258.日の出の塔9、10階
9階に登ってみると―
普通のダンジョンぽいフロアだった。
しいて言えば、若干湿度が高いことと、
イカ臭い匂いがしている程度だ。
オークでも出るのかな?
「ところで、みんなは、いつまで水着のままなのかな?」
「ちょっと寒いけど、まあこれくらいなら平気だよ」
「恥ずかしいですけど、セイジ様が喜んでくれるなら」
「この水着、動きやすいです」
まあ、3人がいいならいいか。
そんな状態のまま、通路を歩いていると―
「なにあれ!」
アヤが指差していたのは、
通路にポツンとある黒いシミだった。
「気をつけろ、
アレは敵だ」
「アレが敵??」
俺たちが少し離れた位置から様子をうかがっていると―
シミだと思っていた黒いソレから、何かが顔を出した。
「イカ!?」
黒いシミから顔を出したのは、イカっぽい魔物だった。
そして、次の瞬間。
【攻撃予想範囲】が一直線に表示された。
「みんな避けろ!」
みんなが素早く左右に避けると同時に、
イカは、ブシューっと、黒い液体を吐き出した。
「うわ、墨を吐いた!」
イカが吐いた墨によって、通路に一直線の黒いシミが出来てしまった。
しかし、イカは直ぐに黒いシミの中に隠れてしまう。
うーむ、こちらから近づくしか無いか。
俺たちは、十分に警戒しつつ、前進を始めた。
もうちょっとでイカの隠れている場所に近づける、そんな時。
俺は回れ右して、もと来た道を猛ダッシュで駆け戻った。
「兄ちゃん、なんで逃げるの!?」
俺の急な動きに、アヤたちが混乱していたが、
俺は、遥か後方の床に向けて『白帯刀』を突き刺した。
「兄ちゃん、なにやってるの!?」
俺が、床にぶっ刺した『白帯刀』を抜くと……
そこには、『イカ』が刺さっていた。
「あれ? もう一匹いたの?」
「違う、最初のイカが移動したんだ」
「移動!? どうやって??」
「多分、あの墨で黒く塗られた中を進んだんだろう」
「でも、あの墨、そんなに厚みは無かったよ?」
「おそらく、あのイカの特殊能力なんだろう」
「特殊能力か……
じゃあ黒く塗られている部分は気をつけないといけないってことだね」
「ああ」
【鑑定】してみると、『インクイカ』という魔物らしい。
けっこう厄介な敵かもしれないな。
「セイジ様、あの黒いのを洗い流してもいいですか?」
「洗い流す?」
「ええ、そうすれば、あのイカは隠れられなくなるかと思って」
「そうか!」
俺たちは、エレナの提案通り、
黒く塗られている部分を【水の魔法】で洗い流しながら進んだ。
床や壁の黒い汚れを洗い流すと、そこから動けなくなったイカがポロッと出てくることもあった。
墨を洗い流されると、まったく動けなくなるようで、
イカを20杯ほどゲットすることが出来た。
たまに大きいイカも出現し、
墨を塗りながら床や壁を泳ぐように進んでくるのも居たが、
水で洗い流すことで簡単に倒すことが出来た。
大きいイカは、『大王インクイカ』という名前らしく、【闇強化魔石】を落とした。
闇属性か。
白帯刀の試練に闇属性は無かったんだよね~
9階はそんな感じでさくさく進み、
すぐに10階への階段を見つけることが出来た。
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10階に上がると、急に寒くなった。
「寒!」
「この寒さは無理!」
3人は、水着姿を諦め、
それぞれの【格納の腕輪】から冬用の服を取り出し、着込んでしまった。
おのれ寒さ、許すまじ!
10階の様子は、海に『流氷』が漂うフロアだった。
幾つかの大きな『流氷』の間を、小さな『流氷』が行ったり来たりしている。
あの小さな『流氷』に乗って、進む感じなのだろう。
「みんな、転ばないように気をつけろよ」
「「はーい」」
俺たちは、【氷の魔法】を使って、転ばないように足元の氷をコントロールしながら進んだ。
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「あ! ペンギンだ!!」
小さな『流氷』に乗って移動し、ひとつ目の大きな『流氷』にたどり着くと、
ペンギンがたくさん居た。
ペンギンは、襲ってくるでもなく、
卵を守っていたり、トコトコと歩きまわったりしている。
「魔物じゃないのかな?」
【鑑定】してみると、普通に魔物だったが、
卵に近づかなければ襲ってこないらしい。
「卵に近づくと襲ってくるから注意して進もう」
「「はーい」」
アヤたちは、スマフォで写真を撮ったりしていた。
遊びに来たんじゃないんだけどな~
まあ、襲ってこないし、
戦わなくて済むなら、それでいいか。
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それから、幾つかの『流氷』を渡って進んでいくと、
細い通路状の『流氷』のど真ん中に、卵を守っているペンギンが居た。
「兄ちゃん、どうするの?
あれじゃ、近づかないと通れないよ」
「仕方ない、戦うか」
「「え~」」
女子たちから大ブーイングが起こった。
「仕方ないだろ!」
「だって、あのペンギンは悪くないんだよ?」
どうしよう。
寒さで、女子たちの水着姿を没収し、
女子たちのハートを掴んで、俺と対立させる……
なんて恐ろしい敵なんだ!
【水の魔法】を使えば、『流氷』を回避して、水の上を渡っていくことも可能だろう。
しかし、アヤが失敗したように、転んで水の中に落ちれば、心臓発作を起こしかねない。
ピコン!
「いいことを思いついた!
俺に任せな」
「ホントに大丈夫?
『ペンちゃん』に酷いことしたら、ゆるさないからね!」
『ペンちゃん』って誰だよ!
というツッコミは我慢して、
俺は、『ペンちゃん』にゆっくり近づいた。
「ピキー!!」
卵に近づいた俺に『ペンちゃん』は怒り始め、
魔法で氷を飛ばして攻撃してきた。
「氷バリア!」
俺の前にバリアが展開され、『ペンちゃん』の氷攻撃は俺にはまったく届かない。
「ピキー!!!」
『ペンちゃん』はさらに怒り始めた。
「【睡眠】!」
「ピキュー……」
『ペンちゃん』は俺の【睡眠】魔法で、卵を温めた態勢のまま眠ってしまった。
「兄ちゃん、よくやった!」
アヤたちは、眠ってしまっている『ペンちゃん』の写真を楽しそうに撮りまくり、
やっとの思いで、最大の難関を突破することに成功した。
その後は、【睡眠】で何箇所かを突破し、
けっきょく10階は魔物を1匹も倒さずに、
11階への階段を発見することが出来た。
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