370.ぐちょぐちょにされためぐみちゃん
「火精霊召喚……」
俺は、小声で火精霊を召喚した。
「あたしを呼び出したのは、お前か!!
そして敵はどこだ!!?」
気づかれたらマズイのに、うるさいやつを呼んでしまった。
まあ、一般人には精霊は見えないし、声も聞こえないから平気なんだけどね。
「戦闘ではないよ。
ちょっとお願いがあって呼んだんだ」
「ん? なんか声が小さいぞ!
もっと腹から声を出せよ!」
「悪いけど、敵に見張られているんだ。
だから、大声を出せないんだよ」
「なるほど、そいつらをやっつければ良いんだな!」
「違うから!」
俺とヒルダは、二人とも火精霊と契約をしている。
だからこいつを呼んだんだけど……。
他のやつにすればよかったかな。
「実は、ヒルダと俺の二人で、とある人物の護衛をしていたんだが、
敵の罠にはまって、散り散りにされてしまったんだ。
そこで、君に伝言役を頼みたい」
「伝言役? 敵と戦わないのか?」
「特殊任務で、あまり派手なことは出来ないんだよ」
「なるほど。
それで、あたいはヒルダに何を伝えれば良いんだ?」
「護衛対象の『めぐみちゃん』の居場所を知らせて、
ヒルダと君で、そこへ向かって欲しいんだ」
「う……。
なんだか、こむずかしそうな任務だな」
なんか不安になってきた。
「じゃあ、ヒルダとめぐみちゃんの居場所を教えるから、
頼んだぞ」
「ヒルダの居場所は、分かるから平気だ」
「え? 分かるの?」
「精霊契約している相手なら、居場所は分かる」
「なるほど」
めぐみちゃんの居場所を教えて、【追跡用ビーコン】をつけ、
そして火精霊は、扉のすきまから外へ飛び出していった。
大丈夫かな~?
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なんだか、『初めてのおつかい』を見ている気分だ。
火精霊は、ヒルダのいる方に向かっていた。
しかし、建物内のいろんな物に目移りして道草をくっている。
おい!
そんなことしてる場合じゃないだろ!
そして火精霊は、赤くてぶっといとある物にフラフラと近寄っていく。
おいバカやめろ、お前が興味津々で触っているものは、『消火器』だぞ!
お前は火精霊なんだから、それは天敵だぞ!
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いろいろ寄り道をして、だいぶ時間がかかってしまったが、
やっと火精霊はヒルダのところへ到着した。
「ヒルダ! やっと会えた!」
「あれ!? 火精霊さま!
どうしてここに?」
「セイジに召喚されて、伝言を伝えにきた」
「セイジお兄ちゃんに?
お兄ちゃんは、いまどうしてるんですか?」
「敵に捕まって見張られてて動けないんだってさ!」
「そ、それは大変!
助けに行かないと!」
俺を心配してくれるのは嬉しいけど、
それより先にやることがあるよね?
「あ、そうだ。
セイジからの伝言で『めぐみちゃんのところへ行け』ってさ」
「え? めぐみちゃんのところへ?」
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一方その頃、めぐみちゃんはというと……。
「ああん! 私……もう我慢できない!
こんなに、ぐちょぐちょになっちゃった……」
めぐみちゃんは、そう言って服を脱ぎ始めた……。
こ、これは危険だ!!
俺は、めぐみちゃんを監視する任務を、力の限り頑張っておくことにした。
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「火精霊さま、こっちでいいのですか?」
「ああ、たぶん……そのはず」
ヒルダと火精霊は、俺の教えた通りに廊下を進み、
とある部屋の近くまで来ていた。
「あ! たぶん、あの部屋だ」
「あ、警備員さんがドアの前にいます」
やっとめぐみちゃんのいる部屋の前にたどり着いたが、
また警備員が、ドアを守っていた。
「敵か? あいつ敵なのか?」
「分かりません、ちょっと話をしてみます」
ヒルダは、恐る恐る警備員に話しかける。
「あの~、この辺に八千代めぐみちゃんがいるはずなんですけど、
知りませんか?」
「ん?
そんなやつは、知らん!
さっさとどっかに行け!」
「は、はい……」
警備員に冷たくあしらわれ、
ヒルダは、いったんその場を離れた。
「火精霊さま、あの部屋にめぐみちゃんがいるかどうか、
見てきていただけませんか?」
「分かった、あたいが見てこよう」
ヒルダのスマホに保存してあっためぐみちゃんの写真を見せ、
火精霊は、部屋の中を確認しに行った。
「いたぞ!
さっき見せられた絵の娘が、部屋の中にいた」
火精霊は、めぐみちゃんを見つけて帰ってきた。
まあ、俺が地図で確認したから、当たり前なんだけどね。
「やっぱり!
火精霊さま、ありがとうございます!」
めぐみちゃんがいることを確認したヒルダは、
意を決して、再び警備員の前に。
「やっぱりめぐみちゃんは、この部屋にいますよね?
なんで嘘をつくんですか?」
「な、なんだと!?
うるさいガキだな、放り出すぞ!」
警備員は、でかい図体でヒルダを捕まえようと手を伸ばす。
ヒルダは、その手をサッと避け、
警備員の股の下をすり抜けて、ドアの所へ。
ドンドンドン。
ヒルダはドアを激しく叩く。
「めぐみちゃん、そこにいるんですか?」
「え? その声はヒルダ? どうしたの?」
めぐみちゃんの呑気な声が、部屋の中から聞こえた。
「めぐみちゃん!
やっぱり、いたんですね!」
ヒルダは振り返って、
かわいい瞳で、警備員を睨みつける。
「警備員さん、何で嘘をついたんですか?
めぐみちゃんを閉じ込めて、どうするつもりなんですか?」
「ぐぬぬ……。
バレたからには仕方ない。
お前も、閉じ込めてやる!!」
警備員がヒルダに襲いかかる。
ヒルダは、素早く戦闘態勢に移る。
しかし……。
ボッ。
どこかで、変な音が聞こえた。
「うぎゃー!!
熱い熱い!!!!
俺の髪の毛がーーーーー!!!!!」
警備員は、髪の毛をボウボウ燃やしながら、
大慌てでどこかへ逃げていってしまった。
火精霊が牽制のつもりで敵の髪の毛に火をつけたのだが。
それだけで、戦いは終わってしまった。
「火精霊さま、ありがとうございます」
「まさか、あんなに弱い敵だったとは……。
張り合いがなさすぎる……」
火精霊は暴れ足りずに、落ち込んでいた。
どんだけ戦闘狂なんだよ。
ガチャ。
ヒルダは、めぐみちゃんが閉じ込められていた部屋の鍵を開ける。
「めぐみちゃん!
大丈夫ですか!?」
「ヒルダ、どうしたの?」
めぐみちゃんは、ヒルダが慌てている事に驚いていた。
どうやら、待合室が変更になったと言われて、それを信じ切っていたらしい。
「めぐみちゃん、びしょびしょです!
どうしたんですか?」
「なんだかこの部屋、クーラーが故障しているみたいで、暑くって!
もう、我慢できずに衣装の上着を脱いじゃった。
それでも、汗でぐちょぐちょになっちゃって」
ヒルダは、タオルを取り出し、めぐみちゃんの汗を拭ってあげていた。
誰だ!
変な想像をしたやつは!
……ごめんなさい。
めぐみちゃんは、汗を拭い、服装を治したあと、
ヒルダに連れられて元の控室に戻っていった。
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あれ?
俺は、いつ解放されるんだ?
ご感想お待ちしております。




