250.トキ
俺たちは、エクセターに場所を聞いて、
『トキの森』を進んでいた。
「兄ちゃん。
本当にトキを殺すの?」
「うーむ、状況を確認してからな。
ただ同じ名前だけの別の生物かもしれないし」
「セイジ様、
セイジ様たちにとって『トキ』とは、
どういう存在なのですか?」
「あれ?
エレナはトキをテレビとかで見たことなかった?
特別天然記念物に指定されてて、
絶滅危惧種なんだよ」
そんな話をしながら森を進んでいくと、急に森がひらけて、驚きの光景が広がっていた。
「トキだ!」
ドーム1個分くらいの広い沼地が広がっていて、
そこには、たくさんのトキが優雅に過ごしていた。
1000匹くらいはいそう。
どう見ても、日本と同じ、普通のトキだ。
「トキだな」
「トキだね」
「ってか、魔物じゃないじゃん!」
「じゃあ、討伐はしないの?」
「本物のトキなら、流石に討伐なんて出来ないよ」
「よかった~」
しかし、これで被害者が出てるってどういうことだろうか?
そんな風に俺が考え込んでいると……
上空から一匹のトキが降りてきた。
「うわ、なにあれ!」
アヤが驚くのも無理は無い。
降りてきたトキは、5mくらいある巨大なトキだった。
そして、巨大トキは、俺たちの少し前の地面に降り立った。
アヤたちは、とっさに戦闘態勢に入る。
「待て! 敵じゃない」
【警戒】魔法が、敵ではないことを示していた。
『人間よ、何しに来たのですか?』
しゃ、しゃべったー!
女性の声だ。このトキは雌なのかな?
「えっと、人族の言葉が分かるのですか?」
『ええ、分かります』
「兄ちゃん、なに独りで喋ってるの?」
「え? アヤには、こいつの言葉が聞こえないのか?」
「こいつって、トキの事?
こいつが何か喋ってるの?
何も聞こえないよ?」
エレナとヒルダも首を横に振っている。
俺にしか聞こえていない?
なんか似たような現象が以前にもあったような……
「あ!
もしかして貴方は『精霊』なのですか?」
『そうです、
私は『精霊』です』
マジかよ!!!
『それで人間よ、再度聞きます。
何をしに来たのですか?』
「トキの討伐を依頼されてきました」
「ちょっ! 兄ちゃん、そんなことを言ったら!」
『それで、私たちを討伐するのですか?』
「いいえ。
どうやら、教わった情報に間違いがあったようです」
『そうですか、それでは直ぐに立ち去って下さい』
「立ち去る前に、一つお聞きしたいことがあります」
『聞きたいこととは、何ですか?』
「この近くに住む人間と何があったのですか?」
『いいでしょう、説明します』
巨大トキは、これまでの経緯を話してくれた。
・人間が、トキを殺しに来る。
・人間は、トキの体内に稀に見つかる魔石を求めている。
・仲間のトキを守るため、巨大トキが、襲ってくる人間を撃退している。
・人間の命もなるべく救う努力はしているが、たまに命を落とす人間もいる。
こんなことらしい。
精霊である巨大トキが嘘を言ってるとは思えないし、
悪いのは全て人間側じゃん。
「分かりました、人間側の代表を拉…連れて来ますので、直接話しをして下さい」
『うむ、感謝します』
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俺は、アヤたちに待っててもらって、
トキの街の領主である『エクセター』の所へ【瞬間移動】で飛んだ。
「うわ! 何だお前は!
いきなり現れおって!!」
「トキが話したいそうなので、ちょっと来て下さい」
「は? 何を言っておる。
お前は確か、エレナ姫のお付の……」
「つべこべ言わずに、来い!」
俺は、『エクセター』の腕を掴んで、トキの所へ飛んだ。
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「ぎゃーーーー!!!」
エクセターは、巨大トキを見て恐れおののいていた。
「何をしている、早くトキをやっつけるのだ!」
「やっつけませんよ、落ち着いて下さい」
「なんだと!」
「ほら、混乱しているのは貴方だけですよ」
エクセターが恐る恐る、顔を上げると、
エクセターの顔の目の前にトキの顔があった。
「ひぃ!!」
「エクセターさん、貴方は俺たちに嘘をつきましたね?」
「う、嘘だと!?
し、知らんぞ」
「あなた達の方からトキにちょっかいを出しているそうじゃないですか。
トキは、人間の攻撃から身を守っているだけ。
違いますか?」
「誰がそんな事を言っているのだ」
「トキ自身から聞きました」
「魔物が人の言葉を話すわけ無いだろう!!」
「違いますよ」
「何が違うというのだ!」
「トキは、魔物ではなく、『精霊』ですよ」
「……なん、だと!」
まあ、精霊なのは巨大トキだけで、
それ以外のトキは、普通の動物なんだけどね。
「やっぱり、誤解してたんですね。
もうトキを襲うのはやめてくださいね」
「……そ、それは出来ん」
「なんでですか!
精霊なんですよ?」
「『占い』のためには、【トキの魔石】が必要だ。
アレが無いと『占い』が……」
「たかが『占い』のために、精霊を大量虐殺するつもりですか?」
「やむを得ん事だ」
「魔石なんて、魔石屋に頼めば複製できるでしょ」
「いや、【トキの魔石】は使い捨ての魔石だ。
使い捨ての魔石は複製が出来ない」
そうだったのか!
それは知らなかった。
「では、もう『占い』は、やらないほうがいいな。
エレナもそう思うよな?」
「はい、
精霊達を敵に回せば、この国は滅んでしまいます。
エクセター様、もうトキを攻撃する事はしないと、誓って下さい」
「わ、分かった……
もう、トキを攻撃しないと誓う……」
これにて一件落着!!
……じゃなかった!!
俺たちは『占い』をして貰いに来てたんだった!!
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『人族のセイジよ、この度の事、感謝します』
巨大トキが、俺に話しかけてきた。
『お礼に……』
お、なんかお礼をくれるのか!
ラッキー!
『【精霊契約】いたしましょう』
え?
『【時空魔法】がレベル6になりました』
ええーーーー!!!
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