319.金、銀、姫、隊長
悪魔族の街の中、
俺、アヤ、ヒルダの三人は、
ブンミーさんたちが守る、最後の収容所へ【瞬間移動】して来た。
最後の収容所の入り口付近には、悪魔族が大挙して押し寄せていた。
その大群の悪魔族に立ちはだかるのは、
ブンミーさんと舞衣さん。
二人の八面六臂の活躍で、悪魔族がぶっ飛ばされ、
運良く二人から逃れた悪魔族は、カサンドラさんの【風の魔法】によって吹き飛ばされていた。
しかし、連戦がたたったのか、3人とも肩で息をしていて、少し疲れが見える。
「ブンミーさん、カサンドラさん、舞衣さん、
遅くなりました。大丈夫でしたか?」
俺たちは合流し、態勢を立て直す。
「大丈夫だ。
……しかし、魔力の残りが心もとない」
さすがのブンミーさんも、連戦はこたえたのだろう。
「了解しました。
ヒルダ、みんなに『飴』を!」
「はい!」
ヒルダは、急いでみんなに飴を配って廻っている。
「かたじけない」「ありがと」「ありがとね」
ヒルダ飴のおかげで、みんなのMPが回復し始め、
それに合わせるかのように、戦闘も押し始めた。
「よし、それじゃあ、俺は捕虜を助けてくるから、
みんな、あともう一踏ん張り頼んだぞ!」
「「おー!!」」
入り口の戦いはみんなに任せて、
俺は、捕まっていた最後の100人をピストン輸送で脱出させ、
やっと、全ての捕虜を救出し終えた。
「全員助け終わったぞ!」
俺は、戦っているみんなの所へ駆けつけた。
後は、逃げるだけ。
……なのだが、
これだけの戦いの最中だと、
逃げるのも一苦労だ。
「任せろ」
ブンミーさんは、最後の置き土産とばかりに、
自分の刀に魔力を込め、大きく振り下ろした。
ブンミーさんの振り下ろした刀は、風をまとって爆発し、竜巻となって悪魔族めがけて荒れ狂った。
後ろでカサンドラさんが何やら風の魔法を使っているので、二人の合体技なのだろう。
「おおすごい! 私たちもやろう!」
「はい」
アヤとヒルダも、二人で『炎の竜巻』の合体魔法を、
「じゃあ、ボクも」
舞衣さんは、特大サイズの『爆熱正拳突き』を、
それぞれ炸裂させて、
悪魔族たちを一気に押し返した。
「よし! 今のうちに逃げるぞ!」
「おー」「「はーい」」
悪魔族たちが混乱しているスキに、俺達は【瞬間移動】で『悪魔族の街』を脱出した。
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悪魔族の街から脱出した俺達は、
急いで本陣の防衛にあたっているリルラとロンドの所へ向かった。
「リルラ、ロンド、様子はどうだ?」
「「あ、セイジ」」
黄金の鎧のロンドと
銀色の鎧のリルラが、ハモって答えた。
なんか、きんきら☆きんで目がチカチカするな。
「悪魔族のやつら、あまり攻めてきていない。
今のところ問題なさそうだ」
ロンドがそう応える。
レイチェルさんが【土の魔法】で巨大な『堀』を作っていて、
『堀』を越えてこようとする悪魔族は、ミーシャさんとエレナの【水の魔法】で、『堀』に叩き落としている。
たまに、矢や魔法が飛んできたりもするのだが、
そのほとんどをリルラの銀色の盾が防いでいる。
リルラも、防御に関してだけは、だいぶ安心して任せられるようになったな。
まあ、収容所の戦いに悪魔族の戦力が集中していたおかげで、こちらにはあまり来ていなかったのだろう。
しかし、人質を全員助けだしてしまった今、
全勢力は、こちらに向かってくるだろう。
「全員助け終わったので、こちらも最後の仕上げに取り掛かろう」
「セイジ、最後の仕上げとは何をするんだ?」
「とりあえず、出入り口を塞ぐ、
レイチェルさん、手伝いを頼みます」
「ああ」
俺はレイチェルさんの手を取り、【瞬間移動】した。
「レイチェルさん、行きますよ~」
「よしきた」
俺とレイチェルさんは、【土の魔法】を使い、
『崖崩れ』を巻き起こし、『悪魔族の街』の出入り口になっていた洞窟を塞いだ。
街から出てこようとしていた悪魔族、
退路を絶たれることに慌てて街に逃げ込もうとした悪魔族、
双方が、出入り口で揉みあいとなり、
多くの悪魔族が崖崩れに巻き込まれて生き埋めとなった。
閉めだされた悪魔族たちは、それなりに抵抗を見せたものの、
逃げ場を失った焦燥感から徐々に抵抗を諦め、
しばらくして、全員降参してきた。
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降参してきた悪魔族を縛り上げ、
助けだした人たちの所へ戻ってくると……
760人もの人たちから拍手で迎えられた。
「ありがとうございます。
なんとお礼をいっていいか……」
救出した人たちの一人に、お礼を言われていると……
「みなの者、聞け!!」
リルラのパパが、ちょっと小高い場所に立って、
ロンドに貸しておいたはずの、【拡声器】をかってに使って、大声で話し始めた。
お前、今までどこにいたんだ?
「我が名は、『貴族連合騎士団長ライルゲバルト』だ!
皆は、この俺が責任をもって国に送り届ける。
安心するのだぞ!」
おいィ、お前は何もしてないだろ!
なに勝手にみんなに話しかけてるわけ?
汚いな、さすがライルゲバルトきたない。
「「おお、貴族連合騎士団長様!!」」
みんな『奴』に向かってひれ伏し始めた。
みんな俺の【瞬間移動】で助けたのに……。
「セイジ様、大丈夫でしたか?」
エレナが俺を気遣って駆けつけてくれた。
「ありがとうエレナ、
ちょっと暗黒面に落ちかけたけど、
エレナの顔を見たら、どうでも良くなったよ。
ありがとう」
「??
よくわかりませんけど、
お怪我はありませんか?」
「ああ、大丈夫だ、問題ない。
助け出した人たちのなかに、怪我している人がいるかもしれない、見てやってくれ」
「はい!」
ああ、ほんと、エレナには癒やされるな~。
そんな事を考えていると、
汚い奴が、また【拡声器】で話し始めた。
「怪我をしている者は名乗り出よ!
ここにおわすエレナ姫様が、直々に【回復魔法】を掛けてくださるぞ!」
おのれライルゲバルト、また勝手に!
「「うをおぉ!! エレナ姫様!!!!」」
姫様が直々に助けに来てくれたと知った人たちは、
ライルゲバルトの時よりさらに熱狂的に、ひれ伏し、
エレナを褒め称えた。
さすがエレナは慣れた様子で、
怪我をしている人たちの所を廻って、回復魔法を掛けては、ものすごい勢いで崇め奉られていた。
まあ、一介の冒険者に助けられるより、
姫様直々に出てきて国を上げて助けられたというほうが、みんなも安心感が大きいだろう。
べ、べつに、悔しくなんかないもん!
「み、皆の者……、
何か困ったことがあったら、俺に…言うのだぞ?」
ライルゲバルトがなにか言っている。
しかし、みんなエレナに夢中になっていて、
もう誰も、ライルゲバルトの話を聞いていない。
人々はライルゲバルトの事を忘れ、
そこはエレナの独壇場になっていた。
「み、皆の者……」
ライルゲバルトの声は、誰にも届いていなかった……。
可哀想だから、ちょっと話しかけてやるか。
「よう、ライルゲバルト、
演説ごくろうさま」
「セ、セイジ……」
やっと話しかけられて、一瞬笑顔になったのだが、
俺だと分かった途端、しかめっ面に戻りやがった。
「さすが、何もしてない奴は元気そうだな」
とりあえず、嫌味の一つでも言ってやる。
「な、なんだと!?
俺は、この『救出部隊』の『隊長』なのだぞ?
『隊長』というものは、じっくり構えているものだ」
「ん?
いつから、お前が『隊長』になったんだ?」
「最初からだ!」
まあ、こいつはそういうやつだよな。
「じゃあ、俺はなんだ?
『雇われの冒険者』か?」
「そうだ!」
即答しやがった、
ちょっとは考えてしゃべれよ。
「そうかそうか~」
俺は、わざとらしく相槌を入れる。
「何か文句でもあるのか!」
「ないよ、
でも……
『雇われの冒険者』なんだったら……」
「だったら?」
「働きに応じた報酬を、たんまりもらうとするかな~」
「な、なんだと!?」
ライルゲバルトの顔色が急に悪くなった。
「何を言うか!
今回の件は、お前が言い出しっぺじゃないか!」
「いや、俺もそう思ってたんだけど~
なぜか、ライルゲバルト、お前が『隊長』で、
俺が『雇われの冒険者』ってことになっているらしいからさ~
とりあえず、『100万ゴールド』で手を打とう」
「ギャフン!」
ライルゲバルトは白目をむいていた。
まあ、まだ悪魔族との戦いは終わってないんだけどね。
ご感想お待ちしております。




