262.ビッグ・ペーパー・ランタン
「で?
兄ちゃんは、ナンシーとデートするわけね」
「デートじゃないよ、日本観光だよ」
なぜかアヤの機嫌が悪い、
変なものでも食ったのかな?
「じゃあ、私も一緒にいく!」
「お前は短大があるだろ」
「一日くらい休んだって平気だよ」
「そう言えば、そろそろ試験があるんじゃないのか?」
「うっ……」
どうやら図星のようだ。
「というわけで、エレナとヒルダも一緒に、
日本観光に行こう」
「私たちもいいんですか?」
「エレナもヒルダも、ちゃんと日本観光したことなかったもんな」
「嬉しいです!」「わーい!!」
エレナとヒルダは大喜びし、
アヤは、ムスッとしていた。
「では、明日の日本観光に向けて、
英語を習得しに行こう」
「ん? どういう事?」
「ナンシーと会話できるように、
【瞬間移動】でアメリカに行って、
【言語一時習得の魔石+2】で英語を覚えるんだ」
「そうか!
そうすれば英語を……」
「ということで、アメリカに行くから準備して」
「どんな準備をすればいいんですか?」
「向こうで魔石を使うだけだから、適当でも大丈夫だよ」
「「はーい」」
そして、俺たちは『ロサンゼルス』へ飛んだ。
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ロサンゼルスは、真夜中だった。
「ここがアメリカ? 誰も居ないよ?」
「真夜中だからな。
えーと、午前3時だ」
「こんな夜中じゃ、お店とかやってないじゃん~」
「遊びに来たんじゃないだろ、
さっさと英語を習得して帰るぞ」
俺がなぜ、こんなに急いでいるかというと……
地図上に『注意』を示す黄色い点がたくさん表示されているからだ。
瞬間移動先を適当に選んじゃったけど、
どうやら、あまり治安が良くない地域に来てしまったらしい。
「英語の習得は出来たか?」
「出来たよ~」「「出来ました~」」
「よし、では、すぐ帰ろう」
「えー、ちょっと見学していこうよ~」
そんな話をしていた時!
「よう、お前は中国人か?」
変な酔っぱらい男に声をかけられてしまった。
アチャー、ひとあし遅かったか。
「俺は日本人だ」
「oh! 日本人!
日本人の坊やが、可愛い子を連れて、
こんな場所に何の用だ?」
坊やって……
俺は30歳なんだが……
「もう用は済んだ。これから帰るところだ」
「そんなこと言わないで、ちょっと付き合えよ」
酔っ払い男は、俺の腕を掴んで連れて行こうとする。
あれ? なんでこの男、俺ばっかり連れて行こうとするんだ?
俺は、言い知れぬ恐怖を感じた。
「止めろ!」
俺は、男の手を振りほどいた。
「ジャップのくせに生意気な奴め!
おとなしく俺に○○○されろ!!」
うわ!!
俺の全身に鳥肌が立った。
ズボッ!
気が付くと、アヤが男を殴り倒していた。
「ア、アヤ、ありがとう……
助かったよ」
「兄ちゃんの貞操が守れてよかったよ」
俺たちは、殴り倒され気絶した男を放っておいて、日本に帰国した。
~~~~~~~~~~
翌朝、アヤは短大に。
俺とエレナとヒルダは、一緒に家を出た。
俺は、会社に『直行』の連絡を入れ、
ナンシーの泊まっているホテルへ向かった。
「ナンシー迎えに来たよ」
「セイジ、おはよう。
あ、エレナ! っと、もう一人はだれだい?」
「この子は、私の妹のヒルダです」
「ヒ、ヒルダです」
エレナに紹介され、ヒルダも挨拶をした。
「エレナちゃん!? 英語を話せたの?」
「エレナはナンシーと話ができるように、わざわざ英語を覚えたんだよ」
「そうなの!? 嬉しい!!」
まあ、嘘ではないよ?
魔石で覚えただけだけど。
「いやー、話が出来る人がいなくて寂しかったんだよね~」
「この二人も日本観光したことがないって言うから連れて来たんだけど、いいよな?」
「ああ、もちろんだとも」
ナンシーも喜んでくれたみたいで、連れて来たかいがあったな。
「ところでナンシーは、行ってみたい所とかあるかい?」
「そうだな~
フジヤマ! に登ってみたい!」
「流石にいきなり富士山に登るのは無理だよ」
「そうなのか?」
「ちゃんと登山の準備して行かないと」
「じゃあ、ゴールドテンプル!」
「ゴールドテンプル??
ああ! 金閣寺か!
うーむ、新幹線とか飛行機のチケットってすぐに買えるものなのかな?」
「Oh! シンカンセン!
シンカンセンも乗ってみたい!」
うーむ、これはスケジュールをキチンと立てる必要がありそうだ。
俺は、部長に連絡をして、相談した。
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なんと、今日から金曜日までの4日間、観光に使って良いということになった。
京都方面の新幹線と宿の手配は、部長がやってくれるそうだ。
色々大丈夫なんだろうか?
「ナンシー、本当に4日も観光に使っていいの?」
「うん、私ももっと日本のことを知らないとマズイしね」
「京都方面は、明日以降になりそうだけど、今日は何処に行こうか?」
「うーん、セイジに任せるよ」
無難に浅草辺りかな?
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という訳で、ナンシー、エレナ、ヒルダを連れて、
浅草にやってきた。
「Oh! ビッグ・ペーパー・ランタン!」
ナンシーは雷門を見て大喜びしている。
エレナもヒルダもナンシーと一緒になって喜んでいる。
俺はというと……
まったく楽しめないでいた。
実は、ナンシーのホテルから、ここまでずっと―
『何者か』が、つけて来ているのだ。
地図上でも『注意』を示す黄色い点だ。
一体何者なんだろう……
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