355.世界空手大会決勝3
試合は、重量級決勝。
舞衣さんとオリガ選手の試合が始まろうとしていた。
オリガ選手は、かなり身長が高く、大人の女性といった感じだ。
舞衣さんと並ぶと、完全に親子にしか見えない。
「始め!」
審判の合図で最後の試合が始まった。
オリガ選手は、マーシャ選手やイリーナ選手よりも、
早く、そして、力強かった。
ちょっと【鑑定】してみるか。
┌─<ステータス>─
│名前:オリガ 年齢:21
│職業:被験者
│
│レベル:8
│HP:1256
│MP:139
│
│力:129 耐久:37
│技:129 魔力:14
│
│スキル
│ 肉体強化3
│ 体術5
└─────────
おお、強い!
体術5って事は、これまでの二人と違って、
ずっと空手をやってきた人なんだろう。
【肉体強化魔法】も、レベル3だし!
まあ、それでも舞衣さんには、かなわないけどね。
舞衣さんは、さっきからあまり本気を出していない。
おそらく、オリガ選手が力を隠し持っているのを察していて、
実力を出してくるまで待っているのだろう。
そんな舞衣さんの思いに答えるように、
オリガ選手は、少し距離をとり、
『マトリョーシカ三姉妹』特有の集中するポーズを取り始めた。
すぐに、オリガ選手が【肉体強化魔法】で強化を完了させ、
ふたたび舞衣さんに突撃をかける。
お!
オリガ選手の動きが、かなり良くなった!
オリガ選手の【肉体強化魔法】は、これまでの2人と違って、
力、速さ、防御など、複合的に強化してるっぽい。
そして、オリガ選手と舞衣さんの、本格的な戦いが開始され、
激しく戦う二人からは、重低音が連続で鳴り響いていた。
案の定、一般の人には速すぎて見えないようで、
審判たちは困り果てている。
逆に、観客席の人たちは、見えない戦いに賞賛の歓声を上げていた。
アヤの時は、みんな唖然としていたけど、2回目だから慣れてきたのかな?
オリガ選手は、体に無理がかからないように、
上手く肉体強化魔法を使っているらしく、
舞衣さんも安心して戦いを楽しんでいるようだった。
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しばらくの間、一般人には目で追えないハイレベルな戦いが続いていたが……、
オリガ選手のMP切れだろうか、
とうとう、オリガ選手は息切れを起こし始めた。
満身創痍のオリガ選手。
彼女は、力を振り絞って最後の一撃を放った。
しかし、その攻撃は舞衣さんに受け流され、
スキだらけになったオリガ選手は、舞衣さんの見事な正拳突きを食らってしまった。
「一本! それまで!」
オリガ選手は、そのまま後ろ向きに倒れ、
仰向けのまま顔を手で覆って、悔しさに震えていた。
そして、舞衣さんの重量級優勝が宣言された。
オリガ選手は、舞衣さんに手を差し伸べられて立ち上がる。
そして、そのまま、二人は固い握手をかわした。
「「おぉーーーー!!」」
会場からは、割れんばかりの歓声と、拍手が鳴り響いた……。
あれ?
けっきょく何も起きなかったな。
いけない、いけない。
こんな不謹慎なことを考えてちゃダメだな。
二人は、お互いに礼をして……。
あれ?
オリガ選手が、礼をしたまま顔を上げない……。
感極まってしまって、顔を上げられないのかな?
「うぐぐ……」
なんか、オリガ選手が……、
心臓のあたりを手で抑えて苦しみだした。
ドクン!
オリガ選手の心臓の音が、
なぜか、離れた俺の場所まで聞こえた。
「ぐわぁーーー!!!」
オリガ選手が、さらに激しく苦しみだす。
舞衣さんも、異変を感じて警戒態勢をとった。
ドクン、ドクン!!
心臓の音がまた、激しく聞こえ、
その音と連動して、オリガ選手の体が、
ビクンビクンと、痙攣し始めた。
そして、それに合わせて、
なんかオリガ選手の体が、微妙に大きくなっているような気がする……。
そんなこと、あるわけないのに……。
いや!
気のせいじゃない、
本当に大きくなってきている。
筋肉がモリモリ膨らみ、
まるでオークのような、体つきになってきている。
あまりの出来事に、静まり返る会場。
「オリガ選手、大丈夫ですか?」
審判の一人が話しかけたが、
オリガ選手は、まったく反応しない。
困り果てる審判たち。
しばらくして、オリガ選手の痙攣が止まった。
そして……。
「グワーーッ!!」
オリガ選手は、叫び声を上げ、
近くにいた審判さんに、急に殴りかかった。
ドカン!
殴られた審判さんは、壁まで吹っ飛び気絶した。
あれ、マズイんじゃないか?
オリガ選手が、さらに別の人を殴りに行こうとした時、
舞衣さんが、とっさに立ちはだかり、その拳を受け止める。
ドオン!
そうとうな衝撃だったのだろう。
拳を受け止めた舞衣さんの足元、
板張りの床が、衝撃で少しめくり上がってしまった。
会場にいた審判やそれ以外の人たちが逃げ惑い、
代わりに警備員が駆けつけてきた。
しかし警備員たちは、暴れるオリガ選手が怖くて、近寄れないでいた。
「俺たちも、下に降りるぞ!」
俺は、観客席から飛び降りて、
舞衣さんのところへ駆け寄った。
エレナとヒルダも、俺を追って飛び降り、
ケガをした審判さんのところへ向かった。
「あ、お兄さん。
これ、どういう事なんだい?」
俺が横につくと、舞衣さんが話しかけてきた。
「俺にも分からん。
とりあえず、この人を止めないと」
「了解」
俺と舞衣さんは目配せをして、
同時に駆け出した。
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