312.瞬間移動の魔石
翌日の日曜日、俺達4人は、
昨日に引き続き手分けして森を探索していた。
しかし、ここまで見つからないとは、
この森、けっこう広かったんだな。
もしかしたら探索している方角がずれているのかもしれない。
しばらくすると、アヤがハンカチを振っているのが【追跡用ビーコン】の映像で見えた。
俺はすぐさまアヤの所へ【瞬間移動】で駆けつける。
「アヤ、どうした?」
「兄ちゃん見て」
アヤの周りには、オークが10匹近く死んでいた。
なんだかオークを久しぶりに見た気がする。
「こいつら、アヤが倒したのか?」
「ううん、違う。
もとから死んでた」
よく分からんが、オーク10匹を倒す様な何かがいるということか。
「なんか危なそうだから、手分けするのはもう止めておこう。
エレナとヒルダを迎えに行こう」
「うん」
俺はアヤの手を取って、二人を迎えに行った。
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「セイジ様、これからは一緒に行動するのですか?」
「ああ、北に進むにつれて、魔物が強くなってきているし、
用心のためだ」
「はい」
「それじゃあ、みんなで出発!」
一緒に行動するということは、速度を一番遅い人に合わせる必要が出てくる。
4人の中で一番足が遅いのは、ヒルダ、
なのだが‥‥。
思ったよりヒルダの速度が速い。
どういう訳だろう?
ヒルダを鑑定してみると、
ヒルダの【肉体強化】魔法のレベルが2から3に上昇していた。
おそらく昨日今日と森のなかを走り回ったおかげで、【肉体強化】魔法のレベルが上昇したのだろう。
それにヒルダは、一生懸命に俺達に追いつこうと、全ての魔法を駆使して、努力を怠らない。
俺達は、それなりの速度で森の探索を進めた。
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しばらく探索を進めている途中、
「みんなストップ!」
「どうしたの兄ちゃん、なにかいた?」
「ああ」
反応のある方へ、こっそりと近づくと、
そこで二種類の魔物同士が戦っていた。
『普通のオーク』と『黒オーク』だ。
どうやら普通のオークの拠点に黒オークが襲いかかっている状況らしい。
「兄ちゃん、どうする?
やっつける?」
「探索が遅れるけど……
ほっとけばどこかで人が襲われる可能性もあるし、
やっつけるか」
白と黒のオークたちは、
戦いの途中で、横から襲撃を受け、
赤子の手をひねるように、あっけなく全滅した。
「あれ?
オークってこんなに弱かったっけ?」
「俺達が強くなったんだよ、
日の出の塔攻略で、だいぶレベルがあがったからな~」
倒したオークたちをインベントリにしまいつつ、
俺達はさらに北を目指した。
「うーむ、ここらへんは黒オークばっかりだな」
北に進むと、何度も黒オークと遭遇した。
結局、日没までに100匹近い黒オークを倒したが、
目的の悪魔族の街は見つからなかった。
黒オークがこの辺を平気な顔をしてうろついているということは、
悪魔族の街は別の所にあるのだろう。
捜索の範囲を広げるため、【追跡用ビーコン】を放射状に森の探索に出発させ、
俺達は帰宅することにした。
「兄ちゃん、帰宅用の【瞬間移動の魔石】を使ってみていい?」
「ああ、試してみるか」
なにげに他の人が【瞬間移動】を使うところを見るのは始めてだ。
「兄ちゃん行くよ!」
アヤは、【瞬間移動の魔石】を握りしめ、魔力を込めた。
……。
「あれ?
動かないよ?」
「なんでだ?」
「兄ちゃん、
これ不良品じゃん!」
どうしてだ?
なぜ動かない?
「試しにエレナ、やってみてくれないか?」
「はい!」
エレナが【瞬間移動の魔石】を握りしめ、
魔力を込めると……。
シュッ!
風の音とともに、エレナは消え去った。
【追跡用ビーコン】の映像を確認してみると、
エレナはちゃんと自宅に戻っていた。
「エレナはちゃんと使えたみたいだ。
次、ヒルダやってみて」
「はい」
シュッ!
ヒルダも使えた。
しかし!
【追跡用ビーコン】の映像を確認してみると、
ヒルダが瞬間移動した先の自宅で、座り込んでしまっていた。
「ヒルダの様子が変だ、
アヤ、すぐ戻るぞ」
「うん」
アヤを連れて自宅に戻ると、
座り込んでしまったヒルダを、エレナが介抱していた。
「ヒルダ、どうした!?」
「ま、魔力を、だいぶ使っちゃったみたいです」
なに!?
ヒルダを【鑑定】してみると――。
ヒルダのMPが、ほぼ空になっていた。
「ヒルダ、早く飴を舐めるんだ」
「は、はい」
ヒルダは飴を舐めてMPを回復し、
なんとか体調が元に戻った。
「ねえ、兄ちゃん、
これってどういう事?」
「どうやら【瞬間移動の魔石】は、かなりMPを使うみたいだ」
「かなりって、どれくらい?」
「おそらく3000だろう
ヒルダのMPが3000をちょっと超えたくらいだから、
ヒルダでギリギリ1回、
エレナはMPが7000あるから、2回は使える」
「じゃあ、私は?
私のMPっていくつだっけ?」
「アヤのMPは2500くらい」
「私、使えないじゃん!」
その後、色々と実験を行った結果――。
地球と、異世界をまたぐ移動の場合は3000。
世界をまたがない移動の場合は1000のMPを消費することが分かった。
また、以前の俺と同じように、
世界をまたぐ移動は、1日につき1回しか使えないことも分かった。
「くやしい!
私だけ使えないなんて!」
アヤが、じだんだを踏んでいた。
「地球にいれば、使えるだろ。
それにMP2500だって、普通の人よりはるかに多いんだぞ?」
「私だって異世界と地球を行ったり来たりしたいもん!
兄ちゃん、MPってどうすれば増えるの?」
「魔法のレベルを上げると増えるよ」
「魔法のレベルは、どうしたら上がるの?」
「勉強しろ」
「そ、そんな~」
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