323.勇者様ばんざい
ドラゴンを倒した俺は、
精霊二人を引き連れて、みんなの所へ戻った。
「「勇者様ばんざーい!!」」
「へ?」
どうしてこうなった?
「セイジ様!!」
エレナが駆け寄り、右の頬にキスをする。
えー!?
これってどういうこと?
「エレナ姫様が勇者様にキスしたぞ!」
「「おー!!!!」」
なんか、みなさん、
盛大に盛り上がってらっしゃる。
【ドラゴンの咆哮】で【恐怖】状態だったのの後遺症みたいなものかな?
みんな、【恐怖】でドラゴンがものすごく強そうなものに見えていたのかも。
「兄ちゃん、怪我とかしなかった?」
アヤが俺の心配をするとか……、
こいつ偽物か?
「兄ちゃん、なに変な顔してるの?」
「生まれつきだ!
そんな事より、なんか出迎えが盛大だけど、
どういうことだ?」
アヤは、ライルゲバルトの方を指差して、変なことを言った。
「あのおじさんが、
兄ちゃんのことを『勇者だ』って宣伝してた」
「なに!?」
それでこの騒ぎか!
後で、こらしめておこう……。
「ところで兄ちゃん、
兄ちゃんの周りをふよふよ浮いてる、
『それ』、なあに?」
「ああ、雷と土の精霊だよ」
「いいな~
私も欲しい!」
お前は、おもちゃを欲しがる子供か!
「お前だって、【風の魔法】のレベルが5なんだから、
精霊と契約できるんじゃないか?」
「そうなの!?」
刀の試練で精霊との契約をするから、
その時、みんなも挑戦させてみるか。
「そうだ、このあとオラクルちゃんに手伝ってもらうことがあるから、
アイツも呼んでおこう」
オラクルちゃんを呼び出す。
「ああ!
勇者様が!!
精霊様を呼び出したぞ!!!」
「「うわー!!!!」」
あれ?
なに、この騒ぎ!?
ってか、
オラクルちゃんって普通の人にも見えるの??
いつもは、キャピキャピ出てくるオラクルちゃんなのだが、
今日はなぜか、『おごそか』に登場し、
みんなの前で、それっぽく行動している。
猫をかぶりやがって。
ってか、ぜんぜん収拾がつかないんですけど……。
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時間がたって、
ある程度さわぎも収まってきたので、
助けだした人たちを、それぞれの街へ送り届けることになった。
「セイジ様、これだけの人数をセイジ様一人で送り届けるのは、大変じゃありませんか?」
エレナが心配してくれている。
「だいじょ~うぶ、まかせて!
実は、秘策があるんだ」
「秘策ですか?」
秘策とは、【瞬間移動の魔石】、
各街の分の魔石を作って、みんなに手伝わせるのだ。
最初の数回は、俺がオラクルちゃんとともに、各街に【瞬間移動】し、
そのついでに、その街への【瞬間移動の魔石】を作る。
そして、その帰りの時に帰り用の魔石も作り、
後は、MPの多い人に行き帰りの2つの魔石を持たせて、ピストン輸送を手伝ってもらうのだ。
と、予定していたのだけど……。
この【瞬間移動の魔石】、
1回毎に1000もMPを消費するのだ。
MPが1000を超えているのは、俺達の仲間の他には、
リルラ、魔法使い部隊の3人、ブンミーさんの5人だけ。
そんなこんなで、結局ほとんどは俺が送り迎えし、
半分ほどをみんなに手伝ってもらって、
みんなでヒルダ飴を舐めつつ、
何とか全員を、各街へ送り届けることができた。
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「ふー、疲れた~」
ピストン輸送が完了し、まわりを見てみると、
みんなMP切れで疲れた顔をしている。
元気なのは、MPが足りなくてピストン輸送に参加できなかったロンドとライルゲバルトだけだ。
ロンドは、魔法使い部隊の3人にたいしてねぎらいの言葉をかけて廻っているのだが、
ライルゲバルトは、何やらニヤニヤしたきもちわるい顔をして、俺に近づいてきやがった。
「ところで、セイジ殿」
「ど、殿!?」
いつも呼び捨てのくせに、『殿』だと!?
なんか虫酸が走る。
「なんだ?」
「その、便利そうな魔石なんだが~
譲ってもらえないかな?」
「お断りだ。
ってか、『譲ってくれ』なんて、
図々しいにも程があるぞ」
「何を言うか、
これは私個人のために『くれ』と言っているのではないのだ。
そう、これはドレアドス王国のためだ。
ドレアドス王国のために、ここは譲るべきではないかな?」
なにが、『譲るべきではないかな?』だ!
だが、俺も鬼じゃない。
『ドレアドス王国のため』というのなら、この程度はまあいいかな。
「ロンド、リルラ、それとブンミーさん、
ちょっと集まってくれ」
「なんだ?」「何かようか?」「なんだ?」
3人が集まってくる。
「この【瞬間移動の魔石】なんだが、
もう使わないので、3人で分けてくれ」
「え、いいのか!?」
「セ、セイジ!」
「かたじけない」
魔石は、各街へのものが2,3個ずつあるので、
3人で分けても数的には十分だろう。
「と、ところで、
私の分は?」
ライルゲバルトが、あせった顔で聞いてきた。
「は?
そもそも、お前には使えないだろう?
使える奴が持っていたほうが
ドレアドス王国のためになるんじゃないか?」
「そ、それは……」
ライルゲバルトは、FXで有り金全部溶かしたような顔をしていた。
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「それじゃあ、俺たちは帰るよ。
今度また遊びに来てくれよな」
ロンドが、ミーシャさんとレイチェルさんを連れて、挨拶に来た。
俺は、ロンドと硬く握手を交わした。
「あ、遊びに来るなら……、
ぜひ、アヤさんも一緒に……」
「さあ、ロンド様、帰りますよ!」
ロンドは、ミーシャさんに引っ張られ、
【瞬間移動の魔石】を使ってニッポの街へ帰っていった。
「では、我らも帰るとするか」
ブンミーさんとカサンドラさんの二人も、俺と握手をして帰って行った。
「では、私も帰るぞ。
はやくせよ」
ライルゲバルトが、なにか言ってる。
「ん?
帰りたいなら、さっさと帰れば?」
「私に歩いて帰れと言うのか!」
俺に【瞬間移動】で送れと言っているのか。
「適度な運動は健康にいいぞ?」
「ぐぬぬぬ」
俺とライルゲバルトが睨み合っていると、
「お父様、私がお送りいたします」
リルラが割って入ってきた。
「おお、なんと優しい我が娘よ。
それに引き換え、お前は悪魔のようなやつだな」
ライルゲバルトは、俺のことを睨みつける。
そうかそうか、そんなに言うなら、
期待に答えないとな。
「おい、ライルゲバルト!
今回の傭兵の代金100万ゴールド。
ちゃんと払えよな」
「わ、わかっておる」
「踏み倒そうものなら……
お前の自慢の娘リルラを攫って、
『奴隷』にしちゃうからな」
「な、な、なんだと!」
「わ、私が、セイジの、奴隷に!!?」
ライルゲバルトは怒りで顔を真赤にしている。
リルラも、なぜか顔が真っ赤になっている。
冗談なんだから、
ふたりともそんなに怒らなくてもいいのに……。
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