428.サーバールームのオラクルちゃん
翌日の水曜日、朝目が覚めると、
頭のなかに警告音が鳴り響いていた。
こんな朝早くに何事だ?
誰かのピンチか?
復興途中の異世界側でなにかあったのか?
と思ったら、ジュエリーナンシーのサーバールームだった。
え? サーバールーム!?
サーバールームの【追跡用ビーコン】は、
月曜日の最終チェックの時に置いておいて、そのままにしちゃってたやつだ。
しかし、サーバールームに危険が迫ってる?
どういうことだ?
姿を消して、【瞬間移動】してみる。
サーバールームについたけど……。
誰もいない。
少なくとも物理的な危険が及んでいるわけではなさそう。
ということは、不正アクセスとかかな?
まあ、不正アクセスされた時の事を考えて、
外からアクセスした場合はダミーファイルしかのぞけないようにしてある。
しばらくは放置しておいても大丈夫だろう。
俺は、奴を呼ぶことにした。
「スーパーオラクルちゃん召喚!」
「お、久しぶりのセイジの世界だ!
何か仕事?」
精霊のオラクルちゃんが、光る髪の毛を逆立てた姿で現れた。
「オラクルちゃん。日の出の塔の方は大丈夫なのか?」
「うん、今は安定してるから大丈夫」
「よかった。
雷精霊も元気だったか?」
「うん、元気だ」
忘れている人がいるかもしれないけど、
スーパーオラクルちゃんは、オラクルちゃんと雷精霊の合体した姿なのだ。
「それで、さっそくなんだけど、
このサーバーが外から攻撃されてるみたいだから、
調べてみてくれないか?」
「了解!」
スーパーオラクルちゃんは、意気揚々とサーバの中に突入していく。
『うわ、このサーバーのシステム、すっごく興味深い。
これ、どうしたの?』
「会社の仲間と協力して、みんなで作ったんだよ」
『みんなで作った!? すごーい!
セイジは、システムを作るのが上手なSEなんだね!』
サーバーの中に入ったオラクルちゃんは、
まるで動物のようなテンションだな。
『サーバールームのオラクルちゃん』略して『サー○ルちゃん』と呼ぼう。
『あ! あっちの方から誰かがのぞいてる!』
「のぞきだと!? けしからん!」
のぞきなんてやる奴は、きっとろくでもない奴に違いない!
「のぞき魔の居場所は分かる?」
「うんとね~、このケーブルの向こうみたい」
オラクルちゃんは、サーバーの中から出てきて、答えた。
「ケーブル?」
なぜか分配器が取り付けられていて、
そこからLANケーブルが伸びていた。
何だこれは?
俺は、ここのシステムをすべて把握しているはずなんだけど、
こんなケーブルは、記憶にない。
誰かが後から付け足したのか?
【追跡用ビーコン】の映像を巻き戻して確認してみる。
うーむ、移ってるのは掃除のおばさんくらいだな……。
ん? 掃除のおばさん!?
そのおばさんは、一見すると普通のおばさん。
しかし、掃除用具のバケツの中から分配器とLANケーブルを取り出し、
取り付けを開始した。
こいつが犯人か!
とりあえず、顔写真を記録しておいた。
後は、現在接続してきている犯人の方も調べないと。
「オラクルちゃん、このケーブルの先に誰がいるか調べてきて」
「了解!」
オラクルちゃんは再びサーバーに潜り、
調査を開始した。
『うわー! 何だこいつ!』
ん?
なぜか隣の部屋から叫び声が聞こえる。
どうやら、オラクルちゃんも隣の部屋にいるみたいだ。
誰かに姿を見られちゃったのかな?
俺は姿を消したまま、オラクルちゃんの所へ【瞬間移動】した。
「ゆ、幽霊!?」
「し、失礼な。私は精霊よ!」
どうやら、隣は警備員室だったらしく、
オラクルちゃんを見つけた警備員が驚き戸惑っているようだ。
オラクルちゃんも、普通に警備員と会話してるんじゃないよ!
「【睡眠】!」
「ふにゃっ……」
申し訳ないけど、警備員さんには眠っててもらった。
「オラクルちゃん。人に見つかったらダメだろ」
「う、うん。だって、のぞいてるの、このパソコンだと思ったんだもん」
「え? この警備員がのぞきの犯人?」
「ううん、違うみたい。
このパソコンを経由して、別のところへ送られてるみたい」
なるほど、踏み台にされていたわけか。
しかし妙だ。
サーバールームと警備員室は別のネットワークになっているはず。
なぜ繋がってるんだ?
眠らせた警備員を【鑑定】してみたが、怪しいところはない。
おそらく、この件とは関わりのない人なのだろう。
しかし、警備員室のパソコンがのぞきの踏み台にされるとは……。
「じゃあオラクルちゃん。
今度は、ここを経由してデータが送られている先を調べてみて」
「了解!」
オラクルちゃんは、再びパソコンに突入し、調査を再開した。
『うーん、いろいろ中継してて、難しい……。
あ、こっちは暗号化されてる!』
どうやら調査はけっこう大変みたいだ。
『もう少しで、たどり着けそう!
……。
やった! 見つけたよ!』
「でかした!」
『あ、でも……。
切断されちゃった』
「よし、さっそく犯人の所へ!」
っと思ったのだが!
『【電気情報魔法】のレベル上限が3になりました。
【電気情報魔法】がレベル3になりました』
「うを、レベルが上った!」
のぞき犯の接続先を見つけたことでレベルが上ったのかな?
┌─<電気情報魔法>─────
│【接続元逆探知】
│ ・通信の接続元を逆探知できる。
│
│【仮想化】
│ ・自分の頭の中に仮想的にPCを構築できる。
│ 性能は魔法レベルに依存する。
└──────────────
何だこれは!
【接続元逆探知】は、ちょうど欲しかった能力だ。
これから、かなり役に立ちそう。
そして、【仮想化】。
これは素晴らしい!!!
これで、脳内でエロゲやり放題……。
それは後のお楽し……じゃなくて、後回しにしておいて、
のぞき犯人を捕まえに行こう。
----------
逃げられました……。
犯人は、ネットカフェから接続していたらしく。
【瞬間移動】でその場に駆けつけた時には、もう立ち去った後でした。
しかし、いったい目的は何なんだろう?
ジュエリーナンシーは、これまでにいろいろ狙われてるから、
それと関係あるのかな?
今のところは、『よく分からない』という状態から進みようがないな。
今後のために、サーバーだけではなく、
警備員室のパソコンにも【追跡用ビーコン】を取り付けておくことにした。
ご感想お待ちしております。




