342.予期せぬ攻撃
「始め!」
『アヤ』対『西村玲子』、中量級の決勝戦が開始された。
まず先制攻撃を仕掛けたのは、西村玲子だった。
西村玲子は、ものすごい連続攻撃でアヤを攻め立てる。
アヤは、サイドステップですべての攻撃を避けていた……。
あれ?
なんか、アヤの様子が変だ。
アヤは、西村玲子を睨みつけているばかりで、全然攻撃をしようとしない。
しばらくすると、西村玲子は息が切れたらしく、
バックステップで距離をとり、呼吸を整えている。
そうすると、こんどはアヤは前に進み出てきた。
しかし、アヤは攻撃もせずに、ずんずん前に進むだけ。
アヤのやつ、だいぶ激おこっぽいな。
西村玲子は警戒して、ズリズリと後ずさる一方だ。
しかし、ちょっと逃げすぎじゃないのか?
「西村玲子選手、忠告!」
とうとう、忠告を取られてしまった。
「なんですって!
何故わたくしが忠告を取られなければいけないのですか!!」
西村玲子が、審判にくってかかってる。
「従わないようなら、反則負けにしますよ!」
審判にそう言われてしまい、しぶしぶ引き下がる西村玲子。
そのままアヤを睨みつけたかと思ったら、
なぜか後ろを振り向いて、
自分の真後ろの観客席にいる怪しげな男に合図を送っている。
応援に来た知り合いかな?
「始め!」
試合が、再開された。
こんどは、西村玲子もアヤも、正面から衝突しようとしていた。
しかし!!
何の脈略もなく、
【危険】を知らせるアラームが、けたたましく鳴り響き、
アヤの顔面を貫く直線上に【攻撃予想範囲】が表示された!
え!?
よく見ると、アヤの額の中央に、緑色の光の点が移動している。
銃の照準を合わせるために照射されるアレだ。
「アヤーー!! 避けろーー!!!!」
「!?」
俺が思わず叫んでしまったが、
アヤは、俺の声を聞いて素早くソレを避けた。
静まり返る会場。
……会場では一見すると、何も起こらなかった。
しかし、ソレは、確実にアヤの顔面を狙って発射された。
その攻撃は、西村玲子の後ろの観客席からだ。
俺は、怒りに我を忘れていた。
脇目もふらず、席を飛び出し。
観客席の手すりの上に飛び乗り、
手すりの上をダッシュする。
俺のいきなりの行動に、騒然とする、会場。
犯人は、俺に気づかれたことを悟り、
急いでソレをカバンに隠そうとしている。
俺は、手すりの上からジャンプして、犯人に向かって飛び込んだ。
「動くな!」
「ひい!」
犯人を抑えこみ、腕を締め上げる。
「痛い痛い!
何をするんだ!」
痛がる犯人。
「それはこっちのセリフだ!」
俺は頭に血がのぼり、さらに男の腕を締め上げる。
「ぎゃー!!
マジで痛いって!!
ちょっと脅かしただけだろ、ムキになるなよ!!!」
会場は静まり返り、
俺と犯人の争う音だけが、響いていた。
俺と、犯人の様子を聞きつけ、
会場の警備員が集まってくる。
「何の騒ぎですか!」
「これです」
俺は、犯人の右手を、警備員さんに見えるように持ち上げた。
ポロッ。
犯人の手から、何かが落ちる。
「こ、これは……」
ソレは、【レーザーポインタ】だった。
「すいませんが、お二人とも来ていただきます」
俺と犯人は、警備員さんに連れられて、警備員室に連れて行かれた。
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「どうしても、お名前を教えていただけないというのですか?」
犯人の男は、頑として自分の名前を名乗らなかった。
「ふんっ、
なんで名前を名乗らないといけないんだ!」
「仕方ありません、では仮に『Aさん』とお呼びしますね」
「何だよソレ、まるで犯罪者みたいな呼び方するんじゃねえよ!
これくらいのことで大げさなんだよ!」
犯人は、悪びれずもせずに開き直っている。
しかし、こいつが持っていた【レーザーポインタ】、
世界最高出力を宣伝文句にしている超強力なやつだ。
確か、5万円くらいするはずだ。
こんな強力なやつで、目なんかを狙ったら……。
「大変です!」
別の警備員が、慌てて部屋に入ってきた。
「どうした?」
「数名の女子選手が、
目の痛みを訴えています」
「なん…だと!!」
……これ、マズイんじゃないか?
何人かの警備員が、慌てて部屋を出て行く。
俺は、ここで待ってるように言われてしまったので、
【追跡用ビーコン】を使って様子をみてみる。
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医務室。
そこには、7人の女子選手が治療を受けていた。
全員、目を保護するように包帯をまかれている。
『痛い痛い!』『痛いよ~!!』
口々に、痛みを訴えている……。
やられたのは、アヤだけじゃなかったのか。
舞衣さんとアヤが出ていない試合は、あんまりちゃんと見てなかったけど、
今思えば何人か調子悪そうな選手がいたような気がする。
おそらく、西村玲子の対戦相手をレーザーで攻撃していたのだろう。
あれ? でも、それにしては人数が多くないか?
西村玲子の対戦って、アヤ以外には3、4人程度だったはず。
しかし、あのレーザーで目をやられたのなら、本当に失明もありうるぞ。
『早く救急車を呼ぶんだ!』
医務室の人たちも大慌てだ。
申し訳ないけど、今ここで治療してあげることは出来ないので、
後でこっそり治しに行く必要がありそうだ。
とりあえず【追跡用ビーコン】を全員に取り付けておこう。
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しばらくして、警備員の人たちが、戻ってきた。
そして何故か、アヤを連れている。
「あれ兄ちゃん、こんなところで何してるの?
とりあえず、試合は勝ったよ!
それと、途中で何か騒いでたけど、何だったの?」
ごたごたしてる間に、アヤの決勝戦は終わっちゃったのか‥‥。
後で【追跡用ビーコン】の映像を見なおそう。
そして、その後ろを西村玲子が、がっかりした様子で入ってきた。
「あ!」
西村玲子は、部屋にいた犯人の男の顔を見るなり、あからさまに動揺していた。
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