373.公開オーディション・最終審査
『それでは、最終審査のアピールタイム開始します!』
『『うわーーー!!』』
とうとう最終審査が始まった。
総勢20名が次々に歌や踊りを披露していく。
さすが、みんなアイドルを目指すだけのことはあって、素晴らしいアピールだ。
そして、みんなかわいい!
めぐみちゃんは20人中20番目、つまり一番最後にアピールする。
この順番が、偶然なのか誰かの策略なのかは分からない。
しかし、最後なら一番印象に残るはずなので、審査には有利に働くだろう。
演奏者やバックダンサーもいるが、その人たちは、ずっとステージ上にいて、
アピールするアイドルたちだけが、どんどん入れ替わっていく形だ。
あの人たち、大変そうだな~。
アピールタイムは順調に進み、19人目のアピールが終了した。
次は、満を持してめぐみちゃんの番だ。
めぐみちゃんが、元気よく舞台上に登場すると、
ひときわ大きな歓声が上がった。
ここまでの活躍で、確実にファンを増やしているのだろう。
笑顔で手を振り、歓声に答えるめぐみちゃん。
しかし、
その直後、舞台上で変な事態が発生する。
バックダンサーと演奏者たちが、舞台上からハケてしまったのだ。
その人たちも全員『本当にこれでいいの?』という顔をしていたので、
誰かに指示されて、それに従っているだけなのだろう。
舞台上に一人取り残されるめぐみちゃん。
どうしていいか分からず、キョロキョロしている。
「セイジお兄ちゃん、どうしちゃったんでしょう?」
「うーむ、分からん。誰かの妨害工作かもしれない。
何かあったらすぐに動けるようにしておくんだ」
「はい!」
そして、次の瞬間。
バチン!
大きな音が会場中に鳴り響き、
それと同時に、会場全体が『闇』に包まれた。
急に真っ暗になり、ざわめく観客たち。
しかし、演出の一環だと思ったらしく、
それほど大きな混乱はない。
暗闇に包まれたのは舞台上だけではなく、
控え室や廊下も真っ暗になってしまっている。
「きゃー!」「うわー!」「何で真っ暗なの!」
控え室の人たちは、悲鳴を上げて驚き戸惑っている。
おそらく、この建物全体が停電しているのだろう。
運良く手元に携帯やスマホを持っていた人は、
それの明かりを頼りにしている。
「セイジお兄ちゃん、真っ暗で何も見えないです!」
ヒルダが、俺にしがみついてきた。
俺は、【闇の魔法】の【夜目】を発動させる。
観客席は、徐々にざわめきが収まりつつあるが、
控え室の方は、あちこちでぶつかったりしていて、大混乱だ。
「セイジお兄ちゃん、めぐみさんが心配です」
「そうだな、いますぐ助けにいこう」
「はい!」
俺とヒルダは【瞬間移動】で、めぐみちゃんのところへ駆けつけた。
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「何これ!
何で、真っ暗なままなの?」
めぐみちゃんは、一人でうろたえていた。
「めぐみさん!」
ヒルダは、真っ暗な中を声だけを頼りにめぐみちゃんのところへ駆け寄り、抱きついた。
「ヒ、ヒルダ!
こんな真っ暗な中、どうやってここまで来たの?」
「セイジお兄ちゃんに連れてきてもらいました」
「セイジが!?」
「俺ならここにいるよ」
めぐみちゃんは、真っ暗な中でホッとしたのか、
俺の声に嬉しそうな笑顔をみせてくれた。
まあ、俺が【夜目】を使っていなければ見えなかっただろうけど。
ってか、めぐみちゃんも、俺が見えてるとは思っても見なかったのだろう。
「ふん、ちょっと暗くなったからって、なに勝手に舞台に上がってきちゃってるのよ!
ここは関係者以外立入禁止なんだからね!」
「そうか~、ごめんな」
震えながらヒルダに抱きついてる状態で強がられても、
ぜんぜん説得力がないですよ~。
まあ暗闇の中だし、見えてないふりをしておくか。
「まあ、私くらいのアイドルになれば、
こんなトラブルくらい、自力でなんとかしちゃうんだから!」
めぐみちゃんは、まだ足元が震えている。
と、その時。
俺の頭のなかで、危険を知らせる警報が鳴り響いた。
さっと、周囲を警戒してみると……、
観客席から、男が一人、舞台上に這い上がろうとしていた。
何だあいつは!
その男は、『暗視ゴーグル』を装着し、
手には『ナイフ』を持っていた。
俺は、【夜陰】を使って暗視ゴーグルにも見えないように姿を消し、
音もなく男の背後に回り込んだ。
ドン。
素早く、男の頭を鷲掴みにし、床に叩きつけた。
「むぎゅ……」
男は、この暗闇の中、攻撃されるとはまったく予想していなかったのだろう。
一撃で意識を失った。
「ちょ、丸山! 今の音は何?」
めぐみちゃんが、怯えている。
「あーごめん、オナラが出そうになって、
少し離れようとしたら、コケちゃった」
「バ、バカじゃないの!
こんな時に、何やってるのよ!」
上手くごまかせたようだ。
しかし、まだ危機は去っていなかった。
倒した男の他に2人、舞台の別々の場所から這い上がろうとしている。
そいつらも、それぞれ『暗視ゴーグル』を装着して『ナイフ』を持っている。
ドン。「うぎゅ……」
ドン。「くぎゅ……」
追加で素早く二人ともやっつけ無力化する。
こいつらいったい何者なんだ?
『暗視ゴーグル』を装着していたところを見ると、
停電も計画の内だったのだろう。
このままにしておくと、停電が回復した時に大騒ぎになって、
めぐみちゃんのアピールができなくなってしまう。
俺は、倒した3人を引きずって、舞台袖の人けのない所へ移動させた。
「ちょっと、丸山、何やってるの!」
「ごめんごめん、またオナラが出そうになっちゃって!」
「そんなのいいから、近くにいなさいよ!」
うーむ、どうしよう。
この3人を見張っていたいけど、
めぐみちゃんの側を離れるのも問題がある。
ここは、あいつを呼ぶか。
俺は【闇精霊召喚】の魔法を使用した。
「セイジさん! 私をおよびですか?」
「ああ、この3人を見張っててほしいんだ」
「分かりました! 私にまかせてください!」
こんな真っ暗な中で見張っててもらうには、闇の中でも見えるこいつが一番だ。
敵が意識を取り戻して逃げようとしても、
こいつには【睡眠】の魔法があるから、すぐさま無力化できるしね。
「それじゃあ、しばらく頼んだ」
「はい! セイジさん!」
見張りを闇精霊にまかせて、
俺は、めぐみちゃんの所へ戻った。
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