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時空魔法で異世界と地球を行ったり来たり  作者: かつ
風と雷の魔法編
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37.エールを君に

 異世界に到着してまず最初に、宿屋に直行した。

 途中で【言語一時習得の魔石】をエレナからアヤにバトンタッチした。


 宿屋に到着して空き状況を確認したところ、一部屋だけしか空いてないそうだ。


「それ見ろ、一部屋しか空いてないじゃないか」

「まあ、3人一部屋で泊まるのも初めてじゃないんだし、別にいいでしょ?」

「私も、一部屋でも問題ありません」


 こいつら、もし俺が襲ったりしたらどうするつもりなんだ?

 いや、妹を襲ったりはしないけど。

 いやいや、エレナを襲ったりもしないけど(多分)


 しかたがないので一部屋分の20ゴールドを支払って部屋を確保し、宿屋の人に【冒険者ギルド】の場所を聞いて、そこへ向かった。


~~~~~~~~~~


 だいぶ日も暮れてきていたが【冒険者ギルド】はまだ開いていた。


「何だかボロっちいな」

「そう?いかにも【冒険者ギルド】って感じじゃない

 早く登録をしましょ!」


 俺達はアヤに手を引かれて【冒険者ギルド】の中へ入った。


「きゃっ!」

「なんだ!?」


 どうやらアヤがよそ見をしていて誰かにぶつかってしまったようだ。


「おい、嬢ちゃん、ぶつかっておいて挨拶もなしかよ」

「アンタが邪魔だからいけないんでしょ!」

「なんだと!このアマ!」


 あちゃー、アヤが強面の冒険者と口喧嘩を始めてしまった。


「おい、お前!」

「え? 俺?」


 なんか矛先がこっちに来た。


「そうだよお前、こいつお前の連れなんだろう?

 こんな所へ女はべらせてやってくるとはいい度胸してんじゃねえか

 この落とし前、どう取ってくれんだ?」


 まいったな~

 あまり目立ちたくないんだけど……


「これはこれは、どうも申し訳ありません

 ここは一つ、【これ】でご勘弁を」


 俺は、相手に【100ゴールド金貨】を握らせた。


「おお、お前は話が分かるやつだな

 まあ、今回はお前に免じて許してやろう」

「どうも、ありがとうございます」


 その冒険者は【100ゴールド金貨】を持って去っていった。



「もう!兄ちゃん!なんであんな奴にお金を渡すの!

 ここはチートスキルで逆にやっつける話の流れでしょ!」

「今回はどう考えてもお前が悪い

 ちょっとは大人しくしてろよ」

「もう!兄ちゃんのバカ!」



 その後は、受付でギルドへの登録手続きを行った。

 登録手数料に3人それぞれ10ゴールドずつ支払って登録が完了した。


 【ギルド証】は商人ギルドのと同じように、普通の金属製のカードで―

 魔力を通すとか血を垂らすとかの特殊な事は一切しなかった。

 これ、偽造とか大丈夫なのかな?


 月並みだが冒険者にはランクがあり―

 登録したての俺達はFランクだそうだ。


 ギルドの中に仕事が貼りだされているボードがあり、Fランクの仕事の確認をしてみた。


┌─<採集依頼>──

│【薬草】採取 (常時依頼)

│内容:【薬草】を3束納品

│報酬:10ゴールド

└─────────


┌─<討伐依頼>──

│【ゴブリン】討伐 (常時依頼)

│内容:【ゴブリン】を3匹討伐

│ 討伐した証に【ゴブリンの耳】を納品

│報酬:50ゴールド

└─────────


┌─<討伐依頼>──

│【大ネズミ】討伐 (常時依頼)

│内容:【大ネズミ】を5匹討伐

│ 討伐した証に【大ネズミの前歯】を納品

│報酬:50ゴールド

└─────────


 【常時依頼】は、わざわざ仕事を受けなくても、勝手に実行して事後報告すればいい、という仕事だそうだ。



 もう時間も遅いので、仕事は確認だけにしてギルドを出た。


~~~~~~~~~~


 ギルドを出た後、いい加減腹が減ったので近くの食堂で夕食にすることにした。


 俺は折角なので【エール】と、つまみ代わりに【オークのステーキ】を―

 アヤとエレナは【シチュー】と【パン】と【ぶどうジュース】を頼んだ。


 【オークのステーキ】は、食えなくはないが、ただ肉を焼いただけの素朴な味だった。

 インベントリから【味付きの塩コショウ】を取り出し、【オークのステーキ】にかけてみたら、それなりに食べられるようになった。

 アヤとエレナもかけて欲しいと言うので【味付きの塩コショウ】をかけてやった。



「よう兄ちゃん!」


 振り向くと、立派な髭を蓄えた背の低い『おっちゃん』が話しかけてきた。

 【ドワーフ】なのだろうか?


「ずいぶん美味しそうに食べるじゃないか、さっきから料理に振りかけてるのは何だい?」


 まあ、人の良さそうな『おっちゃん』だし、これくらいバレてもいいか。


「これは、料理を美味しくする魔法の粉ですよ」

「ほうほう、それはすごそうだな」

「ちょっと試してみますか?」

「おぉ?いいのかい?」

「まあ、ちょっとだけでしたら」


 俺は『おっちゃん』の食べていた【肉】にも【味付きの塩コショウ】をかけてやった。


「おぉ! これは旨い。

 これで旨い酒があればなー」

「ん? ここの酒は気に入らないんですか?」

「兄ちゃんも飲んでみれば分かるさ」


 俺は【エール】を一口飲んでみた。


「うーむ、ちょっと酸っぱいな」

「だろ~、まあ、それほどまずいってわけじゃないが、今ひとつなんだよな~」


 いつの間にか『おっちゃん』は、俺達のテーブルに割り込んできた。


「おお、べっぴんさんが二人もいるじゃないか

 兄ちゃんも隅に置けんな、ぐあっはっはっは」

「どうもこんばんは」

「おじちゃん面白い人だね」


 そういえばインベントリに【缶ビール】が1本入ってたな。


「実は旨いエールがちょっとだけあるんですけど

 飲んでみます?」

「なんじゃと!!」

「まあ、お近づきの印に」


 俺はインベントリから【缶ビール】を取り出した。


「なんだこれは!? 金属?

 もしかしてこれにエールが入っているのか?」

「ええ」


 プルトップを引くと「プシュー」と音がして泡が溢れてきた。

 『おっちゃん』の空になった木製のジョッキに、トクトクとビールを半分ほど注いだ。

 残り半分はもちろん俺のジョッキだ。


「これはすごそうだ」


 『おっちゃん』はジョッキを覗きこんで目を輝かせていた。


「「カンパイ!」」


 『おっちゃん』とジョッキをぶつけあってからビールをゴキュゴキュと飲んだ。

 かー!

 やっぱりビールは旨いな。


「旨い! 旨すぎる!!

 なんだこのエールは!!」


「俺の故郷のエールですよ」

「くそう!

 こんなの飲んだら、他のなんて飲めないじゃないか!

 もう無いのか?」

「残念ながら、さっきの1本だけですよ」

「そんな貴重なものを……」


 それから俺と『おっちゃん』は大いに盛り上がって―

 アヤとエレナは、苦笑いをしていた。



 エレナがもう眠いというので、朝まで飲むという『おっちゃん』と別れて俺達は宿屋に戻ることにした。



「いやー、気のいい『おっちゃん』だったな」

「兄ちゃん飲み過ぎ、酒臭いよ」

「優しそうなおじさまでしたね」

「今度来るときは、いい酒を持ってきてやりたいな」


 そんな話をしながら宿屋にもどり、宿屋の人に部屋に案内してもらうとー



 ベッドが1つしかなかった。



「なんでベッドが一つしか無いんだ!」

「そんな事いまさら言われても困ります」


 宿屋の人は、無愛想にそそくさと行ってしまった。


「どうするんだこれ?」

「私とエレナちゃんがベッドで兄ちゃんは床?」

「アヤが無理を言ったせいでこうなってるんだろ!

 お前が責任を取って床で寝ろよ!」


「私が床で寝ましょうか?」

「「エレナ(ちゃん)はベッドで!」」


 平行線のまま議論が続いたが―

 俺は、段々と酔が回ってきてしまった。


 くそう! ね、眠い。

 意識が、飛ぶ……


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