031.ツバを付けとけば治る
「ほら、家に戻ってきたぞ」
俺達は、【瞬間移動】で自宅の玄関に戻ってきたのだが、二人ともブルブルと震えが止まらないらしく、俺に抱きついたまま動こうとしない。
しかたがないので、しばらくの間、俺は抱きつかれたまま、二人の頭を撫で続けていた。
「二人とも、いつまでひっついてるんだ?」
俺は抱きついたままの二人を玄関に座らせて、一人ずつ靴を脱がせてやった。
そして、そのままの状態で、リビングのソファーに【瞬間移動】で移動させた。
ソファーに移動させても、まだ引っ付いたままだ。
そんなに怖かったのだろうか。
俺は、インベントリから取り出した2つのマグカップに【牛乳】を注ぎ、【砂糖】をスプーン1杯ずつ入れて。
アヤの【ドライヤー温風魔法】の電熱線部分だけを【雷の魔法】で真似して、【牛乳】を温めてた。
「ホットミルクを作ったから、二人共飲みな」
二人は、俺の用意したホットミルクを、ゆっくりとコクコク飲んだ。
ホットミルクを飲み終えた所で、やっと二人も落ち着いてきたようだった。
「あ、セイジ様、ほっぺに怪我が!」
「兄ちゃん、怪我したの? あ、私がナイフで攻撃された時の!」
「早く治療しないと」
「平気だよ、こんなのツバつけとけば治るって」
「はい、わかりました」
はい?
気が付くと、エレナが俺の怪我したほっぺに、『キス』していた。
「ちょっ! エレナ何してるの!」
「だってセイジ様が、ツバをつけると治るって」
「それは言葉のアヤっていうか・・」
「アヤさんのツバなら治るんですか?」
「違う違う、そのアヤじゃなくって」
気が付くと、アヤが反対側のほっぺに『キス』していた。
「ちょっ! アヤまで何してるの!」
「だって兄ちゃんが、私のツバを付けて欲しいって、言うから」
「言ってないだろ、しかも傷してる場所は反対だし」
アヤの奴、半笑いしてやがる。
俺をからかってるのか、くそう。
「ツバで治らないのでしたら、私が魔法で治します!」
「エレナちゃん魔法で傷を治せるの?」
「分かりませんけど、私の命に変えてでも治してみせます!」
「命なんて賭けなくていいから!」
エレナは凄く真剣な表情で、俺の傷の部分に手をかざして、集中し始めた。
しかし、俺が【鑑定】した限り、エレナは傷を治す魔法を習得していないはず。
いくらなんでも、習得していない傷を治す魔法を、いきなり使うのは、ムリなんじゃないかと思っていると……
傷の辺りが、何だか温かくなってきた。
もしかして、魔法が効き始めている!?
さらにしばらく経つと、今度は傷の辺りがくすぐったくなってきた。
これは何かが起こる予感がする!
「あ、兄ちゃんのほっぺの傷、カサブタになってる」
アヤが覗きこんで、そう教えてくれた。
さっきのくすぐったさは、カサブタのせいだったのか。
エレナは、更に集中して魔法を使い続け、俺のほっぺから、カサブタがポロっと剥がれ落ち、その下にあったはずの傷が、完全に治っていた!
「すげえ、傷が治った。エレナすごいぞ!!」
「はあ、はあ。や、やりました!」
「エレナ、だいぶ疲れてるみたいだけど大丈夫か?」
「だ、大丈夫です、ちょっと疲れて……」
エレナは、そのまま眠ってしまった。
エレナを【鑑定】してみると…
┌─<ステータス>─
│名前:エレナ・ドレアドス
│職業:姫
│
│レベル:5
│HP:100/104 (+34)
│MP: 3/208 (+88)
│
│力:10 (+3) 耐久:9 (+3)
│技:10 (+3) 魔力:24 (+10)
│
│スキル
│【水の魔法】(レベル:2)
│ ・水のコントロール
│
│【回復魔法】(レベル:2 ↑)
│ ・病気軽減
│ ・傷回復速度上昇 ★NEW
└─────────
【回復魔法】がレベル2に上がり、新しい魔法を覚えていた。
「エレナは、自力で【傷回復速度上昇】って新しい魔法を、習得したみたいだ」
「エレナちゃん、すごい!」
「まあ、でもそのせいで、MPを使い果たしちゃったみたいだけどな」
眠ってしまったエレナをなでなでしていると―
アヤは、すっくと立ち上がって。
「私、もっと強くなりたい!」
「なんだよ、いきなり」
「私は、いっつも兄ちゃんに守ってもらってばっかりで、エレナちゃんみたいに、傷ついた兄ちゃんを癒してあげることも出来ない。ホントは魔法で攻撃することだって出来たはずなのに、怖くて何にもできなかった。私は、兄ちゃんに守られてばっかりじゃなくて。私の力で、エレナちゃんを守ってあげたいの!」
「そんなこと言ったって、お前は女の子なんだぞ」
「女の子だからなに? 私、冒険者になって魔物と戦う! そしたら、兄ちゃんみたいに強くなれるんだよね?」
「ダメに決まってんだろ! 魔物と戦うなんて危ないだろ!」
「魔物なんてちっとも怖くない。悪い人間の方がぜんぜん怖い」
「怖い怖く無いは関係ない、どっちにしたって危ないのには変わりないだろ」
「もし兄ちゃんのいない所で、今日みたいに悪い人間に襲われたらどうするの? 私はずっと兄ちゃんに守ってもらい続けるの? 兄ちゃんが助けに来れなかったら? 兄ちゃんが助けに来ても、やられちゃったら? その方がよっぽど危険でしょ! だから! 私は―
自分で大切な人を守れるように、なりたいの!!」
アヤのあまりの真剣さに、俺は何も言い返せなかった。
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