416.弱点
「行きます!」
氷精霊は、
俺の竜の姿よりも大きな氷の塊を出現させた。
なんか、某国民的RPGのクリスタルのような形だ。
「落とします!」
氷のクリスタルアタック(自由落下)が超巨大タコに襲いかかる。
ブスリ。
氷クリスタルは巨大タコの頭のてっぺんにぶっ刺さった。
そしてその周囲が、氷の冷却能力で少しずつ凍っていく。
しかし、タコの触手が、
ぶっ刺さっていた氷クリスタルを、さっと払い除けてしまった。
払いのけられた時に氷が粉々に砕け散って、
二次災害が起こらなかっただけでも良しとするかな。
「私の攻撃はどうですか!」
氷精霊は、ドヤ顔でそう言った……。
どうと言われましても……、
多分、HPを1%くらいしか削れてないかも。
「あと同じ攻撃を100回頼むよ」
「……わたし、帰らせてもらいます」
氷精霊は無表情のまま、そそくさと帰ってしまった。
あれ?
今の俺のセリフ、ブラック企業っぽかった?
氷精霊が帰ってしまった。
残ったのは……、
雷、火、闇の3精霊のみ。
まるで、ハードワークに嫌気がさした仲間が、1人また1人と辞めていき、
さらにデスマーチが加速していく、
そんな、どこかの開発現場のような状況だな……。
「残ってくれたのは、君たちだけだが……、
ここは、我々の力でなんとか乗り越えていこう」
「はい。
私は、セイジさんと一緒なら、たとえ火の中水の中……」
闇精霊……すこし病んでるっぽい発言だな。
「まあ、君とは、なんだかんだ付き合いが長いし、
ギリギリまで付き合うよ」
雷精霊は、けっこう義理堅い奴だな。
「あたし、もっと空気のあるところに行きたい」
火精霊は、あんまり状況を理解していないのかな?
「でも、どうするんだい?
こんな遠くちゃ、あたいの電撃も届かないよ?」
「近づくと触手が危ないんだよ」
いろんな意味でな。
「じゃあ、私がなんとかします!」
どうやら闇精霊が、いい案があるらしい。
どんな案だろう?
「行きます!」
闇精霊は、魔力を込め、
周囲に『闇』を作り出した。
この闇で、何をするんだろう?
と思っていたら、
闇がどんどん広がっていき、
竜の姿の俺を、すっぽり覆い尽くしてしまった。
「ちょっとまった。
これじゃあ、俺たちも、何も見えないじゃないか」
「だいじょうぶです」
闇精霊が、指をパチンとならすと、
視界がいきなり良くなった。
「外からは見えませんが、
中からはちゃんと見えます」
なるほど、マジックミラーか。
「セイジさん。
この闇の中なら、ヘンなことをシても、外にはバレません」
何をシようというのかな?
俺には、ぜんぜんワカラナイな~。
闇に隠れて、ヘンなことはせずに、
超巨大タコに近づいていく。
「この距離なら、雷いけるか?」
「うん、任せて!」
バリバリ!
雷精霊の電撃が、タコの胴体に炸裂する。
どうやらタコは雷が弱点らしく、
激しくビクンビクンと痙攣している。
「いいぞ!
もっとやっちまえ!」
「よしきた!」
バリバリバリ!!
いい感じだ。
雷精霊の攻撃は、けっこう効いているようだ。
しかも闇が包んでいるおかげで、タコには俺たちの場所が分からないらしく、
触手は、でたらめに攻撃するばかり。
これは、行けるんじゃないか?
しばらく、バリバリしていたのだが……。
「魔力が、そろそろきつい。
ちょっと休ませてくれ」
雷精霊も、休みなく攻撃し続けることはできない。
「わかった」
そこからは、休み休み攻撃を続けた。
そんな中でも、闇精霊は休まずに俺たちを闇で隠し続けてくれている。
なんという働き者なのだろう。
そして、さっきから姿が見えない火精霊は、どうしているのかというと……。
俺の鼻の穴の中で、グースカ寝ていた……。
「おい、火精霊。起きろよ。
そして、お前も手伝え」
「ん? もう朝?
うわ、雨降ってるじゃん。
雨の日は、体が濡れて力が出ないから、お休みなの!」
使えね~。
お前は、国民的パンのヒーローかよ。
まあ、俺には頼れる相棒の雷精霊と闇精霊がいるから、別にいいけど!
「雷精霊。そろそろ次の攻撃に行けそうか?」
「もうちょっと待って。
電力の生成が追いつかないんだ。
セイジ、ちょっと手伝ってくれ」
うーむ、
俺は、触手のデタラメな攻撃に当たらないように、
ある程度、回避行動に集中していたいのだが……。
雷精霊にだけ、無理をさせるわけにもいかない。
回避しながらでも、電力生成を手伝うか。
触手の動きに注意しつつ、
飛ぶための魔力とは別に、電力生成にも魔力を使っていく。
そして、その生成した電力を、
俺の鼻先に乗っている雷精霊に渡す。
「どうだ?」
「うん、行けそう!」
バリバリバリバリ。
いい感じだ。
さっきより威力が上昇している。
「闇精霊は、大丈夫か?」
「大丈夫……。
セイジさんのために、私の魂のすべてをかけて!」
なんか、トランス状態になっている感じだ。
もの凄く集中して、俺たちを隠す闇を生み出し続けている。
「魔力がきつくなったら、俺の魔力を吸ってもいいからな」
「セイジさんの、魔力を吸う……、
い、いいの?」
「ああ、まだ何とかなる」
「う、うれしい……」
闇精霊は、俺の首筋の辺りにしがみついて、キスをした。
チュー。
ああ、何か力が抜ける感じがする。
けっこう遠慮なく吸ってるな。
ちょっとヤバイかも。
俺は、【肉体強化】魔法の【魔力回復速度強化】を目一杯使って、
魔力を回復させつつ、踏ん張った。
魔力回復、電力生成、触手の回避。
けっこう忙しい。
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その後、俺たち3人でチマチマ攻撃をし続け、
超巨大タコのHPを、やっと半分にまで減らすことに成功した……。
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