023.足払いキャンセル昇竜
「オークに追われています! 逃げてください!」
彼らの後から、豚の顔をした魔物が現れた。
俺は、オークを【鑑定】してみた。
┌─<ステータス>─
│種別:オーク
│
│レベル:15
│HP:150
│MP:10
│
│力:30 耐久:25
│技:14 魔力:2
│
│スキル
│【斧術】(レベル:2)
│ ・盾破壊
└─────────
うーむ、前に戦った【なんちゃら騎士団長】より力と耐久は強いけど、技は同じくらいかな?
「アヤ、エレナ、俺は助けに入るけど、二人は安全な所まで離れておいてくれ。あと、アヤ、【雷の魔法】は使わないように」
「なんでよ!」
「他の冒険者が見てる前で使うのは、ちょっとまずい」
「わかった」
俺はインベントリから剣を取り出し、自分に【クイック】の魔法を掛けてから、オークと冒険者の間に割って入った。
俺は【なんちゃら騎士団長】の時のようにオークに【スロウ】の魔法を掛けてから、スローモーションになったオークの足を蹴飛ばした―
のだが、体重差があったために、転ばすことは出来なかった。
それでも、俺が割って入った事で、オークは冒険者を追うのを止めて戦闘態勢に入った。
オークは、俺より一回りほど大きく、顔のあたりはジャンプしないと攻撃が届かないほどだった。
しかしこのオークって魔物は、激しくイカ臭い!
何の臭いだよ! 戦闘中だから鼻をつまめないし!
これは精神的にダメージがくるな。
イカ臭いオークは、大きな斧を振りかぶって、俺を目掛けて振り下ろしてきた。
スローモーションの攻撃なので、剣で簡単に受けられたのだが、力の差があるために、そのまま押し込められそうになってしまった。
俺は横に移動しつつ、受け流すように斧攻撃を避けると、そらされた斧は地面に叩きつけられた。
俺はその隙を見逃さず、体勢が低くなりガラ空きになったオークの顔面を、剣で横から切りつけた。
カキン!
確かにオークの横っ面に俺の剣が命中している。
にも関わらず、剣はオークの横っ面に、かすり傷を負わせた程度だった。
「か、硬い……」
それから、しばらく戦闘が続けられたのだが。
オークの攻撃は俺に避けられて当たらず。
俺の攻撃は、オークに大したダメージを与えられない。
完全な膠着状態に陥ってしまった。
【雷の魔法】さえ使えれば、1発なのに……
オークに追われていた冒険者は、エレナとアヤを守るようにしながら、俺の戦闘を見守っている。
勝手に逃げてくれればよかったのに。
彼らは彼らで、責任を感じて少しでも役に立とうとして行動しているのだろうが、それが逆に足を引っ張っていた。
まいったな~
あの人達がいるから【雷の魔法】などの目立つ攻撃が使えない。
しばらく戦闘を継続していると―
後ろから水の玉が飛んできて、オークの顔面にヒットした。
オークが怯んだ隙を突いて、ガラ空きの腹を斬りつけると、少しだけ深めの傷を、負わせることに成功した。
どうやらエレナが、【水の魔法】で援護してくれたみたいだ。
いいぞエレナ!
腹につけることが出来た傷のお陰で、若干押し気味に戦闘を進めていると―
今度は、オークの顔面に変な風が吹きつけられた。
何事かと見てみると―
アヤが、【ドライヤー魔法】で攻撃? しているようだった。
ドライヤーの風を当ててどうする気だよ!
すると、何故かオークは、風の当たっている辺りを、熱がっているようだった。
あ、これは【ドライヤー魔法】ではなく、【ドライヤー温風魔法】か!!
微妙な攻撃だな、効いてるけど……
アヤは執拗に、オークの顔面に【ドライヤー温風魔法】を繰り返して、嫌がらせをしている。
オークは執拗な嫌がらせに腹を据えかね、ついには俺を無視して、アヤの方に攻撃目標を移してしまった。
俺は、アヤの方に攻撃が行ってしまわないように、オークを押しとどめようとしたが、体格と力に差があり、少しずつ押し込められてしまう。
ついには、俺のこと完全に無視して、アヤを追いかけ回す様になってしまった。
オークの足は遅く、俺の妨害も、あってすぐに追いつかれるということはないのだが―
イカ臭いオークに追い回され、アヤ達は逃げ惑うばかりになってしまった。
もうメチャクチャだよ!
面倒くさくなってしまった俺は、一つだけ【雷の魔法】を使ってしまうことにした。
左バッターボックスに立ち、右手一本で低めのボール球を打つ感じで、オークの踏みだそうとしていた左足のスネを、剣で横薙ぎにした。
あまり傷を負わせることは出来なかったが、弁慶の泣き所を強打されたオークは、痛みで思わずしゃがみ込もうとする。
その瞬間を見逃さず、俺は必殺昇竜技(←↓↙)の要領で、ジャンプ左アッパーを繰り出す。
そして、その左アッパーがアゴにヒットする瞬間!
左の拳からオークのアゴへ、【電撃】を流し込んだ。
【電撃】によって、オークの体に激しい電流が流れ、筋肉の収縮が起こり、オークの体がビックンと飛び上がった。
それはまるで、俺のアッパーの衝撃によって、オークの体が浮き上がったかの様に見えただろう。
浮き上がったオークの体は、後ろに半回転しながらひっくり返り、後頭部から地面に突き刺さった。
ズドーン
大きな音を立てて『まんぐり返し』の格好でひっくり返るオーク。
オークはやっと動かなくなった。
一応【鑑定】してみたが、ちゃんと倒せていた。
「セイジ様、すごいです!!」
エレナが近寄って、抱きついてきた。
「イカ臭~い!!」
アヤは、鼻をつまみながらオークをつんつんしていた。
冒険者達は、口をあんぐりと開けて、立ち尽くしていた。
最近クマの人の話を読み始めました
考えていた話に似てる部分が多くてだいぶ考えなおさないとダメかも
ご感想もお待ちしております




