324.闇の祭壇
みんなが帰った。
残っているのは、俺たちメンバーだけ。
「兄ちゃん、私たちも帰ろう」
「おい、アヤ、何か忘れてないか?」
「あれ? まだ何かあったっけ?」
駄目だこいつ、完全に忘れている。
「百合恵さんの黒い何かを外すために、こんなところまで来たんだろ!」
「あ、そうだった。忘れてた。テヘペロ」
まあ、いろいろあったから無理も無いけどね。
「で、オラクルちゃん、
悪魔族の街で何を探せばいいんだ?」
他の精霊と遊んでいたオラクルちゃんに話を振る。
「えーっとね~、
悪魔族の街に、『闇の祭壇』っていうのがあるはずだから、それを探して」
「『闇の祭壇』ね。了解」
このまま悪魔族の街へ突入するのも危険なので、とりあえず【追跡用ビーコン】の映像で、街の中の様子を確かめてみることにした。
「悪魔族の街の中、誰もいないね」
アヤのいう通り、悪魔族は人っ子一人いなくなっていた。おそらく、ドラゴンが出現した時に、みんな逃げてしまったのだろう。
「あ、セイジ様、ここ!
ドラゴンの足跡があります!」
エレナがドラゴンの足跡を見つけた。
ドラゴンの足跡が街の中から続いているのを見ると、やはりドラゴンは街の中で出現したらしい。
ちょっとドラゴンの足跡を辿ってみるか。
足跡を辿って行くと、
なにやら黒い石でできた祭壇のような場所にたどり着いた。
「あ、これが『闇の祭壇』だよ!」
オラクルちゃんが身を乗り出す。
マジか!
足跡を追ってたとおもったら『闇の祭壇』を見つけてしまった。
しかし、おかしい。
ドラゴンの足跡が、祭壇から急に始まっているのだ。
ちょっと確認してみるか。
ずっと悪魔族の街を監視させていた【追跡用ビーコン】の中で、一番祭壇の近くの映像を、ドラゴン出現の時間まで巻き戻して、確認してみた。
「あ! 『ヴァルニール』さんです!」
エレナが叫んだ。
「『ヴァルニール』って誰だっけ?」
「お忘れですか? セイジ様を召喚した人ですよ」
ああ、アイツか!
ほんとだ、姿は悪魔族だが、たしかに顔はアイツだ。
なるほど、【人化の魔石】を使って人族に化けて、王様に取り入っていたのか。
(※「001.異世界でスキルをもらったよ」参照のこと)
そして、ヴァルニールは、召喚魔法を使ってドラゴンを召喚していた。
「こいつがドラゴンを召喚したのか!
けっこう凄いやつだったんだな」
「セイジ、それは違うよ」
オラクルちゃんが、否定する。
「どういうことだ?」
「この男は、『闇の祭壇』の魔力を使って、大魔法を成功させたにすぎない」
「闇の祭壇の魔力?」
「そう、
悪魔族は、この祭壇を使って、
闇の精霊の魔力を横取りしているんだ」
「精霊の魔力を『横取り』!?」
そりゃあ、ドラゴンも呼び出せるはずだ。
「百合恵さんを戻すには、あの闇の祭壇を破壊すればいいのか?」
「いいや、それじゃダメだ」
「それじゃあ、どうしたらいいんだ?」
「百合恵を、あの祭壇に連れていく必要がある」
----------
とりあえず悪魔族は、いなさそうなので、
みんなで街の中に入ってみることにした。
「兄ちゃん、だいぶ壊れちゃってるね」
ドラゴンが暴れたせいで、かなり破壊されている。
そして、やはり悪魔族は1人もいなかった。
「ここが『闇の祭壇』か……。
なんか、禍々しいオーラが漂っているな」
俺たちは、闇の祭壇にたどり着いた。
「さあセイジ、百合恵を連れてきて」
「お、おう。
それじゃあ舞衣さん、付いてきて下さい」
「了解した」
俺は、舞衣さんを連れて、百合恵さんを迎えに行った。
~~~~~~~~~~
ピンポーン。
「百合恵くん、いるかい?」
「はーい」
百合恵さんは、すぐに出てきた。
「部長いらっしゃい、それからアヤさんのお兄さんもいらしたのですね。
さあ、上がってくださいな」
完全に毒気が抜けて、綺麗な百合恵さんになってしまっている。
「百合恵くん、遊びに来たわけじゃないんだ。
これから、とある場所に一緒に来て欲しいんだ」
「あら? とある場所ですか?
どこなんですか?」
「えーと、説明は…お兄さんよろしく」
俺にふるなよ!
「とりあえず、お手をどうぞ」
「あ、はい」
面倒くさいので、
百合恵さんの手を取って、そのまま【瞬間移動】した。
~~~~~~~~~~
「ふにゃ!?
あ、あれ? こ、ここは??」
百合恵さんは、急に悪魔族の街へ連れてこられ、混乱している。
「よし、ちゃんと連れて来たね、
それじゃあ、その子を祭壇の上に」
「え!? 妖精さん??
やっぱり私、夢を見ているんですね」
オラクルちゃんの姿を見た百合恵さんは、夢だと思ったらしい。
俺と舞衣さんで、百合恵さんを祭壇の上へ連れて行く。
「あ、ここは、前に夢で見た場所!」
百合恵さんは、この場所を覚えている?
もしかして前に行方不明になった時、ここに連れてこられたのか?
「それでは、百合恵一人にして、みんな離れて」
オラクルちゃんの指示に従い、みんなは祭壇から降りた。
「これから何が起こるんですか?」
一人で取り残された百合恵さんは、心配そうにしている。
すると!
祭壇の四方に祀られていた角のようなオブジェから、黒い霧が湧き出し、百合恵さんに向かって漂ってきた。
「な、なにこれ……」
戸惑う百合恵さん。
黒い霧は、百合恵さんの足に絡みつく。
そして、どんどん勢いを増して、百合恵さんに集まる。
「だ、だめ! 何かが私の中に入ってくる」
百合恵さんは、少し内股になって、
何かを必死に耐えていたのだが……。
「ら、らめー!!」
体をビクンビクンと痙攣させて、膝をついてしまった。
そして、スカートの隙間から、とろ~り液状のものが、太ももを伝わり落ちて、ペチャリと床に落ちた。
その床に落ちたそれは、徐々に集まり真っ黒い塊となっていく。
何だアレは!?
それは、ゆっくりと人の形になっていく。
しかし、その人の形のソレも、百合恵さんと同じくフラフラと床に倒れこんでしまった。
「大丈夫?」
心配そうにオラクルちゃんが、その人の形の黒い何かにかけ寄る。
おそらく、アレは『闇の精霊』なのだろう。
「ま、魔力が……ぜんぜん足りない‥‥」
なんとか闇の精霊を助け出すことに成功したが、フラフラじゃないか。
みんなは百合恵さんにかけ寄る。
エレナが回復魔法で手当をしてあげている。
あっちは大丈夫そうだな。
「オラクルちゃん、その娘が闇の精霊か?」
まあ、娘かどうかはちゃんと見えないから分からないけどね。
「ええ、でも魔力が足りなくて危険な状態みたい」
「そこの人でいいから、魔力を……」
闇の精霊が、俺ににじり寄ってくる。
「え? 俺?」
まあ、MPはたくさんあるから大丈夫だけど……。
闇の精霊は、俺の指を口で加えてペロペロなめ始めた。
変な吸い方だな……。
「ちょっと薄いけど、いい感じ」
闇の精霊は、俺の指を熱心に舐めまわす。
「もっと、濃いのを出して!」
闇の精霊は変な台詞を言い始めた。
なんだかな~。
おい! 先っちょをぺろぺろしたり、くわえたまま口を前後させたりするな!
「ああ、濃いのがいっぱい出てりゅ~」
なせそのような言い方をするのか……。
闇の精霊の行動に閉口していると。
『【闇の魔法】がレベル5になりました』
唐突に魔法のレベルアップのアナウンスが!
あれ?
なんで、俺の【闇の魔法】のレベルが上ったんだ??
ご感想お待ちしております。




