292.個人情報保護法
土日は、俺とエレナとヒルダで、日の出の塔攻略に行った。
37階からは氷に閉ざされた寒いフロアが続いた。
だいぶ敵のレベルが高くなってきて、なかなか先に進めず、土日の二日間で44階までしか行けなかった。
3人のレベルは、俺が50→52、エレナが42→46、ヒルダが35→42に上がった。
アヤはヒルダにレベルをすっかり抜かれてしまって、
悔しそうにしていた。
そして、何よりのニュースは、
ヒルダの火の魔法が、レベル5に到達したのだ。
ヒルダは、巨大爆発を起こす新しい魔法を覚え、
一度使ってもらったのだが、
それなりに強い敵集団が、一発で壊滅し、
その衝撃波が、俺達にもズンと響いてきた。
俺たちはその魔法を『ヒルダズン』と命名した。
あと、帰りにマサムネさんのところによって、白帯刀を預けてきた。
白帯刀のさらなる強化は、3日でできるそうだ。
いつもながら仕事が速い人だ。
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翌週の月曜日、
朝からナンシーの所へ行くと、
めぐみちゃんが、いた。
「めぐみちゃん、朝からどうしたんだ?
学校は?」
「丸山もけっこうバカなのね。
高校はもう夏休みよ」
相変わらず口が悪い。
まあ、アヤに比べたら可愛いもんだけどね。
ウウウウゥーーーー!!
そんな会話をしていると、奥の部屋から
けたたましいサイレンの音が聞こえてきた。
「丸山、何事なの!?」
「ああ、平気だよ」
俺はニッコリ微笑んでめぐみちゃんを落ち着かせ、
ゆっくり、奥の部屋に入っていった。
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「火山あいさん、何をしているんですか?」
奥の部屋にいたのは、慌てふためく『火山あい』だった。
まあ、ビーコンの映像を見ていたから、
この部屋にいて、何をしているかも知っていたんだけどね。
「セイジ、何事なの?」
ナンシーも駆けつけてきた。
「ナ、ナンシーさん、私はなにも……」
俺は、おどおどする『火山あい』の右手を掴み、
手に握っていたUSBメモリーを取り上げた。
「あいさん、このUSBメモリーは何ですか?」
「そ、それは……
あの……
便利なアプリがあるので、このパソコンに入れようかと……」
「ダメですよ、あいさん。
そのパソコンには、『顧客情報』が入っているんですから、
個人情報保護法の関係から、アプリをインストールするのも、USBメモリーをさすのも禁止ですよ。
ナンシーから聞いてないんですか?」
「す、すいません、
忘れてました……」
俺のにらんだ通り、あいさんは色々情報を盗むつもりなのは確定的に明らかだな。
「ナンシーどうする?」
「まあ、誰にでもミスはあるし、
以後気をつけてね」
「は、はい……」
ゆるしちゃうのかよ!
まあ、『悪気はなかった』と、しらを切られたら、今のところどうしようもないんだけどね。
「そう言えば、面接を受けた他の人達は?」
「4人共働いてくれることになったんだけど、
火山だけ、即日で働けるっていうから、
先に来てもらってる」
「なるほど~」
そんな『あいさん』は、申し訳無さそうにしている。
だが、目が怒りに満ちてる。
あー怖い怖い。
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「先程は失礼しました。
お茶です、どうぞ」
『あいさん』は、汚名返上とばかりに、お茶を淹れてきてくれた。
「あ、俺はのどが渇いてないから、
あいさん、代わりにどうぞ」
「え!? で、でも……」
「せっかく淹れてくれたお茶がもったいないから、
遠慮せず、ぐいっとどうぞ」
「そ、それでは……
い、いただきます……
うっ……」
「う?」
「い、いえ、美味しい…です」
あーあ、雑巾の絞り汁入のお茶、飲んじゃった。
えんがちょ~。
まあ、ビーコンの映像を見てるから、
お茶に雑巾の絞り汁を入れているの、見てたし!
「ちょっと失礼します」
『あいさん』は、飲みかけの湯のみを持ったまま出て行ってしまった。
『うげー。
あの野郎、絶対に許さない!!』
『あいさん』は、トイレで吐きながら、
雑巾の絞り汁入りのお茶を洗面台に流し、
俺に対する怒りを露わにしていた。
なんか俺、意地悪かな?
でも、ぜんぶ向こうが仕掛けてきたことだし、仕方ないよね?
けっきょく、その日は、
『あいさん』を見張るために、一日中ナンシーのところにいた。
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「お先に失礼します」
『あいさん』が帰るので、やっと俺も帰れる。
とは言っても、『あいさん』が外で待ち伏せしているんだけどね。
めぐみちゃんは先に帰っちゃったし、誰を狙うつもりなんだろうか。
俺でした。
俺が店を出ると、『あいさん』がこっそり後をつけてきやがった。
「さーて、最近運動不足だから、マラソンしながら帰るかな~」
俺は、わざとらしい独り言をつぶやき、走り始めた。
『あいさん』は、しばらくついてきたが、
俺が徐々に速度を上げていくと、
ヒーヒー言いながら、途中でパンプスが脱げてズッコケてしまい、膝を擦りむいてしまっていた。
『くそう!! 何なのよ、アイツは!!!』
『あいさん』は、地団駄を踏みながら、悔しそうに帰っていった。
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