389.初めてのゴブリン退治
コンコン。
「こんばんは~」
「どなたですか!?」
「オレだよオレ」
「オレさんなんて人は、知りませんよ~」
ヒルダが、俺の声を分かってくれない。
寂しい……。
「……丸山、セイジです。
開けてください、お願いします……」
「今、開けます」
宿屋の部屋のドアが開き、ヒルダがニコニコ顔で出迎えてくれた。
「どうして、すぐに開けてくれなかったんだ?」
「だって、セイジお兄ちゃんが来ても、
夜這いかもしれないから、すぐに入れちゃダメだって言われていたので」
「よばぃぃだとぉ!
一応聞くけど……誰に言われたんだ?」
「ひみつです!」
まあ、こんなことを吹き込むのは、アヤしかいないけど!
俺は、なんとかヒルダの部屋に入れてもらえた。
ヒルダの泊まっていたのは、広さが2畳くらいしかない狭い部屋で、
粗末なベッドが1つあるだけだった。
なにも、こんなところに泊まらなくてもいいのに……。
「で。
なんで、家に帰ってこないで宿屋に泊まっているのかな?
帰る用の【瞬間移動の魔石】は、ちゃんと持ってるよな?」
「だ、だって……。
ふつう冒険者は宿屋に泊まるものです」
「ずっと宿屋に泊まるつもりなのか?」
「Cランクになるまでは……。
ダメですか?」
「ダメじゃないけど……。
エレナとアヤが心配するから、たまには帰ってこいよ?」
「はい!」
ヒルダも冒険したいお年頃なのかな?
「話は変わるけど、
今日一日、みんなでヒルダのことを見させてもらった」
「はい」
「女の子を助けたのは、お手柄だ!
よくやったな」
「はい//」
ヒルダがテレてる。こんなヒルダはレアだな。
「しかし、【火の魔法】を使って、森が燃えそうになっちゃったのは良くない」
「は、はい……」
「まあでも、Eランクに昇格できたことは、よくやった。
初日でいきなりなんて、すごいじゃないか」
「はい!」
今日のヒルダは、やけに表情が豊かだな。
冒険者をやりたいと言い出した時は、正直不安だったけど、
やらせてみて正解だったかもしれないな。
「それでだ。
Eランクに昇格したお祝いに、プレゼントを持ってきた」
「プレゼント!?」
「まずは、エレナから。
お着替えセットだそうだ」
「ありがとうございます」
商店街にいって、何やらいろいろ買ってきたみたいだが、
俺には見せてくれなかったので、そういうたぐいの物なのだろう。
「次は、アヤから。
おしゃれポーチだそうだ」
「ありがとうございます」
【格納の腕輪】があるから必要なさそうに思えるのだが……。
カモフラージュ的な意味合いなのか?
アヤのことだから、何も考えていない可能性もあるな。
「最後に俺からは……。
【魔石コンセント】と、【どこでも通信魔石】だ」
「え!?」
驚いてる驚いてる。
「【魔石コンセント】は、どこでも使えるコンセントだ。
これでスマホの充電ができる。
スマホ持ってきてるだろ?」
「はい」
「【どこでも通信魔石】は、この魔石を持っていればどこでも電波が届く。
こっちの世界にいても、スマホで通話や通信ができるぞ」
「ほんとですか!?」
ヒルダは、自分用のスマホを取り出した。
「電波が来てます! すごいです!」
そうだろうそうだろう。
ヒルダも大喜びだ。
この魔石は、今さっき作ったものだ。
【電気情報魔法】レベル2の【どこでも通信】の魔法。
それを、ヌルポ魔石に記録したものだ。
まさか、自分で使うより先に魔石にするとは思わなかった。
「めぐみちゃんから連絡が来た時に、電波が届かないと困るからな。
あと、何かあったら、すぐに俺たちに連絡するんだぞ?」
「セイジお兄ちゃん、ありがとう!」
ヒルダは、俺に抱きつきほっぺにチューをしてきた。
ホテルの一室で、12歳の少女にキスをされる30歳。
日本だったら、完全にアウトの事案だな。
「あと最後に、俺からヒルダに宿題を出します」
「宿題!? は、はい!」
「ヒルダは、火の魔法が得意だけど、
もっと他の魔法や武器を使ったほうがいい。
そうすれば、戦いに幅が出てくるはずだ。
ということで、
明日から、【火の魔法】禁止だ」
「【火の魔法】禁止!?」
「どうだ? できそうか?」
「や、やります!
がんばります!」
俺は、決意を新たにしたヒルダの頭をナデナデしてから、家に帰った。
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翌日の日曜日。
俺たちは、昨日に引き続いてテレビでヒルダの応援だ。
今日のヒルダは、森の奥へ来ていた。
そして、ゴブリンを見つけては、火以外の魔法で倒してまわっている。
まずは、『水』。
巨大な水の玉ができあがり、ゴブリンに直撃。
周囲の木を巻き込んで、盛大に炸裂。
どうやら、加減が難しいらしい。
『風』、『氷』、『土』も試しているが、どれも同じ感じだ。
次に『雷』。
ヒルダの電撃は、なかなかゴブリンに命中しなかった。
電撃が真っすぐ飛ばないのだ。
上空から落ちる雷も試しているが、そちらの命中率も低い。
これは、練習が必要だな。
次にヒルダが試したのは『光』。
ピカッ!
眩しい光が、ゴブリンの視力を奪う。
しかし、光で攻撃することに関してヒルダはイメージできないらしく、
それ以上の攻撃はできないでいた。
仕方ないので、ヒルダはアヤから借りたナイフを取り出し、攻撃した。
シュバババッ。
ゴブリンは、生きたまま解体されてしまった……。
解体をいつもヒルダに任せていたからな~。
それにしても、鮮やかな手さばきだった。
続いて取り出したのは、エレナから借りた『魔力のロッド』だ。
ヒルダは、別のゴブリンを探し、
やっと見つけた1匹のゴブリンに、ロッドで殴りかかる。
しかし!
ヒルダは攻撃が命中する寸前に中断し、素早く距離を取った。
パシュッ。
ヒルダがいた場所に、どこからか飛んできた『矢』が突き刺さった。
ゴブリンの増援だ。
森の奥から、別のゴブリンが4匹現れた。
矢を放ったのは、こいつらだったのだろう。
ヒルダ、どうする!
俺とエレナとアヤの3人は、
テレビでその様子を見て、ヤキモキしていた。
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