391.ぴょんぴょん
ヒルダが冒険者を始めて数日がたった。
平日は、ゆっくり見ていることができないので、
俺だけ仕事をしながら、たまに確認する程度になってしまった。
最近は、ゴブリンをそれなりに倒して、
目立たないようにギルドポイントを稼いでいる。
あまり稼ぎすぎると目をつけられ、
『ズルしている』だのと、云々いわれちゃうからね。
ポイントも溜まり、Dランクに昇格ももうすぐだ。
今日もヒルダは、冒険者ギルドに足を運ぶ。
さて、今日もゴブリン退治に行くのかな?
『緊急事態ですー!!
皆さん協力してくださーい!!』
ん?
受付のお姉さんが、大声を上げている。
どうかしたんだろうか?
冒険者たちは、みんなお姉さんのところに集まった。
ヒルダも、そこへ向かう。
『王都の東の森で、魔物の大量発生が確認されました。
緊急討伐隊が組織されます。
冒険者の皆さんは、ぜひ参加してください』
マジか!
何というテンプレ展開。
俺の時は発生しなかったのに……。うらやましい……。
しかし、もうすぐ仕事に出かける時間だ。
俺は参加できないけど、ヒルダは大丈夫だろうか?
とりあえず、アヤとエレナに話しておいた。
もしもの時は、二人を向かわせよう。
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昼前になり、俺が会社で仕事をしながら様子を見ていると、
王都の東の草原に、30人の冒険者が集合していた。
ヒルダもいる。
この前、森で知り合った『茶番3人組』もいる。
『やあ、君も来たのかい?
ケガしないように気をつけるんだよ』
などと話しかけてきた。
ヒルダがケガをするような敵がいたら、
君たちヤバイけどね。
そう言えば、敵はどんな奴なんだろう?
大量発生だから、ゴブリンなのかな?
『来たぞー!!!』
森から出てきた冒険者が、魔物来襲を知らせる。
ぴょんぴょん。
ん??
ぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょん。
なんだありゃーーーー!
「丸山君、仕事中にどうしたんだね?」
「す、すいません……」
ビックリして、思わす席を立ってしまった。
森から現れた魔物の群れは……、
うさぎ……だった……。
うさぎって、アレだろ?
こころが、ぴょ……じゃなくて、ウキウキしてくるような、
癒し系の生き物だろ?
そんな『うさぎ』が、森から大量にぴょんぴょん飛び出してくる。
数は、50匹ほど。
血に染まったような真っ赤な目。
ニン○ンをガリガリかじりそうな、丈夫な歯。
ものすごいジャンプ力を生み出す、強靭な足。
うん、どれをとっても……かわいらしい。
草原で待ち構えていたヒルダたち冒険者が、それを迎え撃つ。
よく見ると、俺の知ってるうさぎにくらべて、けっこう大きい。
大型犬くらいの大きさはあるな。
そして、飛び跳ね方が素早い。
ぴょんぴょんぴょんと、連続でジャンプをして、いっきに距離をつめてくる。
『うわー!』
冒険者の1人が、体当たりを食らって吹っ飛んだ。
それなりに強いらしい。
『魔法を使います!』
ヒルダは、周りの人に断りを入れ、
大きな水の玉を、うさぎの集団にめがけて発射した。
バサンッ。
水の玉は、うさぎを5匹まとめて吹き飛ばす。
その周囲にいた10匹も、水をかぶってびしょ濡れになり、動きが鈍っていた。
どうやら、水が苦手らしい。
『君、すごいじゃないか』
茶番3人組のリーダー、アロンソがヒルダを褒めている。
まあ、ヒルダが本気を出せば、こんな程度じゃすまないけどね!
『ボス敵がいるぞ!!!』
冒険者の1人が、大声を上げる。
それまでの楽勝ムードが一転した。
敵の集団の奥に、ひときわ大きいボスが現れた。
そいつは、色が青くて体が大きい。
強そうな、うさぎだった。
ぴょん。
ボスの青うさぎは、冒険者たちから少し離れた位置で大きく飛び跳ねた。
そして、大きな耳を広げて……。
グライダーのように滑空してきた。
『上から来るぞ! 気をつけろぉ!』
冒険者の1人が、とっさに叫んだが……、
青うさぎは空中で素早く方向転換し、
地面すれすれから冒険者の群れに突っ込んだ。
『うわぁーーー!』
青うさぎの素早い動きに、
冒険者が次々となぎ倒されている。
ヒルダは、魔法で攻撃しようとしているものの、
冒険者たちを巻き込んでしまうために、攻撃できないでいた。
『いかん! いったん撤退だ!』
冒険者たちは撤退を試みるも、
青うさぎに回り込まれてしまう。
『くそう! もうここまでか……』
冒険者たちが死を覚悟した、その時!
ぴょん。
空中を滑空する青うさぎに向かって、
大きくジャンプする、かわいらしい影が1つ。
ヒルダだ。
どうやら、魔法での攻撃をあきらめ、
魔力のロッドを握りしめて、
物理で殴ることにしたようだ。
バコォンッ!!
ヒルダの攻撃が空中で炸裂し、
森の方へ吹き飛ぶ青うさぎ。
やったか?
しかし青うさぎは、
着地地点で、すっくと立ち上がった。
あまりきいてないのか?
うーむ、あいつ、けっこう強いかも。
ヒルダは、冒険者たちがまた攻撃されるのを防ぐため、
ひとりで青うさぎに向かって、突撃する。
それを見た青うさぎも、
受けて立つといわんばかりに、ヒルダへ突っ込んでくる。
草原の中央で、激しくぶつかりあうヒルダと青うさぎ。
青うさぎは、立体的な速い攻撃を繰り出す。
ヒルダは、それをギリギリで回避する。
青うさぎは、空中で鋭く方向転換をして、
なんども突っ込んでくる。
しかしヒルダは、その攻撃をすべて回避している。
避けるというより……。
まるで踊っているような……。
そうか!
あれは、めぐみちゃんとのダンスレッスンの時に習得した、
【踊りスキル】の『回避の踊り』だ。
そしてヒルダは、回避のすれ違いざまに、
魔力のロッドで、ふたたび青うさぎを叩き落とす。
『きゅっ!!』
青うさぎは、短い悲鳴を上げる。
なんか、ボス敵のくせに、かわいらしい鳴き声だな……。
青うさぎは、なんとか立ち上がり、
すばやくヒルダから距離を取る。
さっきの攻防で、かなり警戒しているようだ。
そして、青うさぎは……、
『きゅぅーーーーー!!!』
雄叫びのような、かわいい鳴き声をあげた。
青うさぎは、
いったい何をしようというのだろうか?
ご感想お待ちしております。




