383.ワイドショー
あけまして
おめでとうごうざいます。
「うぎゃーーーー!!!」
黒山社長は、自分の腕が斬られた事に気が付き、
汚え悲鳴を上げた。
「腕がーーー!!」
黒山社長は人質をすっ飛ばし、自分の斬られた腕を転がるようにして拾い上げ、
血をどくどく流しながら、一生懸命に元の場所にくっつけようとしている。
仕方ない、少しだけ【回復魔法】を使ってやるか。
俺は、【夜陰】で姿を消したまま、
とりあえず、大きめの血管と神経と骨を、そこはかとなくくっつける感じにしておいた。
動かないようにしていれば、それなりになんとかなるだろう。
「救急隊員を!」
やっとフリーズから回復した警察官が、もしものために待機させていた救急隊員を呼ぶ。
すぐさま救急隊員が駆けつけ、警察官が取り囲む中で、応急処置を施す。
人質だった女性は、女性警官が身柄を確保していた。
「いやー、あの手がちょん切れるシーン、すごかったですね~。
アレはどんな仕掛けなんですか?」
人質女性は、まだドッキリだと思っているらしい。
女性警官は、その発言を聞いて、
人質女性が精神的にショックを受けていると判断したらしく、
急いで救急車に連れていった。
黒山社長の方はというと……、
斬られた腕を包帯でぐるぐる巻きにされ、
救急隊員と警察官と報道陣にもみくちゃにされながら、
ギャーギャー騒いで救急車に乗せられていってしまった。
やっと終わった……。
つ、疲れた……。
後のことは警察に任せて、俺は帰宅した。
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「兄ちゃん、おきろー!」
翌朝アヤに、フライングボディアタックで起こされた。
「何するんだ!」
「いいから、早く起きてテレビを見てよ!」
まったく、何だっていうんだ。
昨日はアレのせいで、帰るのがおそかったんだからな。
だいたい、こんな起こし方は、小学生くらいの子供がやることだろ。
俺が、寝ぼけ眼でリビングにいくと、
エレナとヒルダもテレビを見ていた。
『これが、今日未明に黒山プロダクションで起こった事件の映像です』
ん?
朝のワイドショーを見ているのか。
『ここです!
ここからとんでもないことが起きます』
『あ、何もないところから忍者が!!』
忍者が現れるシーンを見て、コメンテーターが驚きまくっている。
ってか、俺のことをニュースでやってるのかよ!
「兄ちゃん、これ、どういうこと?」
アヤは、腕を組んで俺のことを睨みつけている。
どう言い訳をしようか考えていると、
アナウンサーに横からメモが渡された。
『いま、警視庁から新たな情報が発表されました!』
テレビニュースが、急に慌ただしくなってきた。
『こ、これ、本当なんですか!?』
原稿を渡された女性アナウンサーが、カメラがまわっているのを忘れて、
原稿を持ってきた人に聞き返している。
よほど、信じられないないようなのだろう。
『し、失礼しました。
ただいま、警視庁から発表された情報によりますと……。
黒山社長は、人質への暴行容疑に加えて、
未成年者への暴行の容疑でも緊急逮捕されたそうです。
被害者の人数は……37名とのことです』
アナウンサーは、その驚愕の内容をくりかえし読み上げ続けている。
さらに報道番組は続き、
放送内容を変更して、このニュースを報道し続けた。
人数までは確認してなかったけど、
被害者はそんなにいたのか……。
『いま、警視庁前に○○さんが到着しました。
中継を繋ぎます。
警視庁前の○○さん~、そちらの様子はどうですか?』
『はい、警視庁前の○○です。
現在、警視庁前は、詰めかけた報道陣がごった返し、騒然としています』
なんか、大変なことになっているな。
『ただいま、警視庁から被害者に関する新しい情報が入ってきました。
被害者37名の内訳は、女性33名……だ、男性4名!? ……だそうです……』
しかし、男性4名って……。
未成年者なら見境なしかよ!
その後も、某放送局をのぞいたすべてのチャンネルで、
このニュースが報道され続けた。
みんなしてしばらくニュースを見ていたが、
俺は会社があるので、
簡単な朝食を取って、出社した。
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「丸山さん、社長がおよびだそうです」
会社につくと、朝イチで社長に呼び出されてしまった。
「しつれいします」
俺が、社長室に入ると。
「丸山くん!」
社長がいきなり襲いかかってきた。
「うわ、何ですか!?」
社長は、俺にしがみついて泣いている。
「今朝のニュースを見たよ。
もし、君が助け出してなかったら、
めぐみも、同じ目にあっていた。
そう思うと……。
君には、感謝しきれないよ」
今朝の黒山社長のニュースが、よほどショックだったのだろう。
なにせ、孫のめぐみちゃんが、その直前まであの犯人と会っていたのだから。
「社長、お孫さんがお見えで……」
社長秘書さんが、そう言いつつ社長室のドアを開けたのだが、
社長が俺の腰のあたりに抱きついているのを見て、固まってしまった。
「し、失礼しました!」
そして、見てはいけないものを見てしまったように、逃げていく。
どうやら誤解をしてしまったかもしれない。
勘弁してくれ……。
「お祖父様、参りました」
その後、しばらくしてめぐみちゃんが社長室に現れた。
「めぐみ、もう大丈夫かい?」
俺に抱きついていた社長は、
今度はめぐみちゃんに抱きつき、頭をなでている。
「お、お祖父様……」
めぐみちゃんは、昨日家に帰った後、すぐに寝てしまって、
社長とはあまり話ができなかったらしい。
「私は、大丈夫です。
それより、丸山さんのお金が……」
「お金、それはどういうことだ?」
めぐみちゃんは、
俺が救出のために1億円を使ったことを、社長に説明した。
「その1億円は、もしかして……」
「はい、前に社長からもらったものですよ」
「す、すまない……。
めぐみのために、そんなことをさせてしまって……」
「まあ、めぐみちゃんがアイドルになって返してくれるそうなので、
ゆっくり待ちますよ」
「なんなら、ワシがすぐに一億円を……」
「お祖父様、ダメです。
私が返すと、約束したのですから!」
「わかった。
必ず返すのだぞ」
「はい!」
めぐみちゃんは、熱い瞳で大きく頷いた。
「改めて、丸山くん。
礼を言わせてくれ。
ありがとう」
社長は、ソファーから立ち上がり、
俺の横にやってきて、
社長室の床に跪いて、土下座をした。
「ちょ、社長!」
それを見ためぐみちゃんも。
「ありがとうございました」
俺の隣にやってきて、ほっぺにチュウしてきた。
め、め、めぐみちゃんの……唇ががが……。
めぐみちゃんにチュウをされ、
俺が激しく動揺していると……。
「社長、お茶をお持ちしました」
そこにタイミング悪く、さっきの秘書さんが現れた。
ガシャン。
「し、し、失礼しましたーーー!」
秘書さんは、お茶を落とし、片付けもせずに逃げていってしまった。
秘書さん、ノックぐらいしようよ……。
まあ、めぐみちゃんにチュウしてもらっちゃったし、
1億円くらい安いもんだよね。
まあ、もう取り返してるんだけどね!
ご感想お待ちしております。




