388.初めてのクエスト
向かった森の奥でヒルダが見たものは……!
『キャー! 誰か助けて~!』
小さい女の子がゴブリンに襲われていた!
『【火の玉】!』
ヒルダお得意の【火の魔法】が炸裂する。
ひでぶ~。
火だるまになったゴブリンは、
断末魔の叫びをあげながら、豚の丸焼きのようになった。
襲われそうになっていた女の子は、
目の前でゴブリンの丸焼きが出来上がったのを見て、唖然としていた。
あ!
ホッとしたのもつかの間、
火が森の木に燃え移ってしまっている!
『たいへん!』
ヒルダは、魔法で上手く火をコントロールしながら、なんとか消し止めた。
森で火の魔法を使うのは、あぶないな。
『大丈夫だった?』
火を消し止め終わったヒルダが、女の子に声をかける。
『うわーん』
女の子は、よほど怖かったのだろう、ヒルダに抱きついてきた。
ヒルダは、女の子を落ち着かせようと頭をナデナデしてあげている。
あ、この子、ネコ耳ネコしっぽだ。
「あれ?
この子、ミーニャちゃんじゃありませんか?」
テレビに移った映像を見ていたエレナが身を乗り出す。
ミーニャって誰だっけ?
あ、そうか!
王都の教会に住んでるあの子か!
初めてこの世界の街をエレナと探索した時、お金をすられたんだ。
ヒルダは、ミーニャちゃんのネコ耳をなでなでしている。
『く、くすぐったいよ~』
怖がっていたミーニャちゃんも、だいぶ落ち着いてきた様子だ。
しかし、10歳くらいのネコ耳幼女と12歳の幼女がキャッキャウフフしている様子は……、
ご飯が何杯でもイケそうだな!
『私はヒルダ、あなたのお名前は?』
『私ミーニャ!
お姉ちゃん、助けてくれてありがとう!』
ヒルダは、お姉ちゃんと呼ばれて嬉しそうだ。
周りが年上ばかりだったからな~。
あれ?
そういえば、ヒルダとミーニャちゃんは面識がないのか。
『ミーニャちゃんは、何でこんな森の中に一人でいたの?』
『だって、薬草がなかなか見つからなくって……』
『薬草? 誰かケガでもしたの?』
『ううん、冒険者のクエストなの』
『ミーニャちゃん、冒険者なの?』
『うん!』
マジか!
そう言えば、ギルドで襲ってきた冒険者も、子供が増えてきたとか言ってたな。
あれはミーニャちゃんの事だったのか。
『だからって、森の中に一人で入ったら危ないでしょ』
『うん……』
ミーニャちゃんは、だいぶ反省したらしく、
おとなしくなってしまった。
『じゃあ、私と一緒に薬草を探しましょう』
『ほんとう!?
でも、お姉ちゃんのお仕事はいいの?』
『大丈夫だよ。
私も、薬草探しのクエストやってるところだったから』
『そうなの!?
じゃあ、いっしょだね!』
二人は一緒に森から出て、
楽しそうに薬草集めを再開した。
ちなみにゴブリンの丸焼きは、
討伐の証である『ゴブリンの耳』も丸焼けになっていて、
持ち帰ることはできなかったようだ。
しばらく、二人の様子を見ていたのだが‥‥、
俺は、いてもたってもいられなくなった。
「しばらくヒルダの見守りは中断するぞ」
「え? なんで?」
「ちょっと、野暮用だ」
「野暮用って何よ!」
-----
アヤの質問を無視して、
俺は、ヒルダたちから少し離れた場所に【瞬間移動】した。
「さーて、ヒルダたちが来るまでに、
いっちょやりますか!」
ヒルダたちは、森と草原の境目を、薬草を探しつつ移動している。
それを計算すると、もうちょっとしたら二人がここを通るはずなのだ。
俺はまず、周囲を探す。
しばらくして、未成熟な薬草が群生している場所を発見した。
「よし、ここらへんが良さそうだ」
俺は、薬草以外の雑草やじゃまな木などを素早く取り除いた。
そしておもむろに【大地の魔石】を取り出し、魔力を込める。
この【大地の魔石】は、日の出の塔の地下で『土の精霊』が閉じ込められていたゴーレムを倒してゲットしたものだ。
周囲の植物の成長を促進させる効果がある。
未成熟な薬草は、ニョキニョキと成長し、
立派な薬草群生地のできあがりだ!
「おっと、そろそろヒルダが来る頃だ」
俺は、急いで自宅に戻った。
-----
「もう! 兄ちゃん、何してたの!
ヒルダちゃんの様子を早く見せてよ!」
アヤが怒っている。
エレナも、口にはださないものの、ヒルダを心配しているようだ。
まったく、二人とも心配症だな。
テレビにヒルダの様子を映し出すと……、
『すごーい!
薬草が、こんなにいっぱい!』
ヒルダたちは薬草を見つけて大喜びしていた。
「兄ちゃん……。
これ、兄ちゃんがやったの?」
「な、ナンノコトカナ~」
ちょっと過保護すぎたかな?
アヤの視線が痛い。
まあでも冒険者初日だから、ちょっとくらいいいよね?
『もうカバンに入らないよ~』
ミーニャちゃんが持ってきたカバンは、薬草でパンパンになってしまっていた。
『私も、もう十分だから帰ろうか』
『うん!』
二人は薬草厚めを終え、帰路についた。
『ねえ、ヒルダお姉ちゃん。
いっしょにたくさん薬草を取ってたよね?
なのになんで、お姉ちゃんの荷物はそんなに少ないの?』
『それは、これのおかげなの』
ヒルダは、ミーニャちゃんに腕輪を見せる。
『腕輪?』
『うん。
これは、【格納の腕輪】っていって、物をたくさん入れておける魔道具なの』
『すごーい!』
ミーニャちゃんは、目をキラキラさせていた。
-----
しばらくして二人は、冒険者ギルドに帰ってきた。
『ミーニャさん、すごいですね。
薬草が30束なので、今日の報酬は……、
100ゴールドと、ギルドポイント10ポイントです。
これでギルドポイントの合計が17ポイントになったので、
もうすぐEランクにアップできますよ』
『わーい!』
ミーニャちゃんは、受付のテーブルに背が届かないので、
他から持ってきた椅子の上に立って、受付のお姉さんから報酬の100ゴールド金貨を受け取って大はしゃぎだ。
『ヒルダさんは……。
す、すごい!
薬草が60束なので、
報酬は200ゴールドと、ギルドポイント20ポイントです。
20ポイント貯まりましたので、Eランクに昇格です!
おめでとうございます』
『ありがとうございます』
初日で昇格か~。
まあ、ヒルダだったら当然だな。
受付のお姉さんから100ゴールド金貨を2枚もらったヒルダは、
満面の笑顔をみせていた。
ご感想お待ちしております。




