296.ヒルダの戦い方
空手有段者の大男のぶっとい腕が、ヒルダに襲いかかる。
スカッ。
ヒルダは、何とかその攻撃を避けることに成功した。
しかし、パンチがかすめたらしく、
ヒルダの鼻の頭が少し赤くなっている。
「やめてー!
女の子に手を上げるとか、恥ずかしくないの!」
めぐみちゃんの悲痛な悲鳴が、辺りに鳴り響く。
しかし、めぐみちゃんの叫びも虚しく、
大男の無慈悲な攻撃が、続く。
スカ、スカッ。
ヒルダは、続く連続攻撃を、なんとか避ける。
「やめて!
私が言うことを聞くから、
ヒルダにはひどいことしないで……」
めぐみちゃんが、力なくギブアップを宣言する。
「初めから素直に言うことを聞けばいいものを…」
「ダメです!」
リーダーの男の言葉を、ヒルダが遮った。
「めぐみさん、私は平気です。
めぐみさんは、もっと堂々としていて下さい。
私は、堂々としているめぐみさんのほうが好きです」
「ヒルダ……」
なんか、ヒルダがカッコいいぞ。
しかし、それを気に入らないのは、リーダーの男だ。
「お前、小さいくせに生意気だぞ、
おい、さっさとこいつをやっつけてしまえ!」
「お、おう」
大男は、リーダーに命令されて、しぶしぶ攻撃を再開する。
しかし、ヒルダは避けることに慣れてきて、
大男の攻撃がぜんぜん当たらなくなってきた。
しばらくすると、
ヒルダは、だんだん変な避け方をするようになってきた。
ヒルダのやつ、何やってるんだ?
なぜか、大げさに避けて、
無駄にクルッと一回転したりしている。
大男の攻撃のリズムをはかって、
それに合わせて、リズミカルに動くヒルダ。
あ、分かった……。
ヒルダのやつ、踊ってやがる。
「ヒルダ……」
めぐみちゃんも、気がついたみたいだ。
「おい、何やってるんだ!
遊ばれているじゃないか!!」
リーダーの男が、大男を叱りつける。
「だ、だって……」
ヒルダにヒラヒラとかわされて、大男の戦意も減少してしまったのだろう。
攻撃の手はすっかり止まり。
そして、ヒルダだけが、楽しそうに踊っていた。
「ラララ~♪」
何事だ!?
振り返ると、めぐみちゃんが、
ヒルダの踊りにあわせて、歌い始めた。
その歌声を聞いて、踊りながらめぐみちゃんに向かってニッコリ微笑むヒルダ。
めぐみちゃんも、歌いながらヒルダに微笑み返す。
そして、
二人の歌と踊りは、
周りの人々の視線と言葉を奪っていった。
めぐみちゃんの歌がサビを迎え、
そして、ゆっくりと終わっていく。
それに合わせて、ヒルダの踊りも、まとめに入る。
そして、歌が終わるのに合わせ、
ヒルダは、バッチリとポーズをキメた。
「「わ~!!」」
パチパチパチパチ
あ!
気が付くと、まわりに人集りができていた。
めぐみちゃんの歌と、ヒルダの踊りに、
通行人や、近所の人達が集まってきてしまったのだろう。
さっきまでめぐみちゃんとヒルダを囲んでいた男子たちは、大勢の人に囲まれて小さくなってしまっている。
めぐみちゃんとヒルダは、周囲の人達の声援に、恥ずかしそうに答えていた。
ヒルダ、凄いな……。
誰も傷つけずに、奴らに勝ってしまった。
後で、目一杯ほめてやらないとな。
男子たちは、周りの人たちに気づかれないように、こそこそと逃げていってしまった。
あ、もしかして……。
ふと思ってヒルダを【鑑定】してみると……。
『踊り』という新たなスキルを習得していた。
マジか! そんなスキルもあるのか!
踊りレベル1のスキルは『回避の踊り』だそうだ。
羨ましい! 俺も欲しい!
ダンスレッスンを受ければ、俺も覚えられるかな?
めぐみちゃんとヒルダは、周りの人の声援に答えながら、その場を後にした。
あ、俺も仕事中にトイレのふりをして出てきたんだった。
早く戻らなきゃ!
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