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時空魔法で異世界と地球を行ったり来たり  作者: かつ
王国の危機編
413/438

403.嵐


 翌日の金曜日。

 今日さえ持ちこたえれば、明日は俺も動ける


 出勤前に各街を見回ってみたが、

 雨、風ともに、かなり強くなってきている。

 いよいよ台風がやってくるのだろう。



 ニッポと開拓村の『注意エリア』は、

 護岸工事の効果で、ほとんどなくなった。


 しかし他の街は、若干だがエリアが広くなっている。

 状況に合わせて変化するのかな?



 新しく印刷し直した注意エリアの地図をリルラに渡し、

 俺は会社へ。


-----


 会社にて、

 俺は、仕事中に皆の様子を見る。



 エレナは、ケガ人が出たとの知らせが入ると、

 そこへ飛んでいき、治して回っている。



 ヒルダは、壁や建物が崩れたというところへ飛んでいき、

 直してまわっている



 アヤは……、天気の影響で普段現れない魔物が現れたという情報を聞きつけ、

 ルンルン気分で魔物退治に出かけていった。



 1人だけ、趣旨が違う奴がいるけど、

 役には立ってるみたいだし、まあいいか。


-----


 お昼前になると、天気は本格的に荒れてきて、

 シンジュの街の住人が、続々と避難を開始した。


 リルラが自分の屋敷を避難所に提供しているのだ。


 予め避難者用の食料なども用意してあって、準備万端だ。

 まあ、俺がそうするように言っておいたからなんだけどね。


-----


 王都は……、

 避難が遅れてケガ人が出ている。

 王様は何をやっているんだ?


 エレナも、聞きつけて王都で雨の中を駆け回っている。



 ケガ人を治し、避難させる。

 避難先は、冒険者ギルドだ。


 最初は、お城に避難させようとしたのだが……。

 ライルゲバルトに、警備上の問題があるからダメだと止められてしまったのだ。



 そして、その冒険者ギルドも、人でいっぱいになってきてしまった。

 エレナは、困り果ててしまっている。



 ここは、俺の出番か?


 昼休みになり、同僚のランチの誘いを断って、

 エレナのもとへ急ぐ。


-----


「エレナ、大丈夫か?」

「セイジ様! 来てくださったんですね。

 私は平気ですけど、避難場所が足りなくて……」


「だ~いじょうぶ!! まかして!!」


 俺は、エレナの手を取って【瞬間移動】した。



「ここは……、アリアさんの教会。

 でも、ここは、建物があまり丈夫じゃないので、

 ここの皆さんも避難していただこうかと思っていたんです」

「いや、その必要はない。

 俺が何とかする」


 俺は、【バリア】の魔法を使って、

 教会の建物をすっぽりとおおった。



「あれ? セイジさんとエレナさん! いらしてたんですか。

 急に雨の音が聞こえなくなったので、様子を見に来たのですが……」

「あ、セイジおじ……兄ちゃん」


 アリアさんと、ミーニャちゃんが様子を見に出てきた。



「水と風を防ぐ【バリア】を使ったんです」


「すごーい!」

 ミーニャちゃんが大喜びしている。



「セイジさん、いつもありがとうございます」


「アリアさん、一つお願いがあるんですけど、

 ここにこの街の住人を何人か避難させてもいいですか?」

「はい、もちろんです」


 アリアさんには了解を取ったし、

 これで、避難所不足はなんとかなるだろう。



 しかしここには、アリアさんと子供たちだけしかいない。

 こんなところへ、変な奴をよこすわけにはいかない。


「エレナ。ここへ連れてくる人は、女性と子供たちだけにしよう」

「わかりました!」


「それじゃあ、後は頼んだ。

 俺は、他の避難所にも【バリア】を張ってくる」

「はい!」



 俺は、エレナと分かれて、

 各街の避難所になっている建物に【バリア】をはって回った。



 けっきょく今日の昼も、ちゃんとしたランチを食べ損なってしまった……。


 俺、この事態が穏便に解決したら、

 思いっきり美味しいものを食べるんだ~。



-----


 午後になり、雨と風はさらに強くなってきている。



『日の出の塔から、モンスターが溢れ出しているとの情報が入ってます』

 リルラが、音声チャットで情報を流す。


『私が行く!』

 アヤが、素早くそれに答える。


 普段は仲が悪いけど、緊急事態の時はちゃんと連携するんだな。



『エレナ様、王都の様子はどうですか?』

『はい、住人の避難は完了しました。

 ただ、少し食料が不足しています』


『ニッポの街に、少し余裕があるそうなので、

 誰か取りに行ってください』

『私が取りに行きます』

 今度は、ヒルダが答える。


 なんか、みんな協力しあってすごいな。



『うわ!

 日の出の塔のまわり、スライムだらけだ!』

 アヤが、ビビっている。


 そういえば、日の出の塔の地下はスライムだらけだったな。

 地下に浸水して、あいつらが溢れてきたのかな?



『アヤ、大丈夫か?』

 珍しく、リルラがアヤの心配をしている。

 雨降って地固まるというやつかな?


『ちょっと手こずりそうだけど、1人で平気』

『了解した。イケブの領主に頼んで、冒険者を何人か向かわせよう』

『だから! 1人で平気って言ってるでしょ!』

『他で何かあった時に動けないと困るだろ!』

 と思ったら、もうケンカを始めやがった。



 しかし……、

 こんな状況で、俺だけ動けないのは申し訳ない気がしてきたな。


-----


 夕方近くになって、新たな動きがあった。



『トキの街で、海から魔物が上がってきているそうです。

 アヤ! 行けますか?』

『呼び捨てにしないで!

 後ちょっとでスライムを全滅させられるから……、

 あ、ちょうど冒険者の増援が来たから、

 後はあの人たちに任せて、私はトキに向かう』

『了解』



『シナガの街で、大規模な崖崩れが発生したみたいです』

『私が行きます!』

 ヒルダが、素早く反応する。


『あ、崖崩れで炭鉱の入り口が塞がって、

 中に閉じ込められている人がいるそうです』

 なんだって!?


『私も行きます!』

 エレナも、手を挙げる。



 俺は、トイレの個室に入り、音声チャットに割り込む。


「リルラ、どういうことだ?

 シナガの炭鉱付近は注意エリアだから、全員避難したんじゃないのか?」

『あ、セイジ……、

 あの、避難場所が足りないということで、

 奴隷の一部を、そのまま炭鉱に残していた、そうだ』

「くそっ!」

『す、すまん。私は、知らなくて‥‥』


 いかんいかん、リルラに八つ当たりしてしまった。

 あちらは、そういう世界だったことをすっかり忘れていた。



「エレナ、ヒルダ、大丈夫そうか?」

『セイジ様、だいじょうぶです。私たちに任せてください』


「わかった……」


 俺は、心の中で祈りつつ、仕事に戻った。


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