318.救出作戦
「やあやあ、
遠からん者は音にこそ聞け、近くば寄って目にも見よ。
吾こそはニッポの街の領主、『黄金鎧』と名高き、
『ロンド・ウォーセスター』なるぞ!
悪逆非道の悪魔族どもよ!
いざ、尋常に勝負だ!!」
悪魔族の街の出入り口になっている洞窟の外で、
ロンドは、俺が貸した【拡声器】を使い、大声でわめき散らしている。
しかし、なぜ時代劇風なんだ?
そして、ロンドが喋っている言葉は『悪魔族語』だ。
どうやら、この辺一帯は悪魔族の領土と認識されているらしく、【言語一時習得の魔石+2】で『悪魔族語』を習得できたのだ。
【拡声器】の大音量に驚いた悪魔族たちが、
わらわらと洞窟から出てくる。
よし、このスキに俺は……。
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俺は、ブンミーさんが隠れている一番大きな奴隷の収容所に【瞬間移動】でとんだ。
「ブンミーさん、様子はどうですか?」
「おお、セイジ殿か。
こちらは今のところ変化なしだ。
しかし、姿が消えていると、よく分からんな」
ブンミーさん、カサンドラさん、ヒルダの3人は、【透明化の魔石】で姿を消して、収容所を見張ってもらっていたのだ。
その【透明化の魔石】は、事前に作っておいたものだ。
ちなみに3人は、迷子にならないように手をつないでもらっている。
ちなみのちなみに、カサンドラさんが真ん中だ。
「セイジ、いつまで待つ?」
む、カサンドラさんか、姿が見えないと、本当によくわからないな。
「今、ロンドが悪魔族たちの注意を惹きつけています。
もうちょっと待って下さい」
「うん」
しばらく待つと、悪魔族の動きが活発になり、
10人くらいいた収容所の見張りが、半分ほど街の外へと移動していった。
おそらく、街の外でわめき散らしているロンドの所へ、増援として出向くのだろう。
「よし、そろそろいいだろう。
みなさん、手分けして残りの見張りをやりますよ」
「「おお!」」
悪魔族の見張りは、合計5匹で、
詰め所に座っている1匹、
塀の上を巡回している奴らが、2匹×2組。
詰め所の奴をカサンドラさんとヒルダ。
塀の上を巡回している2組を、
俺とブンミーさんで1組ずつやることにした。
最初に動いたのはカサンドラさんとヒルダ。
詰め所で暇そうにしている1匹に、
ヒルダが後ろから袋をかぶせ、
驚いているスキにカサンドラさんが縄でぐるぐる巻にして無力化した。
作戦が終了した合図に、
ヒルダが収容所の広場で小さな【火の魔法】を使う。
俺とブンミーさんは、それを合図に同時に行動を開始し、
俺が2匹を【睡眠】の魔法で眠らせている間に、
ブンミーさんは別の2匹を、躊躇なく刈り取っていた。
さすがブンミーさん。
悪魔族の見張りを全滅させたところで、俺達4人は【透明化】の魔法をといて、収容されていた人達の前に姿を見せる。
「みなさん、助けに来ましたよ」
「マジか!
助けが来てくれるなんて思っても見なかった」
俺が収容されていた人たちに声をかけると、
人族の人たちは、歓喜の声を上げた。
『我は魔族のブンミーだ!
囚われの同志よ、助けにきだぞ!!』
『ああ! 助かったぞブンミー殿だ!』
魔族たちも、ブンミーさんの姿を見て、歓喜の声をあげる。
ブンミーさんて、もしかして魔族の中では有名人なのかな?
「それではみなさん、魔法で安全な場所に移動しますので、20人ずつ丸く手を組んで下さい」
人族が500人、魔族が60人くらいだろうか。
俺は、20人ずつを【瞬間移動】で悪魔族の街の外へピストン輸送しはじめる。
この人数、さすがにちょっと疲れそうだ……。
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輸送が半分ほど終わったところだろうか……、
ピーーーーーー!!
何かの笛のような音が辺りに鳴り響く。
その笛の音を聞きつけ、悪魔族が収容所に集まってくるのが見えた。
「ヤバイ、見つかった。
ブンミーさん、カサンドラさん、ヒルダ、
輸送が終わるまで、奴らを近づかせないようにお願いします」
「任されよ!」「任せて」「頑張ります!」
3人が悪魔族を食い止めている間に、俺はピストン輸送を急がないと。
皮肉なことに、奴隷たちを逃がさないようにしていた収容所の高い壁が、
逆に、悪魔族たちの侵入を拒んでいた。
ブンミーさんが入り口の中央に堂々と仁王立ちし、
カサンドラさんとヒルダが、後ろから援護する陣形だ。
正面から向かってくる敵はブンミーさんによって斬り倒され、
脇を抜けてこようとする敵は、
カサンドラさんによって吹き飛ばされ、
ヒルダによって火だるまにされていた。
収容されていた魔族や一部の人族も戦うと申し出てくれたが、
戦闘能力のある者は、全員【奴隷の首輪】を着けられていて、戦うことは出来なかった。
しばらくピストン輸送を繰り返し、なんとか全員を安全な場所に移動することができた。
「救出、終わりました!
次の施設に行きますよ」
悪魔族たちのスキをみて、ブンミーさんたちに声をかけ、次の収容施設に【瞬間移動】した。
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「舞衣さん、大丈夫ですか?」
「ちょうど今、一通り片付けたところ……、
と、思ったらまた次の敵が来たみたいね、
ちょっと行ってくる」
そこには、気を失った悪魔族が何匹も転がっていた。
「では、俺とヒルダは、先にアヤの所へ行きますので、
ブンミーさんとカサンドラさんは、ここを頼みます」
「了解した」「うん」
3人に任せて、俺とヒルダは、アヤのもとへ【瞬間移動】した。
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『アーーーー!!』
アヤの所へ到着するやいなや、悪魔族の汚い悲鳴が響いていた。
それは、アヤの急所攻撃を食らった悪魔族が、ケツを押さえてうつ伏せに倒れる瞬間だった。
「アヤ、大丈夫…そうだな」
「あ、兄ちゃんとヒルダちゃん、
私のことが心配で助けに来たの?
ちょっと数が多くて疲れてきたけど、
まだ大丈夫だよ~」
アヤは、たくさんの悪魔族に囲まれながらも、素早い動きで攻撃を避けつつ、ブスリ、ブスリと、悪魔族に急所攻撃をして回っていた。
悪魔族の急所が刺されるたびに、離れた場所で観戦している収容所に捉えられていた人たちから「ヤンヤヤンヤ」と声援が上がっていた。
アヤは、そんな声援に笑顔で応えつつ、無双を繰り返していた。
「ヒルダ、俺はここの人たちを助け出すから
ヒルダは、アヤの手伝いを頼む」
「はい、分かりました」
ヒルダがアヤの手伝いに向かうと、
アヤ無双の現場に、巨大な炎の竜巻が巻き上がり、
観戦していた人たちから、ひときわ盛大な拍手が巻き起こった。
「はい、みなさん、俺の魔法でここを脱出しますよ~」
もっと観戦したいと駄々をこねる人たちを、なんとか説得し、
そこにいた100人ほどの人たちを、【瞬間移動】のピストン輸送で安全な場所に運んだ。
「ふー、
みんなを助け終わったぞ~」
「あーあ、観客がいなくなっちゃった~」
アヤは観客がいなくなった途端にやる気を無くして
悪魔族を放って、ヒルダを連れて俺の所へ逃げてきた。
「兄ちゃん、速く脱出しよう。
ちょっと疲れちゃった」
「収容所はもう一つ残ってるから、もうちょっと頑張れ」
「はーい」
俺は、アヤとヒルダを連れて、
ブンミーさんたちが守る、最後の収容所へ【瞬間移動】で向かった。
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