354.世界空手大会決勝2
世界空手大会『中量級、決勝戦』。
アヤ対マーシャの戦いは、激しい連続攻撃の応酬となっていた。
マーシャの攻撃は、アヤがすべて避けている。
それに対しアヤの攻撃は、そのすべての攻撃が命中している。
しかし、なるべく相手にダメージがいかないように、
当たるか当たらないかギリギリのところで寸止めしているので、
双方ともに、ダメージを受けてはいない。
本来なら、ダメージがいかない攻撃だとしても、
当たりさえすれば『一本』とみなされ、アヤの勝ちなのだが……。
主審は、アヤの『一本』をまったく無視している。
アヤは、『私の勝ちじゃないの??』と言わんばかりに、
主審のことをチラチラ見ているが……。
アヤや、お前の攻撃……、
速すぎて一般の人たちに見えてないですよ~。
対戦相手のマーシャも、
自分が負けていることは分かっているのだが、
ムキになって我を忘れているようで、
一向に攻撃を止めようとしない。
「「……」」
主審、副審、観客席の一般人たちは、二人のあまりの速度に唖然とするばかり。
試合会場は誰も一言も発せず、
ただただ二人の激しい戦闘の音だけが、静かに鳴り響いていた。
さすがに、これはマズイけど……、
アヤとしては、マーシャの速度に合わせているだけなので、どうしょうもない。
さて、この状況……、
どうしよう……。
そんな状況が1分ほど続いたあたりで、
激しい戦いに、微妙な『変化』が出始めた。
マーシャの攻撃の速度が、だんだん落ちてきたのだ。
MPが切れたのかな?
そしてアヤも、相手に合わせて攻撃の速度を落とす。
この段階になって、
ようやく一般人の人たちにも二人の戦いを理解できる者が現れ始めた。
「何だこの試合は!?」
「これCG?」「早送り再生?」
徐々に観客のざわめきが大きくなり、
最後には、大歓声に変化していった。
そして、その数十秒後。
アヤは、異変を感じて、
思わず数歩下がって距離をとった。
……!?
アヤが距離をとったのに、
マーシャは、その場を動かなかった。
マーシャの足が動かないのだ。
マーシャ自身も、自分の足の状態に驚いている。
そして、そのまま、ゆっくりと……、
マーシャは、倒れた。
マーシャは、もう一度立ち上がろうとしているのだが、
足が思うように動かず、起き上がれないでいた。
そのうち、手も動かなくなっていき、
まるで芋虫のように、うごめくばかり。
アヤも、主審も、副審も、観客たちも、
何が起こったか分からず、静まり返って微動だにしない。
「ウギャーーーーーー!!」
いきなりマーシャが悲鳴をあげだした。
よく見ると、マーシャの両手両足すべて、
赤く腫れ上がって、太さが2倍くらいになっている。
何が起こってるんだ??
もしかして【肉体強化魔法】で速度を上げすぎて、
マーシャの体がついてこられなかったのか?
俺たちが魔法で速度を上げる時、体に負担がかからないようにする。
骨、筋肉、筋などの耐久を上げたり、
足への衝撃を減らすために、【土の魔法】で衝撃を逃したりする。
マーシャは、それらをまったくせずに、
あまり鍛えていない体を酷使しすぎたのかもしれない。
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「審判さん! 早くドクターを呼んで!」
アヤが叫ぶ。
審判たちは、放心状態からハッと気づき、
慌ててドクターを呼びに行く。
ほどなくしてドクターが急いでやってきた。
しかし!
物凄い勢いで、そのドクターを押しのけるように白い影が現れる。
『白いコートの男』だ。
ドクターが押しのけられて立ち止まっているスキに、
男はマーシャに駆け寄った。
薄情そうに見えたけど、けっこうマーシャを心配していたんだな。
と、感心したのもつかの間。
男は、怪しげな注射器を取り出し、マーシャの首の後ろ辺りにプスリ。
マーシャは途端に意識を失い、おとなしくなった。
あの注射……、大丈夫なのか?
男は、薄気味悪い笑顔を浮かべながら、
マーシャの体をあちこち調べている。
やはり、研究対象としてしか見ていないのかもしれない。
「あの人、大丈夫でしょうか?」
エレナとヒルダが心配そうにしている。
けっきょくマーシャは、担架に乗せられて退場してしまった。
そして、会場に残されたアヤに、
中量級の『優勝』が宣言された。
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俺は、【追跡用ビーコン】を飛ばし、
担架で運ばれている最中のマーシャの様子を見ていた。
『ははは、これは良いデータが取れそうだ!
まさか、あんな症状がでるとは!』
担架で運ばれているマーシャの横で、白いコートの男は嬉しそうにはしゃいでいた。
担架でマーシャを運ぶ職員は、いったん医務室に入ろうとしたのだが、
白いコートの男に止められて、
マーシャたちの控え室に運び込まれた。
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控え室では、マトリョーシカ三姉妹の『オリガ』選手が、
次に行われる重量級決勝戦の準備をしていた。
『マ、マーシャ!!
これは、いったいどうしたというんですか!?』
オリガ選手は、運び込まれたマーシャの様子を見て驚いている。
『どうやら例の力を使いすぎたようだ』
【肉体強化魔法】の事を例の力と呼んでるようだ。
『マーシャは、大丈夫なんですか?』
オリガ選手が、心配そうにマーシャをのぞき込む。
他の2人は変な人だったけど、
この人は、まともそうだ。
『お前は、次の試合のことだけを考えろ。
あ、そうだ!
試合の前に、コレを飲め』
男は、オリガ選手に、
何やら、怪しい『錠剤』を手渡した。
『これは?』
『いいから飲め!』
『あ、はい……』
オリガ選手は、その怪しげな『錠剤』を、
ゴクリと飲み込んだ。
いったい何なんだ、あの『錠剤』は!?
なんか……、
もの凄く、嫌な予感がする……。
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