394.ヒルダの災難1
『生まれたー!』
その日の夕方近くになって、
依頼者の奥さんが赤ちゃんを出産した。
かなり危ない状況だったが、
回復魔法やヒルダ飴のおかげで、なんとか事なきを得た。
『なんとお礼をいっていいか……。
君がいなかったら、母子ともにダメだったかもしれない』
『お役に立てて良かったです』
ヒルダもそうとう疲れただろう。
『そう言えば、冒険者ギルドに依頼達成の報告に行かないといけないんだったね。
妻も赤ちゃんも、もう大丈夫そうだし、
今のうちに済ませてしまおう』
『はい』
ヒルダと依頼主は、ギルドへ報告に向かった。
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『確かに……依頼達成の報告を受けたまわりました。
ヒルダ…さんには、1000ゴールドと100ギルドポイントが報酬となります』
クエストの報告は無事に終了した。
でも、何かこの受付のお兄さん……。
笑顔が引きつっている。
どうしたんだ?
『それじゃヒルダさん、ありがとうございました。
私は妻が心配なので、ここで失礼しますね』
依頼者は、ものすごい勢いで帰ってしまった。
まあ、ムリもないけどね。
そして、ヒルダもギルドを後にしようとした時。
『おい、お前。
お前は、まだ話がある』
あれ?
誰かと思ったら、
さっきまでクエスト完了の手続きをしてた受付のお兄さんだった。
なんか、依頼主が帰った途端に口調が急変したぞ。
『上手く依頼主を騙したみたいだが、
その日の内に王都からここまで護衛するなんて、できるわけないだろ!
どうやったんだ?』
どうやら、ヒルダのことを疑っているみたいだ。
しかし、この態度はヒドくないか?
『え? 騙してなんかないですよ』
ヒルダも困惑している。
『それにお前、その歳でDランクなんて、とてもじゃないがありえない。
王都の冒険者ギルドは騙せても、俺はだまされないぞ!
今回は……まあ、見逃してやるが、次はないと思え。いいな!』
ヒルダは悲しそうな顔をして、ギルドを後にした。
あいつ、絶対に許せん!
夜中に忍び寄って暗殺でもしてやろうか?
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翌日、ヒルダは元気よく冒険者ギルドにやってきた。
どうやら、昨日のことはあまり気にしてないようだ。
『またお前か』
ヒルダが受付に行くと、昨日の嫌な男が担当だった。
くそう、昨日のうちに暗殺しておけばよかった。
今日ヒルダは、オークの討伐のクエストをやるみたいだ。
しかし……。
『お前のようなガキに、オーク討伐なんてできるわけないだろ!
却下だ、却下!』
『大丈夫です。やれますよ!』
ヒルダは、食い下がる。
当たり前だ!
オーク程度、ヒルダなら楽勝に決まってるだろ!
『そこまで言うなら、保証金として100ゴールド支払え。
そしたらこのクエストを許可してやる』
はぁ? なに言ってるんだこいつ?
『わ、分かりました』
ヒルダは、その男に100ゴールドを渡した。
『よし、じゃあ、クエストを受けてもいいぞ』
男は、ニヤリと笑って金を受け取った。
ヒルダは、あまり気にした様子もなく、
元気よくクエストに向かった。
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元気よく森の中を進むヒルダ。
オークを探してズンズン森を進んでいく。
最近、俺も冒険者してないな。
明日は土曜日だから、久しぶりに冒険者してみるかな~。
ヒルダは森の奥まで来てるけど、
なかなかオークを見つけられないでいた。
うーむ、ゴブリンキングとの戦争の時に、オークもけっこう倒しちゃったからな~。
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その後ヒルダは、なんとか探し出したオークを3匹倒し、
ギルドへ戻ってきた時には夕方になっていた。
『オークを倒してきました』
ヒルダは、討伐の証であるオークの牙を、
例の男に手渡した。
『これは……オークの牙……。
どこで盗んできたんだ?』
『盗んでません、倒してきたんです』
『はぁ?
お前のようなガキが、オークを倒せるわけないだろ!』
こいつダメだ。
こんな奴を受付にしているなんて、
この冒険者ギルドは何を考えてるんだ?
もうすぐ俺も仕事が終わる。
そしたら、すぐに暗殺しに行こう。そうしよう。
『もういいです。
他の街の冒険者ギルドに行きますから、
オークの牙と、今朝の100ゴールドを返してください』
『知らないな~。
俺は、オークの牙も100ゴールドも受け取ってないぞ~』
『え?』
これは酷い。
こいつ、着服するつもりだ!
ヒルダは、泣きそうな顔をして冒険者ギルドを出ていってしまった。
絶対にぶっ殺す!
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俺は、素早く仕事を終え、
エレナとアヤに事情を話して、一緒に奴の所へ向かった。
たくさん冒険者はいるのに、なぜか奴の窓口には人が並んでいない。
おそらく、もうみんな奴のことを理解していて、避けているんだろう。
俺たちは、3人で奴の窓口へ向かった。
「何のようだ?」
奴は、俺たちを弱そうだと判断したのだろう。
いきなり横柄な態度だ。
「おいお前、
俺たちの仲間のヒルダから、オークの牙と100ゴールドを巻き上げたな?
絶対に許さんぞ!」
「さ、さあ、何のことだか知らないな。
何か証拠でもあるのか?」
逃げ切れるとでも思っているのか?
「証拠ならあるぞ」
「え?」
俺は、【追跡用ビーコン】の映像を、でかでかと表示した。
『そこまで言うなら、保証金として100ゴールド支払え。
そしたらこのクエストを許可してやる』
『これは……オークの牙……。
どこで盗んできたんだ?』
『知らないな~。
俺は、オークの牙も100ゴールドも受け取ってないぞ~』
冒険者ギルド全体に響き渡る奴の悪行。
「これでもしらを切るつもりか?」
「お、俺は、この街の領主と知り合いなんだぞ!
こんなことをして、ただで済むと思うなよ」
へー、この街の領主と知り合いね~。
「じゃあ、その領主を連れてきてやろう」
「え?」
俺たちは、【瞬間移動】でロンドのところへ飛んだ。
ご感想お待ちしております。
※一時的に知能が低下してきているみたいで、今週は少し遅くなっちゃいました。m(_ _)m




