294.アイドルの心
めぐみちゃんとヒルダがダンスレッスンに向かうのを、俺は【追跡用ビーコン】を使って覗いていた。
「そう言えばヒルダ、あなたどこの国から来たの?」
「えーと、ドレアドス王国です」
おいヒルダ! 喋っちゃダメだろ!
「ドレアドス王国……。
えーっと……。
え、ええ。も、もちろん知ってるわよ!」
めぐみちゃん、知ったかぶりにも程があるぞ。
そんな話をしながら、二人はダンスレッスンの場所に到着した。
「ここでダンスレッスンを受けるのよ」
「すごいです!」
大きな部屋に大きな鏡、
他に人が居ないので、おそらく貸し切りなのだろう。
「どうせだから、あなたも一緒にレッスン受けてみない?」
「いいんですか?」
「一人増えるくらい別に問題ないでしょ、先生には私から言ってあげる。
練習着は予備のがあるから、それを使えばいいし」
「ありがとうございます!」
二人は、更衣室へと入っていったので、
【追跡用ビーコン】の映像は、そこでいったん途絶えた。
映像が復活した時には、レッスンの先生が到着している状態だった。
「先生、この娘も一緒にレッスンを受けてもいいかしら?
追加料金が必要なら、おじいちゃんに言っておくから」
どうやら、レッスン料は社長が出しているらしい。
「別に構いませんよ」
先生は、優しい人らしく、快く了承してくれた。
「じゃあ、二人とも、頑張っていきましょう!」
「「はい」」
めぐみちゃんは、前からレッスンを受けていただけあって、動きがいい感じだ。
ヒルダも、最初はぎこちなかったが、すぐにコツを理解し、だんだんと動きが良くなっていく。
「ヒルダ、あなた初めてなのに筋がいいわね!」
「えへへ」
まあ、レベルアップによって、ステータスがかなり上がっているから、
スペック的には、かなりのことが出来るはずだ。
それからしばらくは、
楽しそうに踊るヒルダと、
負けじと頑張るめぐみちゃん、
二人のダンスを十分に堪能した。
いやあ、これはお金を出してでも見たいと思う、素晴らしいダンスだった。
「二人とも、お疲れ様でした。
めぐみちゃん、今日はいつも以上に上手でしたね。
ヒルダちゃんが一緒にレッスンを受けてくれたおかげかな、
ヒルダちゃんも、またいつでも遊びに来てくださいね」
「はい! ありがとうございます」
~~~~~~~~~~
ダンスレッスンを終えた二人は、電車に乗ってまた別の場所へ向かっていた。
「めぐみさん、次はどこへ行くんですか?」
「次は『ボイスレッスン』よ」
ほう、ボイスレッスンまで受けてるのか、
ずいぶん本格的だな。
「お歌をうたうんですか!?
楽しみです~」
「ヒルダ、歌が好きなの?」
「はい、大好きです」
「そう……
じゃあ、また一緒にレッスンしましょう」
「はい!」
二人は楽しそうに次の場所へと向かった。
~~~~~~~~~~
「申し訳ないけどヒルダちゃんは、また今度にしましょうね」
「は、はい……」
ボイスレッスンの先生に、ヒルダは断られてしまった。
なぜかというと……。
ヒルダは、音痴だったのだ……。
いやいや、俺はいい歌だと思ったよ?
すこーし、ほんのすこーし、音程がズレていただけで、
とても楽しそうに歌っていたし、
心がほっこりする、いい歌だったよ。
まあ、今回はめぐみちゃんのレッスンがメインだから仕方ない。
しかし、ヒルダはがっかり肩を落として、
レッスン部屋のはしっこの椅子に座り、うつむいてしまった。
めぐみちゃんも心配そうにヒルダをみている。
「さあ、レッスンを続けましょう」
「はい」
めぐみちゃんのレッスンは再開した。
しばらくめぐみちゃんのレッスンが続き、
ヒルダは徐々に元気を取り戻していった。
めぐみちゃんが、ヒルダに微笑みかけながら、元気づけるように歌ってくれていたおかげなのだ。
ヒルダは、めぐみちゃんの歌を聞いて、どんどん元気を取り戻していく。
そして、楽しそうにめぐみちゃんの歌を聞いているヒルダの様子は、
逆にめぐみちゃんにも良い影響が出ていた。
めぐみちゃんは、ヒルダを元気づけるように歌い。
そして、ヒルダが喜ぶ顔をみて、めぐみちゃん自身も元気をもらう……。
めぐみちゃんは、『アイドルの心』と言うものを、しっかり持っているみたいだな。
「それでは、今日のレッスンはここまで。
今日は、だいぶいい感じでしたね」
「ありがとうございます」
かなりいいレッスンとなったみたいで、
めぐみちゃんとヒルダは、充実したいい笑顔でボイスレッスンの教室を後にした。
~~~~~~~~~~
「ねえヒルダ。
これから、うちに遊びにこない?」
「めぐみさんのお家に!?
行ってみたいです!」
「家に防音室があるから、そこでヒルダの歌も聞かせて」
「私の…歌…ですか?
で、でも……」
「誰にだって苦手なものの1つや2つあるものよ、
それに……
こっそり練習して、丸山…セイジの奴を驚かせちゃいましょうよ」
「セイジお兄ちゃんに……
私の歌を……
うん!
私、歌を練習したい!」
「そうこなくっちゃ!」
そんなこんなで、ヒルダは、
めぐみちゃんにお持ち帰りされてしまった。
ご感想お待ちしております。




