346.マサムネ
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日本国技館での空手大会が終わり、
リオでの世界大会に向けて、準備を進めた。
とはいっても、舞衣さんとアヤが優勝することは間違いなかったので、パスポートの取得なんかは、もうすでに済ませてある。
だから用意したものといったら、
ダミーのスーツケースとか向こうで着るための服とかくらいだ。
だがアヤ、お前は服を買いすぎだ!
向こうで何回着替えるつもりなんだ!
~~~~~~~~~~
そして、リオへ旅立つ金曜日の夕方、
俺は一人で、とある場所へ来ていた。
マサムネさんのところだ。
刀を預けて、ちょうど10日目。
今日は、待ちに待った新しい刀が完成する日だ。
「こんにちは」
「……よう……やっと、来たか……」
店に着くと、マサムネさんが新しい刀を持って出てきた。
しかし、フラフラで今にもぶっ倒れそうだ。
「うけとれ、ワシの渾身の1本だ」
「ありがとうございます」
刀を受け取ると、
マサムネさんは、ガクッと膝をついてしまった。
「マサムネさん! 大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫……では……あまり……ない」
これは危険だ!
俺は、倒れそうになっているマサムネさんを支え、
近くにあった椅子に座らせて、
回復魔法で治療を開始した。
「何があったんですか!
病気ですか!?」
「ちがう……
10日間……ずっと、刀を、打っていた……」
「10日間!?
そんなに忙しかったんですか?」
こんな忙しい時に、俺の刀を頼んじゃって申し訳なかったな。
「違う違う、お前さんの刀1本だけを、10日間、打ち続けていたんじゃ……」
「は?」
刀を打つのって、けっこう重労働じゃなかったっけ?
それを10日間も!?
「こんなに晴れ晴れとした気分は初めてだ……。
ワシの今まで培った技術を……すべて、その1本に叩き込んだ。
その1本は、ワシの『生きた証』だ。
もう思い残すことは……何も、ない……
故に、その刀の名は……
『マサムネ』と、呼んで……くれ……」
マサムネさんは、そう言い残すと……。
ガクッと、力なく椅子の背にもたれかかり、
動かなくなってしまった。
「ちょっ!?
マサムネさん!!
マサムネさーーーん!!!!」
……。
「なんだ! うるさいな!
ワシは10日間も、寝ずに刀を打っていたんじゃ!
静かに寝かせろ!」
「え!?」
死んだのかと思ったら、寝てただけか……。
しかし、そのボケは年齢的にシャレにならんぞ!
寝室まで運んでやると、マサムネさんは、大いびきで爆睡し始めた。
「やれやれだぜ」
俺は、一息ついて、受け取った刀を鞘から抜いてみた。
えらく綺麗な刀だな~。
完全に美術品だ。
すべてのお手本になりそうな、まさに『刀』といった感じの一品だ。
せっかくなので、その場で【鑑定】してみた。
┌─<鑑定>────
│【名刀マサムネ】
│刀工マサムネが人生を掛けて作り上げた刀
│使用者の癖を吸収し、強くなる
│能力:魔物への攻撃力上昇
│ 無制限に魔力を斬れ味へ変換
│レア度:★★★★★★
│試練:
│ 雷の精霊と契約 1/1
│ 氷の精霊と契約 1/1
│ 闇の精霊と契約 1/1
│ 光の精霊と契約 0/1
│ 肉体強化精霊と契約 0/1
│ 情報精霊と契約 1/1
│ 回復精霊と契約 0/1
│ 時空精霊と契約 1/1
└─────────
あれ? まだ続きの『試練』があるじゃん。
しかも、8つの試練の内5つがクリア済みだし!
ということは、これよりさらに上があるのか……。
しかし……これ以上となると……、
鍛え直す時、マサムネさんの体がもつのかな?
さっそく試し斬りしたい……のは、やまやまだけど……、
もう少ししたらリオへ出発しないといけない。
まあ、夜中とかにどこかで試し斬りすればいいか……。
試し斬り……楽しみだな……。
心残りを残しつつ、俺は刀を鞘に戻し、
大いびきをかいているマサムネさんをそのままにして、日本へ帰宅した。
~~~~~~~~~~
「兄ちゃん、おそーい、飛行機もう出ちゃうよ
部長と百合恵さんは、もう空港にいるって!」
「あ、はいはい」
まったく、落ち着きがないんだから。
「セイジ様、アヤさん、いってらっしゃい」
「いってらっしゃい」
エレナとヒルダが玄関までお見送りに来てくれた。
「向こうについたら迎えに来るから、
二人でしばらく留守番を頼むな」
「はい、お任せください」
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エレナとヒルダに見送られながら、
俺とアヤは、【夜陰】で姿を消しつつ空港へ【瞬間移動】し、
人気のない場所を探して【夜陰】をとき、
舞衣さんと百合恵さんの待つ集合場所へと急いだ。
「部長、百合恵さん、おまたせ~
兄ちゃんがグダグダしてて遅れちゃったよ~」
「やっと来たね、待ちくたびれたよ」
「あ、アヤさん、そのお洋服かわいいですね~」
「百合恵さんもそう思う?」
アヤたちは、旅行に胸踊らせてテンションが上がっているみたいだ。
こいつらを引率するの、疲れそうだな~。
飛行機や、向こうのホテルなどは空手道協会が用意してくれたので、
3人を引率して、搭乗手続きなどを済ませた。
「兄ちゃん、飛行機には何時間くらい乗ってればいいの?」
「乗り換えとかもあるけど、全部で24時間だな」
「に、24時間!?
出発が、今日、金曜日9時だから、明日、土曜日の9時までずっと飛行機に乗ってるの!?」
「そうなるな」
「飛行機だけで1日終わっちゃうのか~
あ、でも、時差があるんだっけ?」
「ああ、日本とリオデジャネイロの時差は、12時間だ」
「到着するのが土曜日の9時で、時差が12時間だから~
うーんと……
兄ちゃん、計算よろ!」
「おい!
到着した時の現地時間は、土曜日の朝9時だよ」
「なーんだ。
一晩寝れば朝には到着するのか~
心配して損しちゃった~」
こいつバカだ……。
24時間も寝続けるつもりかよ!
ご感想お待ちしております。




