56.5.エレナの日本語学習(閑話)
感想でもらったリクエストにお応えして56話と57話の間の話を差し込みます
火曜日からエレナの勉強が始まった。
俺が仕事に行っている間にアヤがエレナの勉強を見てくれていた。
「それじゃあ、まずは『ひらがな』の勉強からね」
「はい! アヤさん!」
「だめだめ! 私のことは『アヤ先生』と呼びなさい」
「アヤせんせい?」
アヤは何故か、女教師風の服装をして、伸び縮みする【指し棒】を持っていた。どこから持ってきたやら……
何故、俺がこの風景を見れているかというと~
それは仕事の合間に【追跡】で、見ているからなのだ。
まあ、マルチモニタで見ている感じかな。
「そう、日本では何かを教わるときは、相手を『先生』と呼ばないといけないって【法律】があるのですよ」
「そうだったんですか、分かりました。アヤ先生!」
アヤの奴め、エレナに嘘を教えてるんじゃないよ!
アヤは満面の笑みで授業を進めていた。
「じゃあ、【50音表】を読んでみましょう」
「はい、アヤ先生」
アヤ、お前ってやつは……
『先生』って呼ばれる度に、ニヤけるのを何とかしろよ、なんかキモいぞ!
エレナが一生懸命50音表を読み上げる姿はとっても可愛かった。
「おい丸山、なに仕事中に、ニヤけてるんだ!」
「す、すいません」
ヤバイ、俺もいつの間にかニヤけてしまっていた。
仕事に集中しなければ。
「では、この字はなんという字ですか?」
「はい、『あ』です」
「正解です! 次、この字は?」
「これは…… 『や』です」
「またまた正解です! では、この2つを続けて読むと、どうなりますか?」
「『あ』…『や』… 『あや』!! アヤ先生の名前です!」
「大正解です!!」
「アヤ先生、あまり抱きつかないでください。く、苦しいです」
アヤは事ある毎にエレナに抱きつきやがって。全くもって、うらやま…けしからん!
しかし、アヤは教えるのが上手いな。将来は教員にでもなるのかな?
どうやら、ドレアドス共通語と日本語は、発音や文字に共通するものが多いらしく、エレナはどんどん日本語を覚えていった。
「それでは、次は絵本を読んでみましょう」
「はい、アヤ先生」
アヤは『しらゆきひめ』の絵本を取り出してエレナに読み聞かせた。
「……白雪姫は王子様と結婚し、末永く幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし」
アヤが、絵本を読み終わり顔を上げるとー
何故かエレナは泣いていた。
「なんでエレナちゃん泣いてるの!?」
「だって、白雪姫が幸せになって本当に良かったです!」
「だからって、泣く事無いでしょ!」
そうだそうだ、泣くことはない
もし、エレナが【毒りんご】を食べてしまったら俺が生き返らしてあげるから
どうやって生き返らせるかだって?
それはもちろん!……
「何だか、誰かに見られている気がする!?」
「アヤさんどうしたんですか?」
「兄ちゃん! きさま! 見ているなッ!」
やばい!俺が覗いているのに気が付かれたか!?
いやいや、そんな筈はない。落ち着け俺、素数を数えるんだ。
「アヤさん?」
「いや、兄ちゃんに覗かれている気がしたんだけど、気のせいだったみたい」
「そうですよ、セイジ様が覗きなんてするわけ無いですよ」
くっ! エレナにそう言われると、無性に罪の意識が俺を苛んできた。
あまりの居たたまれなさに、俺は【追跡】の映像をそっと閉じた……
初めて割り込み投稿をしてみます。上手く出来ているかどうか…
ご感想お待ちしております。




