381.情報セキュリティ
「さーてと……。
やり残したことを片付けてしまうかな」
俺は、忍者の格好に着替えて、
最後の仕上げに取り掛かった。
【夜陰】で姿を消して、黒山社長の所へ【瞬間移動】する。
「ぐへへへ、1億円……。
なんど見ても興奮してしまう」
すりすり。
うゎぁ、ひくわ~。
お金にすりすりしてる……。
見ていて気持ち悪くなり鳥肌が立ってきたので、
さっそく行動に移すことにした。
「【睡眠】!」
「ふゃっ!?」
黒山社長は、気持ち悪い声を上げて意識を失い、
気持ち悪い顔で1億円に埋もれながらスヤスヤと寝入った。
「き、気持ち悪い……」
俺は、汚い雑巾を扱うかのように黒山社長を1億円から引き離し、
札束をキレイにジュラルミンケースに詰め戻してインベントリへしまった。
「ふう」
コレで目的の1つ目はクリアした。
俺としては、なるべく早くこの気持ち悪い場所からトンズラしたいところだが……。
そうもいかない。
俺は社長室を見まわし、
犯罪の証拠になるようなものがないか、探してみた。
「ん?」
俺が目をつけたのは、社長用デスクの上に置かれた、
PCだった。
ここに何か保存されているかも。
俺は、指紋がつかないように注意しながら、
マウスを動かしてみた。
フォーン。
PCは、スリープ状態から立ち上がり、
パスワード入力画面が表示された。
「うーむ、パスワードか……」
【追跡用ビーコン】の映像を過去にさかのぼって確認してみたが、
パスワードを入力している映像は無かった。
「パスワードが分からなくても、直接ファイルを調べればいいか~」
俺は、【電気情報魔法】でPC内のファイルを調べようとした……。
しかし。
「暗号化されてる……」
ハードディスクには全体的に暗号化が施されていて、
パスワードを解除しない状態では、ファイルを読むことができなかった。
「うーむ、大手IT企業なみの情報セキュリティだな」
個人情報を扱う会社以外でここまで厳重なのは、けっこう珍しいかも?
まあ、それだけ重要な情報が保存されているということだ。
もしかしたら、犯罪の証拠になるかもしれない。
俺は『SE』であって『ハッカー』ではない。
さすがにパスワードを突破するのは、俺には無理だ。
仕方ないので、専門家?のお力を借りることにした。
「【超オラクルちゃん召喚】!」
召喚魔法を使うと、髪の毛が逆立った精霊が登場した。
「オッス、オラ、超オラクルちゃん。
呼んでくれてありがとな!
オラ、なんだかワクワクすっぞ!」
「誰だよお前!」
超オラクルちゃんが、何かのモノマネをしながら登場した。
「何か面白そうなものでもあったの?」
いきなり素に戻るな。
「うむ。
このPCのパスワードを、なんとか解析できないかと思って」
「パスワード?
ちょっとやってみる!」
超オラクルちゃんは、モニタの中に飛び込んでいった。
『なにこれ!
パズルみたいで面白いぃ!!!』
超オラクルちゃんは、データの海に飛び込み、
あんなことやこんな事をしながら、ハッスルしていた。
『あともう少しで……キちゃうぅ。
パスワードが、キちゃうのぉ』
お前はナニをやっているんだ?
『キターーー!!!』
超オラクルちゃんはデータの海の中で、
ダブルピースをしながら、恍惚の表情を浮かべていた。
どうやら、終わったらしい……。
その時、例のアナウンスが、俺の頭のなかで鳴り響いた。
『【電気情報魔法】のレベル上限が2になりました。
【電気情報魔法】がレベル2になりました』
「ふぁっ!?」
魔法レベルがあがった?
このタイミングで?
超オラクルちゃんがパスワード解析を成功させたのが原因かな?
【電気情報魔法】の内容を調べてみたところ、2つの魔法が追加になっていた。
┌─<電気情報魔法>─────
│【パスワード解析】
│ ・強度の低いパスワードを解析できる。
│ レベルに応じて、解析できる強度が上がる。
│
│【どこでも通信】
│ ・離れた位置と電波通信ができる。
│ 電波通信の種類は問わない。
└──────────────
これはいいな。
【パスワード解析】は、いまやってたやつだな。
強度の低いパスワードってどんなレベルなんだろう?
気になるところだ。
【どこでも通信】は、かなり便利だ!
最近では地下鉄内でも携帯の電波が通るけど、
エレベーターの中とか、電波が途切れる場所もまだまだあるんだよね。
それに、『電波通信の種類は問わない』ってことは、
家のwifi電波を、出先で使えるってことなんじゃないか?
だとすると、かなり使える魔法だ。
ひとしきり、新しい魔法の使いみちについて考えた後、
モニタから満ち足りた表情で出てきた彼女に、パスワードを教えてもらった。
「パスワードは……『1230』だと!?」
どうやら、黒山社長の誕生日がパスワードだったらしい。
設定してはいけないパスワードランキングのトップ3に入るやつじゃないか……。
アレだけ厳重にPCを暗号化までしているというのに……。
『片手落ち』とは、まさにこれのことだな。
強度の低いパスワードって、こんな低いレベルなのか?
後で、検証が必要だな。
俺は、判明したパスワードを入力して、PC内を調査した。
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PC内のファイルを、一通り調査し終わった……。
「犯罪の証拠を追ってて、とんでもないものを見つけてしまった。どうしよう……」
俺は、とんでもないものを発見して、唖然としていた。
超オラクルちゃんは、あまりにショッキングな情報を目の当たりにして、
逃げるように帰っていってしまった。
「しかし、まさかここまでクズだったとは……」
スヤスヤ眠る黒山社長を、クズを見る目で蔑んでいた。
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「さて、そろそろ起こすか」
もう一度【夜陰】で姿を消し、黒山社長を起こす。
「【起床】!」
俺が魔法を使うと、黒山社長はゆっくりと目を覚ました。
「……あれ?
俺はどうしてたんだ?
……。
ふぁ!
い、1億円が……無いぃ!!!」
黒山社長は、1億円が消えているのに気がつき、
大騒ぎし始めた。
よしよし、この分なら、
黒山社長のやつ、俺の思わく通りに行動してくれそうだ。
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