295.護衛週間
ヒルダとめぐみちゃんの二人は、めぐみちゃんの家に向かっていた。
道中、
火事が起こって大変な現場に出くわしたが、
急な局地的豪雨が降り始めて、火事が急に鎮火したり、
車に惹かれそうになっていた子猫が、急な突風によって車との衝突を回避したりしたが、
おおむね何も起こらずに到着した。
めぐみちゃんの家は、かなり大きな家だった。
中を見てみたい気持ちでいっぱいなのだが……
これから俺を驚かすために、『秘密の特訓』をするということなので、【追跡用ビーコン】の音声と映像はしばらく切っておくことにした。
まあ、セキュリティがしっかりしてそうな家なので、もう安全だろう。
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「それじゃあ、私もそろそろ帰ります」
りんごが帰宅するようだ。
「それじゃあ、私もご一緒しますね」
エレナも、席を立つ。
「エレナ、りんごのこと頼んだぞ」
「はい」
こうして、エレナはりんごと一緒に出て行ってしまった。
道中、
腰を痛そうにしていたお婆さんが、急によくなったり、
足を引きずって歩いていた猫が、急に元気よく走って行ったりしたが、
おおむね何も起こらずに、りんごの住むマンションに到着した。
前にストーカー被害にあった事があるだけあって、
りんごのマンションはセキュリティ対策がしっかりした良いマンションだった。
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「お邪魔します」
「いまお茶を淹れるね」
りんごがお茶を淹れるために台所へ向かおうとしたが、エレナがそれを呼び止めた。
「お茶なら私が淹れます」
「え? だって、エレナちゃんはお客さんなんだから」
「いいえ、今日の私はりんごさんの『メイド』なんです」
「メイド!?」
「はい、
りんごさんは、テスト中だっていうのに、ジュエリーナンシーの方もやっていて、大変なんですよね。
テストが終わるまで、家事は全部私がやりますから、
りんごさんは、お勉強をがんばってください」
「エレナちゃん、ありがとう。
私、勉強頑張るね」
こうして、りんごは勉強へ、
エレナは、お茶を淹れに台所へ。
よし! 二人はセキュリティ万全のマンションの中だし、もう大丈夫だろう。
とは言いつつ、もうちょっと覗いちゃおうかな~
べ、別に、覗きが趣味とかそういうんじゃないからね!
「りんごさん、お茶をお淹れました」
「エレナちゃん、ありがとう」
勉強を始めたりんごにエレナがお茶を差し入れる。
「美味しい、エレナちゃんはお茶を淹れるのも上手なのね」
「はい、いつもお手伝いしてるんです」
「お手伝い…羨ましいな……
セイジさんに……」
「りんごさん、どうかしました?」
「いや、別に……」
羨ましい? りんごは茶道とかに興味があるのかな?
「では、私はお夕飯の準備をして来ますね」
「ありがとうね」
エレナは、勉強するりんごを残して、近くのスーパーに買い出しにでかけた。
それにしても、怪しい人物は全然現れないな~。
ちょっと先走りすぎたかな?
まあ、後手に回るよりはいいよね。
その後も、エレナのまわりで急に怪我や病気が治る人が続出したが、
特に問題なく買い物を終え、りんごのマンションに帰ってきた。
「ただいま」
「エレナちゃんおかえり。
買い物までしてもらっちゃって、ありがとうね。
今日は何を作ってくれるの?」
「今日の献立は、豚のしょうが焼きですよ~」
「わーい、私、豚のしょうが焼き大好き~」
なんか、楽しそうだな~。
俺も豚のしょうが焼き食べたい……。
夕飯の後、俺が二人を迎えに行き、
護衛作戦初日は無事終了した。
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翌日からも、
朝から二人を送り届け、
夜に迎えに行くというスケジュールを続け、
その週は、何事も無く過ぎ去っていった。
うーむ、何もしてこないと、逆に不気味だな。
問題が発生したのは、金曜日の事だった。
「よう! めぐみ、待ってたぜ」
めぐみちゃんとヒルダが、めぐみちゃんの家へ向かっている途中、
二人は何者かに囲まれてしまった。
マズイ!
俺は、仕事中だったのだが、
トイレに行くふりをして席を立ち、
忍者の格好に変身し、
【透明化】の魔法をかけて
【瞬間移動】で二人の元へと、駆けつけた。
「何よ! あんたたち」
あれ?
【警戒】魔法が反応していない。
どういう事だ?
よく見ると、二人を取り囲んでいるのは、めぐみちゃんと同い年くらいの男子たちだった。
学校の同級生なのかな?
そして、その内の一人が進み出て。
「めぐみ、いいかげんアイドルごっこなんてやめて、俺と付き合えよ」
「ごっこですって!?
誰があんたなんかと」
なんか、言い寄られているのか?
相手は、頭の悪そうな勘違い野郎だった。
「俺様と付き合いたいって言い寄ってくる女子はたくさんいるんだぞ?
光栄におもうんだな」
駄目だこいつ、人の話を聞いていない。
「バカじゃないの」
「いいから来いよ!」
そいつが、めぐみちゃんの手を掴もうとした、その時。
「めぐみさんに乱暴しないで下さい」
ヒルダが、そいつの前に立ちはだかった。
「何だこいつ」
「ヒルダ、ダメ、
そいつは危ないやつだから下がってて」
「お前ヒルダっていうのか、
生意気だぞ」
その頭の悪そうな男は、ヒルダを小突こうとしてくる。
しかしヒルダは、そいつの遅っい攻撃を素早く受け止め、掴んでしまった。
「きさま、歯向かう気か!」
男は、ヒルダにつかまれた手を解こうとするが、
その手はまったく動かない。
「畜生、こいつ、見た目によらず馬鹿力だな!
ハ・ナ・セ!」
やっとの思いで、男はヒルダの手を振りほどき、
何歩か後ろの下がった。
ヒルダにビビっているのかな?
「おい、あのチビをやっつけろ」
男は、横に居た大男に命令している。
やっぱり手下なのか。
ヒルダの前に身長2mほどの大男が進み出る。
ヒルダとの身長差がものすごい、
まるで小人と巨人みたいだ。
「ヒルダ、ダメよ、そいつは空手の有段者なのよ!
逃げて」
よく見ると、めぐみちゃんは他の男に捕まってしまっている。
まあ、捕まえている男たちは、気弱そうな奴らなので、暴力は振るわれないと思うが……。
そろそろ、俺が助けに入るべきか?
「大丈夫です、私が助けます」
俺の心の声に応えるかのように、ヒルダがそう答えた。
おそらくヒルダは俺がそばにいることに気がついているのだろう。
そして、この台詞は俺に対して言っている。
うむ、ここはヒルダを信じて任せよう。
お人形のように小さなヒルダに、
空手有段者の大男のぶっとい腕が……
襲いかかってきた。
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