401.山雨来らんとして、風、楼に満つ
ヒルダはレイチェルさんのところへ、
エレナは王様のところへ、
アヤはロンドのところへ、
そして、俺は、リルラのところへ……。
みんな、お泊り……。
なんてことは、あるはずもなく、
俺は、帰ってきた。
今日は、家で一人か~。
と、思ったら――。
エレナとアヤも帰ってきていた。
「あれ?
2人とも帰ってきたの?」
「当たり前じゃん、
ロンドのところになんて、泊まらないよ」
まあ、そうか。
「エレナは、どうして泊まってこなかったんだ?」
「だ、だって……、
お父様が……、
私の帰ってきたお祝いに、パーティを開こうとしていたので、
逃げてきちゃいました……」
王様、そんなことしようとしてたのか。
まあ、そんなことはさておき。
「2人とも、向こうの様子はどうだった?
何か変わったこととか、気づいたこととかなかった?」
「王都は、特に変わった様子はありませんでした」
「ニッポも、特に変わったってことはないんだけど……」
「けど?」
「街が、なんだか、みょ~なふいんきなんだよね~。
何か~、雲行きが怪しい感じっていうか~、
何かが起こりそうな、そんな予感がするような~」
アヤの話は、ぜんぜん要領を得ないな。
明日の朝にでも、ちょっとだけ様子を見に行ってみるかな。
「あ、もう一つ、困ったことがあったよ」
「ん? 困ったこと?」
「うん、
ニッポで暇な時に動画を……じゃなくて、
ネットで調べ物をしてたら、
途中で止まっちゃったことがあったよ。
電波が弱くなったりしてるんじゃない?」
「アヤ……こんな時に動画なんてみてるんじゃないよ!」
「ちがうし! 調べ物してたの!」
まあ、家のwifiルーターに5台も繋いでるからな~。
電波の強いやつに買い換えないと、まずいかも。
緊急事態の時に電波状況が悪くなっても困るし、
早めに対応しておくか。
「分かった、
じゃあ、今からポチッとく。
明日の午前中に届くように注文するから、
エレナ、悪いけど明日は午前中は留守番しててくれ」
「了解しました」
さっそく、オフィスとかでも使えそうな高めのwifiルーターを、
超お急ぎ便で注文しておいた。
「セイジ様、
私も、1つお願いがあります」
エレナがお願いとか、珍しいな。
「何でも遠慮なく言ってくれ」
「王都だけじゃなく、他の街も気になるので、
それぞれの街へ行ける【瞬間移動の魔石】を、作っていただけないでしょうか」
「なるほど、わかった。
明日までに用意しておく」
「ありがとうございます!」
もう夜も遅いけど、
エレナの頼みとあらば、やらないわけにはいかない。
その日は、夜遅くまで、実際に各街をまわって、
エレナ、ヒルダ、アヤの3人分の【瞬間移動の魔石】セットを作った。
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翌朝、早起きして、
出社前にニッポの様子を見に行ってみた。
たしかに、妙な雰囲気が漂っている。
雲行きが怪しい……、
っていうか……、
今にも雨が降りそうな感じだ。
そして、風が強い。
そういえば、
ここ2,3日ずっと風が強かったな。
開拓村では民家が倒壊してたし……、
シンジュの街のリルラの屋敷でも、ドアがギシギシしてたし……。
……。
あれ?
もしかして……。
ドレアドス王国の危機って、
……【台風】、とかじゃないよな?
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家に帰ってくると、
アヤとエレナが、出かける準備をしていた。
「セイジ様、こんな朝早くからどちらへ行かれていたんですか?」
「ちょっとニッポの様子を見にいってた」
「何かわかりました?」
「ああ」
「え? 兄ちゃん、何か分かったの?」
「多分だけど……、
台風が来るんじゃないかな?
今回の危機も、そのことかもしれない」
「台風?
確かに、そう言われてみるとそんな感じだったかもしれないけど……。
台風くらいで国が危機になったりしないから、今回のこととは別なんでしょ?」
「いや、そんなことはない。
エレナ、ドレアドス王国には、台風が来たりすることもあるのか?」
「いいえ、
台風のことは、勉強しましたけど、
あんなに凄まじい嵐がドレアドス王国にあったという話は、
いままで聞いたことがありません」
「つまり、台風に対する備えは、当然していないということだな」
「はい」
備えを全然していないのなら、けっこう被害がでるかも。
そう考えてみると、マップ上に出た注意を示すエリアも、ある程度合点がいく。
エビスとシナガは、注意を示す場所がどちらも山沿いなので、
大雨による土砂崩れがあるんじゃないかな?
トキの街は、海沿いだから、高潮かな?
イケブは、日の出の塔の周辺だから、
ビル風的なものが発生するのかも。
一番被害が大きそうなニッポと開拓村はどうだろう?
この前印刷した地図をもう一度よくみてみると、
ニッポの近くに川がある。
これは、洪水かもしれない。
予想でしかないけど、
事前にわかっていれば、それなりに準備ができるかも。
被害が予想される範囲に住んでる人を、予め避難させておくとか、
食料などを用意しておくとか。
「兄ちゃん、台風がくるなら、私たち何をやればいいの?」
「まずは、一番被害が大きそうなニッポかな、
きっと川が反乱して洪水が起きるんだろうから、
川の土手を整備して、洪水が起きないようにする」
「えー、台風がもうすぐ来るかもしれないのに、
今から、それをやるの?」
「【土の魔法】を使えば、応急処置くらいはできるんじゃないか?」
「あ、そうか」
まあ、台風だったとしても、
国の危機となるほどの威力だとすれば、
かなりの規模になるはずだ。
ここは気を引き締めていこう。
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