026.リンゴとハチミツ
俺達は宿屋に来ていた。
エレナをさらった日に泊まろうとして、お金が無くて諦めた宿屋だ。
「こんにちは、3人なんだけど部屋は空いてますか?」
「1部屋だけなら空いてるがどうするね?」
「1部屋!? まいったな」
「私はセイジ様と同じ部屋でも平気です」
「私も兄ちゃんと一緒でも平気だけど…… エレナちゃんに変なことしないでしょうね!」
「妹と一緒なのに、そんな事するわけ無いだろ」
「私が居なかったらするんだ」
「し、しないよ」
アヤが、ジト目で睨みつけてきている。
俺は、目をそらしてごまかした。
「どうするね、泊まるのかい?」
「あ、はい、お願いします」
「あいよ、それじゃあ30Gね。夕飯と朝食はそれぞれ別料金で1人5Gだよ」
「それじゃあ、朝食だけ3人分お願いします」
「あいよ」
「ん? 兄ちゃん、夕飯はどうするの?」
「これから作るのさ」
「作る?」
~~~~~~~~~~
「あ! セイジ兄ちゃんだ!!」
「アリア~、セイジ兄ちゃんが来たよ~!!」
「ここが兄ちゃんの言ってた教会?」
「そうそう、ここで台所を借りるんだ」
「セイジさん!」
「アリアさん、病気はもう大丈夫ですか?」
「申し訳ありませんでした!!」
何故かアリアさんが、地面に平伏してる!
「アリアさんどうしたんですか!? 立ち上がってください」
「あれからミーニャに話を聞いたら。セイジさんのお金を盗んだって言うじゃないですか! あれだけ良くしてもらっておいて、お金を盗んだなんて、なんとお詫びをしたらいいか」
「やめてくださいよ、俺は気にしてませんから」
「ミーニャ! あなたも一緒に謝りなさい!!」
「ご、ごめんなさい……」
「ほんと、気にしてないから。それより、また台所を借りたいんだけどいい?」
「はい、いくらでも使ってください」
「兄ちゃん兄ちゃん、みんなを紹介してよ」
「おっと、忘れてた」
「忘れんな!」
俺は、アヤをみんなに紹介してから、台所を借りて調理を開始した。
まずは、【新玉ねぎ】をみじん切りにし、フライパンを熱してバターを溶かし、玉ねぎをきつね色になるまで炒める。
【鶏肉】を、一口サイズに切って、大きな鍋の底に油を引いて炒め、塩コショウを振っておく。
一口サイズに切った【新じゃが】、【人参】を鍋に投入して炒める。
炒めておいた玉ねぎも鍋に移して、更に炒める。
具材をあらかた炒め終わったら、鍋に水を入れて煮立たせ、アクを取りつつ30分ほど煮込む。
鍋を一旦火から外して、リンゴとハチミツがとろ~り溶けてる甘口のカレールーを投入。
更に30分煮込んだ後、鍋をまるごとインベントリに入れて【一昼夜】時間を進める。
一晩寝かせた状態になったカレーを、インベントリから取り出し、もう一度温めなおして完成だ!
カレーが完成した頃には、辺りにスパイシーな香りが広がり、何事かと子供たちは全員集まってきていた。
サラダも追加で作っておく。
今回のサラダは、ツナ缶を開けてツナサラダにした。
ドレッシングは、サウザンドレッシングだ。
「みんな、皿を持って並べ!」
「「はーい」」
子供たちは、元気よく返事をして、皿を持って一列に並んだ。
アヤとエレナも、一番後ろに並んでいる。
アリアさんも、恥ずかしそうにその後ろにならんだ。
プラスチック容器に入れたご飯を、インベントリから取り出し―
それぞれの皿にご飯をよそってから、カレーをかける。
カレーをもらった子供たちは、香りを嗅ぎながらテーブルに持って行き、行儀よく椅子に座ったのだが、みんな早く食べたくて、そわそわしている。
俺は、インベントリから人数分のコップを取り出し、牛乳をそそいでみんなに配った。
みんなでお祈りをしてから、みんなでカレーを食べた。
「「いただきます!!」」
「「おいしいー!」」
「美味しいです!」
「肉が入ってる!!」
「ほんとだ!肉だ!」
「このお肉も、すごく柔らかくて美味しいです!」
「サラダも美味しい!」
「サラダにもお肉っぽいのが入ってますね」
「それは肉ではなくて魚だよ」
「魚なんですか!?」
みんなで、ワイワイいいながらカレーを食べていると―
「こんばんは、アリアさんいますか?」
人の良さそうなおじさんが、アリアさんを訪ねてきた。
だれだこの人は!?
アリアさんと、どんな関係なんだ!!?
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