301.さすが忍者
「ふう」
「ただいま」
俺は、エレナをつれて自宅に帰ってきた。
しかし困った。
とうとう魔法を見られてしまった。
しかも帰りは【瞬間移動】で帰ってきちゃったし。
教会の外には警察が押し寄せてきていて、歩いて帰ることは出来なかったんだよね~。
「セイジ様、すいません。
人前で魔法を使ってはいけないと、おっしゃられていたのに……」
「目の前にケガで困ってる人がいたんだから、仕方ないさ」
しかし、『ジュエリーナンシー』と『アーク・ゴールド』が仲が悪いからって、ここまでするか?
マフィアも、なに考えてるんだろう?
『アーク・ゴールド』に金をもらったくらいで、こんなことをするか?
黒幕である『ゴールド』の様子を【追跡用ビーコン】で覗いてみたが……。
誰かからの連絡を待っているようで、
事務所で落ち着きなくウロウロしているだけだった。
うーむ、この件、
何か裏がありそうだな。
そんな事を考えていると――。
【警戒】魔法が、
また、けたたましく『危険』を知らせてきた。
今度は誰だ?
こんどは、ヒルダとめぐみちゃんだった。
二人は、セーラー服を着ていた。(えっ?)
そして、野球部員たちに囲まれている。(えっ??)
どうやら場所は、めぐみちゃんの通う高校みたいだ。
どういう状況だ??
と思ったら、
『黒ずくめの奴ら』が小銃を持って、野球部員を取り囲んでいた。
野球部員たちは、ヒルダとめぐみちゃんをかばおうとしているのか。
「エレナ、
今度はヒルダが襲われているみたいだ。
ちょっと行ってくるから、留守番を頼む」
「はい! お気をつけて」
俺は、エレナを残し、
忍者の格好のまま、【透明化】をかけ直し、
ヒルダとめぐみちゃんの所へ飛んだ。
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「お前たち何者だ!」
現場では、『野球部員たち』と黒ずくめの奴らが、
野球のグラウンドで睨み合っていた。
「めぐみ、ヒルダちゃん、
俺達の高校野球初出場の応援に来てもらったせいで、こんなことに巻き込んじゃって、ごめんな」
野球部員たちの中で、一番先頭に立っている格好よさ気な男子があやまっている。
おそらく、キャプテンなのだろう。
しかし、銃を持った奴らを目の前にして、勇気があるやつだな~。
「おいお前ら、そんな玩具の銃で脅しても無駄だぞ!」
あ、おもちゃだと思ってるのか……。
『撃て』
ババババッ!
黒ずくめの奴らの威嚇射撃が、キャプテンの足元に炸裂する。
「うぎゃー!
ほ、本物!?」
キャプテンは後ずさりして、他の部員のところまで下がった。
「キャ、キャプテン、どどどど、どうする!」
「ととと、とりあえず、警察に、ででで、電話を」
「わわわ、分かった。
……ひゃくとうばん、って、何番だっけ?」
他の部員たちも、銃が本物と分かってパニック気味だ。
しかし、マフィアの奴ら、
高校生にまで平気で銃を撃つとは……。
なるべく姿を見られたくなかったが、そんなことも言っていられない。
俺は、【透明化】の魔法をといて、姿を現した。
「あ、忍者!」
『あ、忍者だ!』
両方から驚かれてしまった。
「に、忍者!?」
めぐみちゃんも、俺の登場に驚いた様子で、
姿を見ようと、野球部員たちを押し分けて、前に出ようとする。
「めぐみ、
危ないから、後ろに隠れているんだ」
キャプテンが、前に出ようとしていためぐみちゃんを押しとどめる。
「だ、だって、忍者が……」
「めぐみ、あの忍者のことを知っているのか?」
「うん、前に、私がマフィアに誘拐された時に、助けてくれた人…だと思う」
「そうか、じゃあ味方なんだな!」
野球部員たちは、俺の登場で、すこし冷静さを取り戻した。
『あの忍者は、報告にあったやつかもしれない。
まずアイツからやっつけるんだ』
黒ずくめの奴らは、標的を俺に変更したようだ。
望む所だ!
『撃て!』
あ、マズイ、
避けたら流れ弾が野球部員たちに当たる!
ババババッ!
俺は、【クイック】をかけて素早く『茶帯刀』を取り出し、
奴らの発射した弾を、
全て、
斬り落とした。
パラパラパラパラ……。
真っ二つに斬られた弾丸が、俺のまわりに散らばっていた。
まあ、単純に刀で斬っただけじゃなく、【土の魔法】や【バリア】も併用して、弾丸の勢いを殺したりもしたんだけどね。
見ていた人には、全て刀で斬った様に見えただろうな。
『ば、バケモノだ!
刀で弾を斬ったぞ!!』
「忍者すげー!!」
黒ずくめの奴らは、恐れおののき。
野球部員たちは、大興奮している。
ちょっと、サービスしちゃおうかな~。
俺は、野球部員たちからも見えるように、少し場所を移動してから、
意味ありげに両手でそれっぽい『印』を組み。
【火の魔法】で黒ずくめの奴らの周りに『火柱』を出現させた。
『うわ!!
忍者の魔法だ!!』
「すげー!!!!
忍術だーーーー!!!!」
ちょっと野球部員たち、興奮し過ぎだぞ!
あ、
騒ぎを聞きつけたのか、
学校の先生が、少し離れた場所で、慌ててどこかに電話をかけているのが見える。
そろそろ潮時かな。
俺は、さっきよりさらに、難しそうな『印』を組んで、
『ヤバイ、また、忍者魔法が来るぞ!』
「忍者、がんばれー!!」
逃げようとしていた黒ずくめの奴らに、
バリバリバリバリ!!
特大の電撃を食らわせた。
まあ、見た目が派手なだけで、
電圧は下げてあるから、死にはしないだろうけど。
激しい電撃(見た目だけ)が止むと、
黒ずくめの奴らは、
感電して、全員倒れていた。
「やったー!!
忍者強い!!」
野球部員たちが大喜びしている間に、
俺は、姿を消した。
「忍者が消えた!!」
「カッコいい!!」
まあ、野球部員たちの称賛はほっておいて、
ヒルダを回収しないとマズイな。
俺は少し離れた位置に移動し、
ヒルダに電話をかけた。
「ヒルダ、ケガはないか?」
「あ、セイジお兄ちゃん、
大丈夫です。ケガはないです」
「ヒルダ、よく聞いてくれ、
その場に居るとマズイから、
なんとか、その場から離れるんだ」
「はい、わかりました!」
さて、なんとかなるか?
「ヒルダ今の電話、丸山から?」
「ええ、そうです。
ここにいると良くないから、離れなさいって」
「もしかして、丸山は今起きた事件のことを知ってたの?」
「えーっと……」
「これから警察が来るだろうけど、
それがヒルダにとって良くないってこと?」
「……」
うーむ、めぐみちゃんに色々と感づかれちゃったかな?
「分かったわ、私がなんとかする」
どうやら、めぐみちゃんは色々と察してくれたみたいだ。
「すいません、キャプテンさん。
私たち、警察が来る前に、この場を離れたいんです」
「ん?
そうか、めぐみはアイドルだもんな、
揉め事は良くないか……
分かった、俺達がなんとかする。
みんな! めぐみはここにいなかった。 いいな!」
「「おー!!」」
どうやら、野球部員たちもナイショにしてくれるみたいだ。
ヒルダとめぐみちゃんは、
野球部員に見送られて、その場を離れることに成功した。
手をとり合って逃げるヒルダとめぐみちゃん、
なぜか、二人とも少し楽しそうな表情をしていた。
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