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時空魔法で異世界と地球を行ったり来たり  作者: かつ
空手大会編
351/438

341.空手大会・決勝戦

 試合も進み、アヤと舞衣さんは順調に勝ち進んでいた。


 アヤは、徐々に手加減することに慣れてきて、動きが良くなっている。

 舞衣さんは、体格の大きな選手をバッタバッタと倒し続け、そのたびに会場を大いに盛り上げていた。



「部長は、いつ見ても素敵です……」

 百合恵さんが、舞衣さんの試合を見ながらうっとり(・・・・)している。


 百合恵さんだけでなく、周囲の観客も舞衣さんのことを、しきりに噂している。


「あのちっちゃい子、すごく強いな。どうなっているんだ?」

「可愛くて強くて、お持ち帰りしたいです~」

 なんか危ない人もいるみたいだ……。


 その会話を聞きつけた百合恵さんは、『部長は私のだ』と言わんばかりに、邪悪なオーラを身にまといながら周囲を睨みつけている。


 百合恵さん……みなさんが怖がるから、ほどほどにしましょうね~。


----------

 アヤと舞衣さんは、決勝戦に駒を進めた。

 残す試合は【重量級】、【中量級】、【軽量級】の決勝戦、3試合のみ。



 最初は【重量級】の決勝戦。


「流石に、あの体重差は無理だろ~」

「これは、やめさせたほうがいいんじゃないか?」

 舞衣さんと対戦相手の登場で、会場はざわつき始めていた。


 というのも、舞衣さんの対戦相手は、

 大田原おおたわら象子(しょうこ)さん。

 今回の出場者の中で、男女合わせて『最重量』の選手なのだ。


 舞衣さんは、とうぜん出場者の中で男女合わせて『最軽量』なので、

 くしくも『最重量』と『最軽量』の対戦となってしまった。



 まるで、象と小学生……。

 たぶん、体重差は3倍くらいあるんじゃないかな。



「始め!」

 試合が開始していきなり、

 象…じゃなくて相手選手が、猛突進してきた。

 そして、巨大な体に似合わぬ速度で飛び上がり、

 斜め下の舞衣さんに向かって、全身の体重をかけた正拳突きを繰り出す。

 まるで、思いっきり勢いをつけた『瓦割かわらわり』のようだ。


 しかし、

 舞衣さんは、その攻撃を避けようとしない。


ドスンッ!


 ものすごい音がして、正拳突きが舞衣さんに命中した。


「キャー!」


 観客席の女性が、最悪の事態を思い悲鳴を上げた。



 ……。


「ぐっ……」


 象子選手が、確かな手応えに、息を漏らす。



「あ、アレを見ろ!」


 観客の一人が指をさす。

 そこには……。


 バズーカの様な強力な正拳突きを、

 左手一本で受け止めている舞衣さんの姿があった。


 しかも、アレだけの攻撃を受けながら、

 舞衣さんは、開始位置から一歩も動いてはいなかった。


 てか舞衣さん、それ、物理的におかしいですよ?



 象子選手は、一瞬だけ恐ろしいものを見るような表情をしたが、

 直ぐに気持ちを切り替え、次の行動に移る。


 バックステップで距離を取り、

 そのまま離れるのかと思いきや、すぐさま取って返して、

 右足を高々とふり上げる。

 あの巨体なのに、なんという身軽さ。


 そして、その右足を、そのまま舞衣さんに向かって振り下ろす。


 『かかと落とし』なんだろうけど……。

 まるでシコを踏んでいるみたいだ。


ドォォン!!


 『日本武道館』全体が、揺れた。


「ひぃ!」

 あまりの光景に、観客の一人が声を漏らす。



『う、嘘でしょ……』

 象子選手は、信じられないという表情で、足の下の舞衣さんを見つめた。


 象のような足のシコ…じゃなくて『かかと落とし』を、

 舞衣さんは右手一本で、受け止めていた。



 象子選手は、渾身の攻撃を軽く受け止められてしまい、

 困惑して2歩ほど後ずさる。



 次の瞬間、

 舞衣さんの体が、残像を残して消え……、

 会場全体に、『衝撃波』が突き抜けた。


 俺たち以外の観客は全員、一瞬目をつぶってしまう。

 そして、次に目を開けたとき目にしたのは……、

 象のような巨体が、宙に浮いている姿だった。


 象子選手は、ゆっくりと放物線を描いて、場外へ。

 そして……

 コテっと、尻もちをつく。


 意識はあるが、

 あまりの出来事に、呆然としたまま動くことが出来ない。



 シンと静まり返った会場、

 舞衣さんは、元の位置に戻り、ペコっとお辞儀をした。


「「わーーーーー!!!!!」」


 一斉に巻き起こる大歓声のなか、

 審判が舞衣さんの勝利を告げた。


----------


 会場のざわめきが静まらないなか、

 【中量級】の決勝戦に出場するアヤが登場した。


 対戦相手は、舞衣さんに裏工作を仕掛けた、あの西村玲子だ。


『まさか…あんな化物だったなんて……

 手を打っておいて正解だったわ』

 西村玲子は、舞衣さんの試合を見ていたのだろう。

 全身に冷や汗をびっしょりかいて、ボソリとつぶやいた。


『ねえ、手を打ったって何のこと?』

 それを横で聞いていたアヤが、話しかける。


『あ!

 口が滑っちゃったけど、まあいいわ。

 河合舞衣のエントリーに細工をして、無理やり階級を変更させたのは私よ。

 あんな化物と戦わずに済んで助かったわ。

 おほほほ』

 喋っちゃうのかよ!


『へー、あんた、そういう事する人なんだ~』

 アヤは額の辺りをヒクヒクさせている。

 だいぶ怒ってるようだ。


『戦いには、【戦術】だけではなく【戦略】というものがあるのよ。

 戦術にしか頭がまわらない【おバカさん】には分からないでしょうけど~

 おほほほ』

 この女、ムカつく。


『あ、そう』

 アヤは短く答えたが、

 瞳に怒りの炎(・・・・)が燃え盛っていた……。


 これ……マズいんじゃないか?


ご感想お待ちしております。

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