328.ブータン
昨日まで異世界で冒険をしていたというのに、
今日から、いきなり海外出張だ。
出張先は、『ブータン』。
【ヌルポ石】の関係でトラブルがあったらしく、
ナンシーママと行くことになった。
まあ、名目上は『ブータンの宝石採掘所の在庫管理システムのため』ということになっているが、
実質、通訳として働かされるに決まっている。
まあ、そこら辺は諦めて、
ブータン観光でもしてこようかな。
出張の準備はあまりしてなかったけど、
申請とかの処理はナンシーママがやってくれたし、
荷物なんかはインベントリに、なんでも入れて持ち歩いているので、
俺が用意したのはダミーのスーツケースだけだ。
----------
朝の5時、家を出発するとき、
アヤとヒルダは、まだ寝ていたが、
エレナは、眠い目をこすりながら起きてきて『いってらっしゃい』を言ってくれた。
いい娘やね~。
ナンシーママと待ち合わせていた空港につくと、
もう一人、別の女性もいた。
「セイジ、おそいわよ」
「約束の時間通りじゃないですか。
それより、そちらの女性は?」
「わたくしは、今回秘書として同行させていただくことになりました、『リリィ・スミス』といいます。
お見知り置きを」
リリィさんは、俺に握手を求めてきた。
『秘書』ね~。
背が高く、目つきが鋭い、そしてスキがない。
どう見ても、秘書って感じじゃないんだよね~。
某なんちゃら機動隊の少佐とか、格ゲーのキャラとか、そんな感じの雰囲気なんだよね~。
鑑定してみると『外交保安局』の人らしい。
ジュエリーナンシーは、何度か中国マフィアに狙われてるから、ナンシーママの護衛でもするのかな?
悪い人ではなさそうだけど……。
そんな人が護衛につくってことは、危険な旅なのか?
~~~~~~~~~~
ナンシーママとリリィさんと3人で飛行機に乗り、
ブータンへ。
最近は世界中でテロも多く、入国管理が厳しくなっていると聞いていたので、
入国のさい、ちゃんと説明できるか心配でドキドキしていたのだが、
俺が日本人とわかると、急に係の人の態度が良くなり「ようこそ!」と、にこやかに握手を求められた。
心配して損した。
ナンシーママとリリィさんは、入国に手間取っていたらしく、少し待たされてしまった。
やっと二人と合流し、空港ロビーに出ると、
現地の案内人が出迎えてくれた。
その人がブータンで使用できるSIMカードを用意してくれていたので、自分のスマフォにそれをさす。
スマフォが使えるようになって一安心。
その日は空港近くのホテルで一泊。
ディナーでブータン料理を食べたけど、死ぬほど辛かった。
どんだけ唐辛子が入っているんだよ!!
~~~~~~~~~~~
翌日、車で移動して、
【ヌルポ石】が取れるという村に到着した。
そこは、山の中腹にできた集落で、
伝統的な家が、まばらに点在していた。
俺たちは、まず村長さんのところへ挨拶に行った。
『ようこそいらっしゃいました』
村長さんは、黒髪で和服っぽい民族衣装を着ているので、日本人かと思ってしまった。
「セイジ、通訳よろしく」
やっぱり通訳をやらされるのね……。
『こんにちは、俺は通訳をやらされている丸山誠司です。よろしくお願いします』
『なんと! 日本人の方でしたか!』
俺が日本人だとわかると、村長さんは急に態度が変わった。
よほど日本好きなんだろうな~、
とか思っていたら……。
『ニシオカ殿には大変お世話になりました』
西岡さん?
だれそれ?
そこから村長さんのニシオカさん話が30分ほど続いた。
だから、西岡さんってだれだよ?
「セイジ、ちゃんと通訳しなさいよ!」
ナンシーママは意味がわからず、プンプン怒り気味だ。
「いや、村長さんが、ニシオカさんの話を始めちゃって……、
その話、通訳します?」
「ニシオカって、だれ?」
「さあ……」
『ところで、何の話じゃったですかな?』
やっと村長さんのニシオカさん話が終わった。
「ママさん、村長さんの話、終わったみたいです。
何の話をすればいいんですか?」
しばらく、ママさんと村長さんの通訳をしていたのだが……。
どうやら、【ヌルポ石】の採掘現場になっている洞窟が、山賊に占拠されてしまった、ということらしい。
しかも、この山賊、
かなりの武器で武装していて、ブータンの警察でも手が負えないとのこと、
それによって【ヌルポ石】の採掘ができず、
約束していた量の確保ができないということらしい。
「困ります!
なんとか予定通りに用意してもらわないと!
やっとヌルポ石の加工にも目処が立って、日本の町工場に手付金も払ってしまっているんですよ!」
『そんな事を言われましても、こんな小さな村の警察ではまるで歯が立ちませんで……』
武装した山賊か……。
俺は完全な部外者だけど、
やっぱり俺の出番なんじゃないのか?
しかし、外国であまり勝手な動きをするのもダメだよな……。
さてどうするか。
通訳をしながら、そんなことを考えていると、
部屋のドアが勢い良く開き、一人の美少女が飛び込んできた。
『ニマ、お客様がいらっしゃるのに失礼だぞ』
ニマちゃんというのか、
歳は高校生くらいだろうか、黒髪のかわいい娘だ。
だいぶ急いで来たのだろう。
その娘は、呼吸が乱れて話ができないでいた。
呼吸を整えて、やっとニマちゃんが発した言葉は……。
『が、学校が…… 山賊に襲われました』
『『なにーーー!!』』
ご感想をお待ちしております。




