021.ドライヤー温風魔法
俺たち3人は、街を出たすぐの草原に来ていた。
どうやってここまで来たかというとー
まずは高い建物の屋上に向かって、俺一人で【瞬間移動】し、そこから見える草原に向かってもう一度【瞬間移動】、草原へのブックマークが完了したので、戻ってきて改めて3人で草原へ【瞬間移動】したという手順だ。
「さて、魔法を使ってみるか」
「おー!」
「まずは、エレナ。お手本を見せてくれないか?」
「はい、任せて下さい!」
「おー、パチパチパチ」
「所でセイジ様、お水をお持ちですか?」
「水? ミネラルウォーターならあるよ」
ペットボトルのミネラルウォーターをインベントリから取り出し、キャップを開けてエレナに渡した。
「ありがとうございます。それでは【水の魔法】を使います。見ていて下さい」
あ、飲むんじゃなくて魔法を使うために水が必要だったのか。
「○△◇×……」
エレナが、変な呪文を唱え始めた。
俺、あんな呪文を唱えたことないんだけど―
あれって本当に必要なのかな?
エレナが呪文を唱え終えると、ペットボトルの中の水が少し光り始めた。
やがて水が、ペットボトルからニュルニュルと出てきて、空中に玉を形成し始めた。
空中に浮いた水の玉は、エレナの指が示す通りにゆっくりと動き始めた。
だが、その時!
「はくちゅっ!」
エレナがかわいらしい、くしゃみをすると―
水の玉は、ちょうど俺の頭の上で、パシャんとはじけとんだorz
「ごめんなさい! セイジ様!」
「あははは、兄ちゃんビショビショ!」
「俺様に攻撃を当てるとは、エレナもやるな!」
「ち、違うんです、ごめんなさい。すぐに拭きます」
「あー、エレナちゃん、ちょっと待った」
「アヤさんどうしたんですか?」
「私が【風の魔法】を使って、ずぶ濡れ兄ちゃんを乾かしてしんぜよう!」
「いや、そんな悠長なことをしてたら、風邪引いちゃうだろ」
「いやいや、大丈夫だって私に任せなさい。エレナちゃんも、拭いちゃダメだよ」
「は、はい」
「もう、どうでもいいから早くしてくれよ」
「それじゃあ、行くよ! 風よー吹けー!!」
アヤの変な掛け声とともに、ピューと風が吹いた。
「やった!風が吹いた!」
「丁度、自然の風が吹いただけ、なんじゃないのか?」
「そんなことないよ! 私の【風の魔法】を馬鹿にする気?」
「そうじゃないけどさー、乾かすんだから普通の風じゃなくて、ドライヤーっぽい風にしてくれよ」
「あ、そうか、ドライヤーか」
アヤは、ドライヤーを持っている感じに手を俺の前に構えて―
「ドライヤー・ゴー!」
変な掛け声を掛けた。
ゴー!
「あ、出来た!」
なんかドライヤーっぽい風が、俺の顔面に吹いてきた。
しかし、風の強さは「弱」だ。
「こんなんじゃ乾かないよ、もっと強く」
「もう、注文の多い兄ちゃんだな。ドライヤー・中~!」
ゴゴー!
「お、風がさっきより強くなった。やるな、でもなんで『中』なんだ?」
「もう、黙ってて。物には順序っていうものが、あるんだよ!」
「そうですか」
「じゃあ、次は。ドライヤー・強!!」
グゴゴゴー!
ものすごい風が、俺の顔面に吹きつけられた。
「ちょっと待て、顔面じゃなくて、濡れたところを乾かせよ、それにちょっと寒いよ」
「寒い?そうか『温風』にしないと。でも、『温風』ってどうすればいいのかな?」
「そんなの知るかよ」
「ドライヤーの温風って、電気で風を温めてるんだっけ?」
「そうだな、電熱線に電気を通して、風を温めてるんだ」
「【雷の魔法】も使えるから、温風も出来るかな?」
アヤは俺に冷たい風を送りつけながら、ウンウン唸っている。
なんでもいいから早くしてくれ、ほんとに風邪を引いてしまう。
「ドライヤー・温風!!」
ぼわー!
「お、暖かい!」
「やった! 成功だ!」
俺とアヤが【ドライヤー温風魔法】を完成させていると、エレナは呆気にとられていた。
「アヤさん凄いです、新しい魔法を作ってしまうなんて!」
アヤとエレナは、手を取り合ってぴょんぴょん飛び跳ねて、新魔法の完成を喜んでいた。
のだがー
アヤは急にへなへなと、へたり込んでしまった。
「アヤさん、どうしたんですか!?」
「なんか疲れちゃった」
「疲れた? もしかして魔法の使い過ぎなんじゃないか?」
俺は、アヤを【鑑定】してみた。
┌─<ステータス>─
│名前:丸山 アヤ
│職業:高校生
│状態:(言語一時習得)
│
│レベル:1
│HP:100/100
│MP:10/170 (+30)
│
│力:8 耐久:7
│技:12 魔力:17 (+3)
│
│スキル
│【風の魔法】
│ (レベル:2 ↑、レア度:★)
│ ・風コントロール
│ ・ドライヤー弱 ★NEW
│ ・ドライヤー中 ★NEW
│ ・ドライヤー強 ★NEW
│
│【雷の魔法】
│ (レベル:2、レア度:★★★★)
│ ・電撃発生
│ ・電撃コントロール
│
│【複合魔法】★NEW
│ (レベル:1、レア度:★★★★)
│ ・ドライヤー温風 ★NEW
└─────────
バカな! なんか色々上がったり、追加されたりしてる!
魔法って、こんなに自由度の高いものなのか?
「やっぱりMPは、ほとんど無くなっちゃってるな。けど、今ので【風の魔法】のレベルが上って【複合魔法】っていう新しい項目が追加されてたぞ」
「まじ!? やったー!! 早くMP回復しないかな~」
俺は、インベントリからレジャーシートを取り出して敷いてやり、アヤとエレナを座らせた。
「ここで座ってな」
「うん、わかった…… じゃあ代わりに、こんどは兄ちゃんの魔法を見せてよ」
「おう、任せとけ。見とけよ見とけよー!」
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