402.護岸工事
アヤが異世界で動画を見ていた。
『見てみて、これ!』
『こ、これは、すごい!』
ミーシャさんに、その動画を見せているみたいだ。
この2人、いつのまにこんなに仲良くなったんだ?
そして、2人でいったい何の動画を見ているんだ?
すごく気になる。
『なるほど。
水で、こんな被害が出てしまうんですね』
あれ?
水害の様子を映した動画を見ていたのか。
俺はてっきり、エッチな動画でもみているのかと……。
『ほらここ、
川の両側を、こんなふうに盛り上げて、
水が溢れないようにするんだよ』
『うーむ、これは大変な仕事になりそうですね』
俺がお願いしておいた通り、
【土の魔法】を使える人を集めてもらおうとしていたのか。
それならロンドに直接、話をすればいいのに。
アヤは、そんなにロンドが苦手なのかな?
『まずはレイチェルに相談しましょう』
レイチェルさんは、だいぶ頼りにされているみたいだ。
『それなら、私に任せて!』
アヤは得意気にスマホを取り出し、ビデオ通話でヒルダを呼び出した。
『もしもしアヤお姉ちゃん、どうしました?』
『ヒルダちゃん、近くにレイチェルさんいる?
ミーシャさんが話したいって』
『はい、ちょっと待ってください。
呼んできますね』
『そ、それは魔道具なんですか!?』
ミーシャさんが驚きまくっている。
アヤは、ものすごく自慢げだ。
それの月額料金は、俺が払ってるんだけどね。
ミーシャさんとレイチェルさんは、
おっかなびっくりスマホでビデオ通話をして、
お互い状況の確認を行った。
レイチェルさんも、ヒルダから状況を聞いて準備を進めていたので、
すぐに川の護岸工事に出向くことになった。
『それではロンド様は冒険者ギルドの方を、よろしくお願いします』
『あ、ああ』
ロンドは、【土の魔法】が使える冒険者を集めるために、
ギルドへお使いに行かされるらしい。まるでパシリだな。
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朝の10時頃、ニッポの街と開拓村から出発した魔法師たちが、
それぞれ、川へと到着していた。
それぞれの街や村に近い場所から、土手を広げていき、
2点間を土手で繋げることを優先する手順だ。
アヤとヒルダがスマホで連絡を取り合い、
レイチェルさんとミーシャさんが、指示をだして作業を進めていく。
そして、その作業の開始と同時に、
雨が、振り始めた。
アヤ、ミーシャ側は10人、
ヒルダ、レイチェル側では5人の魔法師が同行しているのだが、
工事の進み方は、ヒルダ、レイチェル側のほうが進んでいた。
優秀な土魔法師は、レイチェルさんの開拓村へ集まっていたようだ。
一番優秀なレイチェルさんもいるし、
それと、ヒルダ飴の功績が一番高い。
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エレナは、家で宅配便を受け取り、
すぐに【瞬間移動の魔石】でニッポの街へ。
エレナが到着すると、
ちょうどロンドが、冒険者を集めて出発するところだった。
『これはこれはエレナ姫様。
わざわざ起こしいただいて、ありがとうございます』
ロンドがエレナに挨拶をすると、
集まっていた冒険者たちが、ざわつき始めた。
『お姫様!?』
『なんとお美しい!』
『俺たちを見送りに来てくれたのか!?』
『バカいえ、ロンド様を見送りに来ただけだろ』
『まあ、そうだよな~』
しかし、
ロンドが冒険者を連れて移動し始めた時、
エレナもいっしょに歩いてついてくるのをみて、
冒険者たちは驚いた。
『姫様もついてくるの!?』
『しかも、歩きだぞ!』
普通の王族は、馬車とかで移動するんだろうな。
こうして雨が降る中、
ロンドとエレナと冒険者たちは、
護岸工事現場へ向かった。
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やっと昼休みだ。
しかし、俺にはゆっくり昼飯を食っている時間はない。
まずは自宅に戻り、
エレナが受け取ってくれていたwifiルーターの取り替え作業を、3分で終わらせた。
そして俺も護岸工事現場へ向かう。
「アヤ、様子はどうだ?」
「あ、兄ちゃん。
もの凄く順調だよ!」
「ん? そうなのか?」
「うん、ものすごくサクサクで、何の問題もないよ」
まあ、順調ならいいんだけど……。
「新しいwifiにしたおかげで、動画の再生がサクサク!」
そっちの話かよ!
ってか、護岸工事しながら動画をみてるのかよ!
器用だな。
「そうじゃなくて、工事の状況は?」
「ああ、そのことね。
思いっきり魔法が使えて、けっこう楽しいかも。
雨はうざいけど、魔法でなんとかなるしね」
まあ、楽しくやってるならそれでいいけど。
「でも、こんな適当な工事で、本当に大丈夫なの?
向こう岸は、ぜんぜん工事してないし」
「向こう岸をぜんぜん工事してないから、
こんな適当な工事でもなんとかなるんだろ」
「え? どういうこと?」
「向こう岸は、人が住んでないから、氾濫しても問題ない。
そして、向こう岸へ氾濫すれば、川の水が減るだろ」
「あ、そうか!」
まあ、俺もこういうことに関して詳しいわけじゃないから、
対処法として正しいかどうかはわからないけど。
明日にでも起こりそうな洪水を、突貫工事でなんとかしようとするなら、
これくらいしかできないもんな。
「じゃあ俺は、他のところもみてくる」
「いてら~」
アヤと別れた俺は、
電光石火で川の様子をひと通りチェックし、
注意を示す場所が変化したマップを、
もう一度印刷し直して、ロンドに渡しておいた。
昼休みの1時間で、これだけやれれば十分だよね?
結局、カロリー補充の携帯食を食べただけで、
ぜんぜん休めなかった。
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終業時間がきて、今日も定時上がりだ。
素早く着替えて、再び護岸工事現場へ。
「エレナ、工事の様子はどうだ?」
「あ、セイジ様。
工事は終了して、これから撤収するところです」
そうか、夜間作業用の照明とかないし、仕方ないよな。
「分かった、じゃあ俺は、もう一度チェックしてくる」
「お気をつけて」
俺は、エレナに見送られ、
雨の降る夜の川沿いを、電光石火でひた走る。
チェックといっても、
マップを見ながら、注意を示す黄色いエリアを確認するだけだ。
おっと、さっそく発見した。
ここは、アヤが作業していた場所だ……。
動画見ながら作業してるから、手抜き工事になるんだぞ。
仕方がないので、俺が代わりに修復作業を行う。
「よし!」
その場所の『注意』を示す表示が消えたのを確認し、
さらに別の場所をチェックする。
川の氾濫が起こりそうな場所は、すべて修復し終えた。
時間的にはもう翌日になってたけどね。
俺、ちょっと働きすぎ?
ご感想お待ちしております。




