353.世界空手大会決勝1
ワーワーワー。
みんなで楽しくお茶をしていると、
何やら急に外が騒がしくなった。
「何かあったのかな?」
俺は、追跡用ビーコンを飛ばして、様子を見にいった。
どうやら、またケガ人が出たみたいだ。
アマゾネス三姉妹の一番下、アン選手が足を負傷して医務室に運び込まれていた。
『くそう、あのイリーナとかいうロシア女、
クソみたいな力しやがって!』
アン選手はドクターに治療されながらぼやいていた。
どうやら相手は、きみよちゃんをケガさせたイリーナ選手だったらしい。
おそらく、また【肉体強化】の魔法を使ったのだろう。
『まったく、今回の大会はやけにケガ人が多いですね』
ドクターも、ぼやきながら治療をしていた。
きみよちゃんと、アン選手以外にもケガ人が出てるのかな?
俺たちが試合を見てない間に、変なことになってるみたいだな。
「そろそろ観客席に戻るよ。
きみよさんも観客席に行くかい?」
「いいえ、私はもうしばらくここにいます。
お茶、ごちそうさまでした」
きみよちゃんはニッコリ微笑んだ。
俺は、手を降って、
エレナとヒルダと一緒に、控え室を後にした。
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観客席に戻り、試合の進み具合を見てみると、
もう『軽量級、準決勝第2試合』が始まっていた。
試合は、つつがなく決着し、
カナダの選手が決勝進出を決めていた。
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次の『中量級、準決勝第1試合』は、ロシアのマトリョーシカ三姉妹の真ん中、
マーシャが決勝進出を決めた。
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次は、『中量級、準決勝第2試合』アヤの出番だ。
対戦相手は、アメリカのエミリー選手。
試合前、エミリーがだいぶいきがっていたが、
圧倒的な強さでアヤが勝利した。
そして、試合終了後にエミリーが、涙目になりながらアヤに話しかけている。
「おい、ジャパニーズ」
「なに?」
「私の完敗だ。
でも、ロシア女にだけは、絶対に負けるなよ!」
「まあ、私に任せておきなさい」
そうして、アヤとエミリーは固い握手を交わし、
会場全体から二人に、温かい拍手が送られていた。
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次の試合、『重量級、準決勝第1試合』は、
舞衣さんが、なんなく勝ち進んだ。
まあ、当たり前だけど。
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『重量級、準決勝第2試合』は、
ロシアのマトリョーシカ三姉妹の長女オリガとブラジル選手の試合だった。
地元ブラジルの選手が登場すると、会場から大歓声が上がった。
しかし、その大歓声は、すぐさま静かになってしまった。
ブラジルの選手は手も足も出せず、オリガ選手に完敗した。
まったく試合にもなっていない、赤子の手をひねるような試合だった。
地元応援団の落ち込みっぷりは、すごかった。
各階級の準決勝戦がすべて終わり、
決勝進出する6人が決定した。
軽量級は、ロシアのイリーナ選手と、カナダの選手。
中量級は、ロシアのマーシャ選手と、アヤ。
重量級は、ロシアのオリガ選手と、舞衣さん。
ロシアは、マトリョーシカ三姉妹が、全員決勝進出を決めている。
さすがだな。
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続いて、決勝戦が始まった。
最初に行われた『軽量級、決勝戦』は、ひどかった。
ロシアのイリーナ選手は、
カナダの選手がわざとガードするように仕向け、
そのガードの上から、わざとケガをするような強打をしつこく浴びせていた。
カナダの選手の顔が苦痛で歪むたび、
イリーナは薄ら笑いを浮かべていた。
とうとう、カナダの選手はガードすらできなくなり、
棒立ち状態になってしまった。
イリーナは、壊れたおもちゃを捨てるような冷たい目をして、
無防備な相手に最後の一撃を加えた。
勝敗は決した。
カナダの選手は試合会場の壁まで吹っ飛び、まったく動かない。
急いで担架が運び込まれ、医務室に運ばれていった。
会場は静まり返り、
勝利を宣言されたイリーナは、無表情のまま控え室に戻っていった。
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続いて『中量級、決勝戦』
アヤとロシアのマーシャが会場に姿を表した。
マーシャは無表情のまま、位置につき、
アヤは、会場の観客たちに手をふって愛想を振りまいている。
なんか嫌な予感がする……。
俺は、マーシャを【鑑定】してみた。
┌─<ステータス>─
│名前:マーシャ 年齢:16
│職業:被験者
│
│レベル:5
│HP:448
│MP:60
│
│力:48 耐久:24
│技:48 魔力:6
│
│スキル
│ 肉体強化2
│ 体術4
└─────────
きみよちゃんをケガさせたイリーナより、さらに強い。
肉体強化もレベル2だし。
普通の人が勝てないわけだ。
まあ、アヤにはかなわないだろうけどね。
それでも、やっぱり、嫌な予感がする。
「始め!」
審判の合図で、とうとう試合が始まってしまった。
マーシャは、開始と同時に猛然とアヤに襲いかかる。
しかしアヤは、その初撃を苦もなく避けてみせた。
マーシャの拳が空を切り、
その風圧が、低い音となって会場全体に響き渡った。
どよめく会場。
初撃が避けられ、目を丸くするマーシャ。
あの選手が表情を変化させたのを始めて見た。
しかしマーシャは、すぐに表情を元の無表情に戻し、
懲りずにアヤに襲いかかる。
アヤに避けられる可能性も考慮し、
今度は連続攻撃を繰り出してきた。
初撃の失敗をすぐさま判断し、次に活かす。
冷静な判断力だ。
しかし、その連続攻撃も、アヤはすべて避けてみせた。
マーシャは、驚愕の表情を浮かべて、
いったん距離をとった。
同じように、会場の観客からも、どよめきが沸き起こっていた。
「うそだろ、信じられない」
「あのふたりは、とても人間の動きじゃないぞ」
「動きを目で追うのがやっとなくらいだ」
うーむ、相手が相手だけに仕方ないけど、
ちょっとマズイかも。
そして、距離をとっていたマーシャは、
ニヤリと笑みをこぼし……、
何かに集中しているようなポーズをとりはじめた。
おそらく【肉体強化】の魔法を使っているのだろう。
それと同時に、
アヤもまた、ニヤリと笑みをこぼしていた。
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