239.ヒルダ覚醒
魔族の街につくと、回復精霊の加護の中に入って休憩している兵士がたくさんいた。
しばらく休憩して、兵士たちはまた飛び出していく。
そんな状態の繰り返しだ。
よほど消耗しているのだろう。
俺たちは、ブンミーさんの所へやって来た。
「ブンミーさん、状況はどうですか?」
「おうセイジ殿、来てくれたのか助かる。
見ての通り、みな消耗しきっている。
エレナ殿の魔法のおかげで、なんとか持ちこたえている状況だ」
やはり、かなりカツカツな状況だな。
魔族の人たちは、魔力を使って肉体を強化し戦うスタイルだ。
魔力切れのことを考えると、長期戦は苦手なのかもしれないな。
そこへ、カサンドラさんがフラフラとした足取りで戻ってきた。
「カサンドラさん!」
「あ、ヒルダ」
ヒルダは、フラフラしているカサンドラさんに駆け寄った。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫、ただの魔力切れ…」
カサンドラさんは、ヒルダに付き添われてブンミーさんの横に座り込んだ。
「戦況はどうだ?」
「まだ、魔物多い」
「そうか……」
そこへ、今度は舞衣さんが戻ってきた。
「あ、お兄さん、他の街はもう片付いたのかい?」
「ええ、今のところ、この街が一番苦戦中だよ」
「そうか、ボクがついていたのに申し訳ない」
「それと、百合恵さんが見つかったよ」
「ほんとかい!?」
「ええ、悪魔族たちに操られて利用されてた。
怪我はないけど、今は眠っていて、エレナが介抱しているところ」
「そうか、それじゃあ、早くここを終わらせて百合恵くんの所へ行かないとな」
百合恵さんの朗報を聞いた舞衣さんは、元気を振り絞ってまた立ち上がった。
「部長、私も行くよ」
アヤも舞衣さんに続く。
「二人とも、待ちな。
【クイック】をかけてやろう」
舞衣さんとアヤは、【クイック】をもらうと、勢い良く飛び出していった。
俺も行きたいところだけど、度重なる【瞬間移動】と百合恵さんの戦いで魔力を消耗してて、ちょっと厳しいんだよね。
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「あ、君は、ヒルダちゃん!」
一人の兵士が、ヒルダがいることに気がついて駆け寄ってきた。
「ヒルダちゃん、飴をくれないか?」
おそらく、魔力を消耗しているのだろう。
そして、それを聞いた近くの数名も、ヒルダの所へ集まってきた。
「ご、ごめんなさい、飴はもうなくなってしまったんです……」
ヒルダが、残念そうにそう答えると、
集まっていた兵士たちも、残念そうに、
「そうか……」
と、去っていった。
取り残されたヒルダは、少し涙目になっていた。
こんなことなら、飴や和菓子をもっと持ってくるんだったな~
悲しそうな顔をしているヒルダの頭をナデナデしながら、
俺は、ポロッと……
「魔法で、飴が作れたらよかったんだけどね~」
失言だった……
こんな出来もしない事を言っても、なんの慰めにもならないのに……
しかし、ヒルダは、
目を輝かせて―
「そうですね! 私、やってみます!!」
元気にそう答えた。
ごめん、ヒルダ。
俺が、こんな出来もしないことを言ってしまったばっかりに……
「出来ました!!」
ん?
出来たって、何が??
ヒルダは、ニコニコ顔で、
手のひらの上の、美味しそうな球体を俺に見せている。
なにこれ??
恐る恐る【鑑定】してみる。
┌─<鑑定>────
│【魔力飴】
│魔力を凝縮した飴
│舐めると魔力が回復する
│レア度:★★★★
└─────────
……
はあ!??
【魔力飴】って、なに!!?
「あー、ヒルダさん。
これ、俺が舐めてみてもいい?」
「はい!!」
元気良く差し出されたソレを、
俺は口の中に放り込んだ。
あ、あまーい!!
そして、美味しい!!!
ほっぺがとろけそうだ!
自分自身のステータスを確認したところ、通常の飴と同じくMPが100くらい回復していた。
ヒルダが、魔法で、飴を……
創りだしやがった!!!
ヒルダに、もう一個飴を作ってもらってみたが、
飴を作るのに、ヒルダのMPは30しか減っていない。
つまり、MPを30使ってMPを100回復できる。
差し引き70も回復できるじゃん!!
しかも、MPが余っている時に作っておけば、後でいくらでも使えるし、
他人にあげることも出来る。
「これは、凄い!!!
ヒルダ、君は天才だ!!」
俺が、ヒルダをなでまくっていると、
ヒルダは嬉しそうに―
「これで、みなさんに飴を配ることが出来ます!」
そうか、ヒルダは、
飴を配りたい一心で……
「よし、ヒルダ!
先ずは自分で飴を舐めて魔力を回復するんだ。
みんなに配るのは、それからだ。いいね」
「はい!」
「じゃあ、俺は魔力切れの人に声をかけてくる。
めいっぱい飴を配るんだ!」
「はい!!」
俺は、ちょっと声をかけただけだったのに、
魔力切れの兵士たちが、大勢集まってしまった。
「並んで下さい~」
俺は、ヒルダ行列の整理係として慌ただしく働いていた。
そして、当のヒルダは―
なんども魔力切れ寸前までおちいりながら、一所懸命に飴を作り続けていた。
ヒルダに飴をもらった兵士たちは、
「ありがとう、頑張ってくる!」
と、次々に最前戦に戻っていった。
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しばらく、ヒルダが飴を作り続けていると―
ヒルダの創りだす飴の色に変化が現れた。
【鑑定】してみると―
【魔力飴+1】となっていた。
【魔力飴+1】はMPを150も回復する、すごい飴だった。
さらに、それだけではありません!
今なら何と!
一定時間ステータスボーナスの追加効果もついて、
なな、なんと!!!
飴作成時のMP消費は、据え置き!
そして、ヒルダの回復魔法レベルが、
2から3に上昇していた。
俺も試しに飴を作ろうとしてみたが……
できなかった……
くやしい!
でも、ヒルダが可愛いからゆるしちゃう。
ご感想お待ちしております。




