269.潜入マフィアのアジト2
血だまりはどんどん広がっていく。
ヤバイ!
あの人死ぬぞ。
「兄貴、何故……」
俺に殴られてへたりこんでいた下っ端を、兄貴と呼ばれた頬に傷のある強面の奴が、拳銃で撃ちやがった。
撃たれた下っ端は、血だまりの中で動かなくなった。
「お前のような弱い奴は、我が○○会には要らない」
つまり、戦闘員たちの士気が下がりそうになっていたのを、恐怖で食い止めようというつもりなのだろう。
だが、その作戦には致命的な欠陥がある。
俺は、床を蹴って一気に間合いを詰め、下っ端を撃った強面の奴を蹴り飛ばした。
奴は、カエルが潰れるような声を上げて壁に激突した。
そう、脅している本人をやってしまえば、士気の低下は逆に加速してしまうということだ!
戦闘員たちは俺の強さに驚き、一斉に3歩ほど後ずさりした。
俺は、撃たれた下っ端の所へゆっくりと歩み寄る。
うむ、まだ死んではないみたいだ。
とりあえず、【回復魔法】で軽く止血をして、ほっておいても死なない程度に回復もしてあげた。
生きて罪を償うべきだしね。
そろそろ、大乱闘を始めるか!
俺が1歩前に出ると、奴らも1歩後ずさりする。
俺が2歩前に出ると、奴らも2歩後ずさりする。
おい! ビビってんじゃねえか!
その内、一番後ろの方に居た奴が、玄関から逃げようとこそこそしているのが見えた。
逃がすかよ!
俺は、玄関を塞ぐように【バリア】をはる。
ゴツン。
逃げようとしていた奴がバリアに阻まれ、頭をぶつけてしまう。
そして、焦りながら見えないバリアを必死に触っている。
その様子に気づいた数名も駆け寄ってきて、必死にバリアを叩いているのだが、そんなんじゃ破れないぞ?
他の戦闘員も状況を理解したらしく、蜘蛛の子を散らすように、右往左往している。
ここは、アジトのロビーなのだろう。
『庭に続く窓』、『奥へ続く扉』、『2階に続く階段』、『地下に続く鉄の扉』などがあり、戦闘員たちはバラバラになって逃げようとしている。
逃げられたり地下に行かれたりしたら厄介なので、『2階に続く階段』以外を【バリア】で塞いだ。
見えない壁に逃げ道を奪われた戦闘員たちは、集団パニックを起こして『2階に続く階段』に殺到する。
「どけー!」
「お前こそ、じゃまだ!」
あーあ、避難する時は慌てちゃダメなんだぞ。
避難の『おかしも』を知らないのか?
『幼い』、『顔射ない』、『しゃぶらない』、『常習犯』だっけ?
「「ぎゃー!」」「ぐぇー!」
俺の心配した通りに、階段で戦闘員たちが将棋倒しを起こしてしまう。
言わんこっちゃない。
みんなも『おかしも』をちゃんと守ろうね!
運良く将棋倒しを逃れた者は、かたっぱしから鳩尾を殴って気絶させ、
階段下で伸びてる奴と一緒に、ビニール紐でぐるぐる巻きにして動けないようにしておいた。
一階はあらかた片付いた、
次は、2階だ!
俺は、意気揚々と2階に上がった。
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2階の扉を開けると、いきなり【攻撃予想範囲】が見えたので、素早く体を横にずらす。
パンッ!
さっきまで俺が居た場所に、拳銃の弾が通過していった。
いきなり撃つなよ、部下だったらどうするつもりだ?
「貴様、何者だ?」
ボスがすごみのある声で問いかけてきた。
「問われて名乗るもおこがましいが、
ジャパニーズ忍者マン・只今参上!」
「……」
滑った……。
「どうやら頭がおかしいらしい。
おい、お前たち、相手をしてやれ」
「「おう!」」
ボスの左右に控えていた二人が、指をポキポキ鳴らしながら前に出てくる。
一人は、オールバックの痩せのっぽ。手にはナイフを持っている。
もう一人は、角刈りのオークのような大男。こいつは鉄バイプを振り回している。
悪の『助さん格さん』といった感じだ。
先ずは格さんが鉄パイプで殴りかかってきた。
「うりゃー!」
パシッ!
「え!?」
俺に鉄パイプをキャッチされたのが信じられないらしく、格さんは目が点になっていた。
バキッ!
そして、後ろからこっそりナイフを刺そうとしていた助さんは、俺の回し蹴りで吹っ飛んでいた。
さらに、格さんを一本背負いして、起き上がろうとしていた助さんにぶつけるように投げ飛ばした。
69体勢で互いの股間に顔を埋めたままのびてしまった助さんと格さん。
まあ、マフィアって言っても普通の人間ならこんなもんだよな。
「ほう、ただのコスプレ変態バカかと思ったら、それなりにやるじゃないか」
誰がコスプレ変態バカだ!
ボスは、俺に向けて拳銃を構えていた。
「どんなに強いバカでも、これには敵うまい」
そして、ボスは、何の躊躇もなく引き金を引いた。
予兆などが無く、いきなりの攻撃だったので『攻撃予想範囲』が表示されたのもギリギリだった。
まあ、こんな攻撃簡単に避けられ……
俺は、避けるのを急遽取りやめ、バリアをはった。
パリン!
流石のバリアも拳銃の弾は受けきれなかったらしく、砕け散ってしまう。
俺は、少し速度の落ちた拳銃の弾を、インベントリから取り出した【白帯刀】で切り落とした。
あ、危なかった……。
「お前! 何処狙ってるんだ!!」
俺は怒りに震えていた。
俺の後ろには、助さん格さんがのびている。
俺が拳銃の弾を避けていたら、後ろの二人に当たっていただろう。
奴は、それを分かっていて撃ったのだ。
「ぐははは」
ボスは、大笑いし始めた。
「何が可笑しい!」
「お前、日本人だろ?」
え? 何故バレた?
ちゃんと中国語を話していたし、忍者衣装で顔もほとんど隠れているし、分かるはず無いのに!
「後ろの二人はお前の敵だろう?
敵が死のうがお前には関係ないはずだ。
なのに何故怒っている?
そんなバカは世界中探しても日本人だけだ!」
「それの何処がバカなんだ!」
「どうしてバカなのかも理解できないのか?
だから70年前に戦争で負けたんだ」
ボスは、そう言うと……
座っていた椅子の後ろから、『機関銃』を取り出し……。
ズバババババババ!!
なんの躊躇もなく、いきなり乱射し始めた。
信じられない、何故あんなに躊躇なく人殺しが出来るんだ?
しかも、味方のはずの2人も巻き込んで……。
俺はとっさに叫んだ。
「【トキ召喚】!!」
その瞬間、時が止まった。
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