276.Hentaiの餌食
「セイジ! あなたが!!」
ナンシーママは、こんどは俺の胸ぐらをつかんできた。
そして、目を血走らせていて、なんか怖い。
「あの……、ど、どうかしましたか?」
「どうもこうもないわよ!
あのブローチはどうやって作ったの!」
「どうと言われましても……」
流石に魔法で作りましたとは言えない。
「まるで魔法……」
「へ!?」
「あんなデザインでは、金属加工をする時に問題が起こるはず」
「ご、ごめんなさい」
勢いに飲まれてりんごが謝っているが、ナンシーママには聞こえていないみたいだ。
「でも、現実にあのブローチは完成させてしまっている。
本当に魔法で作ったかのようじゃない!!」
やっぱり本職の人が見ると、変な作り方であることが分かってしまうのか。
「教えなさい!! アレはどうやって作ったの!」
ナンシーママ怖い……。
ナンシーに助けを求めようとしたのだが、そっぽを向かれてしまった。
そんな…殺生な……。
「黙っていないで、なにか言ったらどうなの!」
「……えっと……」
「さあ!」
「ひ!」
「ひ?」
「秘密です!!!!」
「ひ、秘密ですってぇ!!!!」
こ、怖い……。
「ママ、落ち着いて!」
やっとナンシーが助けに入ってくれた。
「そ、そうよね……
こんな凄い金属加工技術をおいそれと教えるわけ無いわよね」
ふー、やっと諦めてくれたか。
「100万ドル!」
「へ?」
「100万ドルでどう?」
「な、何が100万ドルなんですか?」
嫌な予感がする。
「その金属加工技術、100万ドルで売って!」
えーと、100万ドルって円に換算するといくらだっけ?
たしか、今のレートは1ドル110円くらいだっけ?
だいたい、100円として、1億円か……。
一億円!?
おちつけ……、たかが1億円じゃないか、
この前社長と部長からもらった金額と同じだ。
こんな金額で、俺がなびくと思ったら大間違いだぞ!
「じゃあ、200万ドルでどう?」
釣り上げてきた!
「お、お断り…します」
「きー!! 分かったわよ!!!」
やっと分かってくれたか。
「1000万ドルよ!!!!」
「ちょっとママ!」
「あなたは黙ってなさい!
これは金属加工業界の歴史を変えることなのよ!
1000万ドルの価値は十分にある!!」
ヤバイ、目が完全に理性を失っている。
今にも襲いかかってきそうな態勢でにじり寄ってくる。
俺は、ナンシーママの勢いに押されてジリジリと後ずさりしている。
そして、ついに、壁際に追いつめられて、両手壁ドンされてしまった。
「1000万ドルよ、これで文句ないでしょ?」
「お、お断りします」
「キー!! なんでよ!!
そうだ!
ナンシーを付けるわ!
これなら文句ないでしょ?」
「へ?」
「ナンシーを、あなたにあげる、好きにしていい。
それで手を打ちましょう」
「ちょ! ママ!!」
「日本人の男は全員Hentaiだと聞いたことがあるけど、ジュエリー・ナンシーの未来のために、人柱になってちょうだい」
「え!?」
ひどい言われようだ。
「どんな条件を付けられても、教えられません」
「な、なんですって!?
ナンシーにHentaiし放題なのよ?」
「俺は、Hentaiじゃ無いです!! 」
ナンシーママは、がっくりと肩を落としてしまった。
でも、流石に魔法で作りましたなんて言えるわけもないし、どうしようもないよね。
「く……」
あれ? ナンシーママ泣いているのか?
「悔しい!!!」
ちがった、悔しがっていただけだった。
「私の金属加工技術は世界一だと思っていたのに!
こんなアジアの国の技術に心奪われてしまうなんて!」
ナンシーママは、地団駄を踏んでいる。
よほど悔しかったのだろう。
悪いことしちゃったな。
「セ、セイジさん!」
すると、見かねたりんごが横から話しかけてきた。
「セイジさん、私のブローチをナンシーさんのママにあげちゃダメですか?」
「なんで?」
「だって、ママさん、かわいそうなんですもん」
りんご、いい子だな。
「でも、ダメだ!」
「どうしてですか?」
「だって、そのブローチは、俺たちの『友情の証』なんだぞ?
『友情の証』を人にあげちゃうのか?」
「そ、そうですよね……」
りんごは、うなだれてしまったが、
何かに気がついたように顔をクイっと上げて。
「あ! そうだ!
それじゃあ、ナンシーさんにも『友情の証』を作ってあげられませんか?」
「ナンシーに?」
「だって、ナンシーさんも、私たちのお友達ですよね?」
「でもな~」
ナンシーに渡したら、絶対にナンシーママに奪われる。
「じゃあ、私がセイジさんの言うことを、何でも聞きますから!」
「え? 今、何でもって言った?」
「へ、へ、Hentaiでも、が、我慢します!!」
ちょっとりんごさん、そんな事言っちゃダメ!
「……分かったよ、ナンシーにも作ってあげよう」
「ホントですか!?」
「でも、俺はHentaiじゃないからな!!」
「という訳で、ナンシーに『友情の証』として俺たちと同じアクセサリーをプレゼントするから、それで勘弁して下さい」
「セイジ、ほんとに私にもアクセサリーくれるの?」
ナンシーも嬉しそうだ。
「ただし!
『友情の証』を他人にあげたり、売ったり、
あまつさえ、分解して調査したりしたらダメですからね!」
ナンシーの後ろで悪い顔をしていたママさんに向かってそういうと、
ママさんは、そっぽを向いて口笛を吹き始めた。
ほんとうに大丈夫なんだろうか。
「セイジ、りんご、ありがとう」
ナンシーが嬉しそうに、俺に握手をして来た。
そして、りんごには、熱烈なハグをしやがった。
「ちょっ! ナンシーさん! 苦しいです」
羨ましいぞ! どっちか変われ!
「りんご、ごめんね、私のために……」
「ううん」
「でも、私のために、りんごがHentaiの餌食に」
「おいィ!!」
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