256.日の出の塔7階
日の出の塔の7階に到達した。
6階と同じように、7階も海に足場の迷路が作られていた。
地図上の反応は、未確定の魔物ばかりなので、また違う魔物が出てくるのだろう。
「兄ちゃん。
私も、さっき兄ちゃんがやってた『アメンボ』みたいなのやってみたい。
あれ、どうやったの?」
「アレは水の表面張力を使っただけだよ」
「『表面張力』??」
「もしかして知らないのか?
コップに並々と水を入れると、少し盛り上がった状態で溢れずにいるだろ?
アレが表面張力だよ」
「やってみる!」
アヤは、【水の魔法】を使いながら、
恐る恐る右足を水面に近づけていく。
「出来た」
アヤの右足は、水に沈まずにいた。
「そのまま水の上に立てるか?」
「いける!」
アヤは、左足も水の上に乗せた。
「やった、立てた!」
アヤは、若干ふらふらしているものの、確かに水の上に立っている。
「私だってやれば出来るんだから!」
そう言ってアヤが胸を張った瞬間。
「あっ!」
アヤは、足を滑らせ、水の中にドボンと落ちてしまった。
「溺れ、る! 兄ぢゃん、助・げ・で~!」
アホだ……。
俺はとっさに水に飛び込み、アヤを助けようとしたが、
アヤが俺にすがりついてきた反動で、俺まで水に沈みそうになってしまった。
何とか【水の魔法】を使って態勢を元に戻したが、危うく俺まで溺れる所だった。
「アヤ、大丈夫か?」
「大丈夫じゃない、じぬ」
足場の上に戻ったアヤは、鼻水を垂らしていた。
「【水の魔法】が使えるのに、何故溺れる?
おかげで俺までびしょびしょだよ」
「だっでぇ~、いきなり、だっだがら……」
何を言っているか良く分からん。
インベントリから、バスタオルを取り出し、
アヤを拭いてやっていると―
エレナとヒルダは、ドライヤー魔法で俺たちを温めてくれていた。
よし、俺も温める魔法をやってみるか。
少し離れた位置から、遠赤外線を照射する球を出現させた。
「あ、これ、暖かい!」
「遠赤外線魔法だぞ」
「あ、電気ストーブのやつ?」
「そう、それ」
「いいね、ポカポカだ~」
しばらく遠赤外線にあたりながら、ホットココアを飲んで休憩していたが、
地図上で敵が近づいてきているのを発見した。
「そろそろ休憩は終わりだ。
敵が近づいてきているぞ」
「マジか!」
アヤは、服や髪が半乾きのまま、すっくと立ち上がり、辺りをキョロキョロと警戒している。
突然、俺の目の前に、【攻撃予想範囲】の赤いエリアが現れた。
そのエリアは、長細く弧を描いていた。
アヤを少し下がらせ、そのエリアを注視していると―
シュバン!
何かが勢い良く射出される音がして、
【攻撃予想範囲】を、大きめの『トビウオ』が通り過ぎた。
アレが、この階の敵か!
しばらくして、今度はヒルダの頭の位置に【攻撃予想範囲】が表示された!
とっさに【瞬間移動】でヒルダの前に移動し、【攻撃予想範囲】の場所に白帯刀を重ねた。
シュバン!
勢いよく飛び出してきた『トビウオ』は、白帯刀に当たって……
縦に真っ二つになっていた。
二枚におろされた『トビウオ』は、足場の上にボトリと落ち、ピクピクしている。
『トビウオ』って美味しいのかな?
「セイジお兄ちゃん、ありがとうございます」
ヒルダは少し怖がっているように見える。
あの攻撃、変な所に当たれば大けがをする可能性もある。
この階は、慎重に進むことにした。
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何度か『トビウオ』を二枚に下ろしながら進んでいくと―
遠くから急速に接近する未確認の魔物の反応があった。
「何か来るぞ、気をつけろ!」
アヤたちはとっさに構える。
今度は、俺の眉間にめがけて【攻撃予想範囲】が表示された。
とっさに白帯刀を構えると―
シュッ!!
み、見えなかった……
白帯刀を構えるのとほぼ同時に、どこからとも無く
そいつは飛んできた。
そして、白帯刀で真っ二つになって、足場にぽとりと落ちた。
【鑑定】してみると―
『韋駄天トビウオ』と言うらしい。
『トビウオ』と違って、羽根が左右に2枚ずつ、合計4枚もある。
どうやらこいつ、風属性らしく、
『風属性魔物討伐』が1つカウントされていた。
「怖え~」
アヤは、あまりのスピードにビビっているが、
おそらく攻撃は、あまりダメージは大きくないはずだ。
こんな低い階層でそんなヤバイ敵が出るわけがない。
少々のダメージを覚悟して、一発もらった直後に反撃すれば簡単に倒せる魔物なのだろう。
だが、女の子にダメージを追わせるわけには行かない。
全部叩き落とすつもりで行こう。
結局、この階はボスがおらず、
『トビウオ』が18匹、
『韋駄天トビウオ』を5匹倒して、
上に登る階段を発見した。
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8階は、今までと打って変わって、
ものすごい『熱気』に満ちていた。
「暑い~!!」
熱い、そして、ものすごい湿度だ。
まるでサウナの中の様だ。
「兄ちゃん、暑いよ!
脱いでもいい?」
「はしたない事をするな!
他の冒険者がいたらどうするんだ」
「冒険者なんていないじゃん!
暑い~暑い~!」
アヤは冒険者としての自覚も何もないな……
まあ、冒険者じゃないけどね。
もうちょっと涼しい服装に着替えるため、
いったん家に帰ることにした。
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