくなり、探していたという。
街の中に居たはずなのに、何故オークに拐われたのだろう?
街中に『危険』を示す怪しい犯罪者とかもたまに見かけるから、そいつらが関係しているのだろうか?
「本当にありがとうございました。なんとお礼を言ったらいいか……」
メグちゃんはお母さんに連れられて帰っていった。
よかったよかった。
「君たちは冒険者かい?」
兵士の一人が話しかけてきた。
「はい、冒険者ギルドには登録してます」
「それじゃあ、オークの事を冒険者ギルドに報告してきてくれないか?」
「はい、わかりました」
「あ、それと、これを冒険者ギルドに持って行ってくれ」
俺達は書類を渡された。
「これは?」
「治安維持は本来俺達兵士の仕事なのだが、君たちはその仕事の手助けをしてくれた。これはその証明書だ」
「証明書? これを冒険者ギルドの提出すればいいんですか?」
「ああ、それを提出すれば冒険者ギルドの【ギルドポイント】を上乗せしてもらえるように手配してある」
「そういうことですか、ありがとうございます」
俺達は、詰所をでて冒険者ギルドに向かった。
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