237.昆布巻き
「セイジ様!」
エレナが心配そうな声をあげている。
そんなエレナも、【呪い治癒薬】を百合恵さんにぶっかける隙が出来ずに、四苦八苦している。
ここは俺が頑張って百合恵さんの隙を作らないと……
いけないんだけど……
ダメだ。
どうしても、必要以上に触手攻撃を大きく避けてしまう。
ここは、あと一歩を踏み込む勇気を!!
俺は迫り来る触手の束に、思い切って一歩踏み出した。
『いくぜ!!!』
『かわいがって、あ・げ・る!』
触手と刀がぶつかる、その瞬間。
俺は、刀をインベントリにしまって、触手の束の下に滑り込んだ。
そして、触手の束を両手で抱え込む。
それは、まるで……
『昆布巻き』を束ねる『かんぴょう』の様に……
『きゃー! 乙女の大事な所に何するのよ~!!』
百合恵さんが悲鳴を上げてる。
だから、大事な所ってなんだよ!
「エレナ! 今だ!!」
「はい! セイジ様!!」
エレナは、この隙に、【呪い治癒薬】を【水の魔法】でコントロールし―
百合恵さんの顔面にぶっかけた!
『きゃー! なにこれ!!』
百合恵さんは、顔射されたことに驚いて、触手をスカートの中に引き戻した。
「セイジ様、やりました」
「エレナ、よくやった」
俺が、エレナに抱きつこうとしたのだが……
エレナに避けられてしまった。
「エレナ、何故よける」
「だって……セイジ様……」
よく見ると、俺の体は―
チーズの腐った臭のする液で、ベトベトになってしまっていた。
そうか、さっき昆布巻き作戦の時に……
仕方ない、エレナに抱きつくのは後にしよう。
『ぐわあああーーー!!』
そんな事をしていると、百合恵さんが苦しみだした。
よく見ると、お面から、ジューという何かが溶ける音とともに、黒い煙が立ち込めている。
百合恵さんは、しばらくのた打ち回ると、倒れて動かなくなってしまった。
「大丈夫でしょうか?」
「呪いが解けただけだから、きっと大丈夫だ」
俺たちの見守る中、百合恵さんのお面が、
ポロッと、床にこぼれ落ちた。
【鑑定】してみると、百合恵さんの『呪い』は消えていた。
「やったぞ、呪いが解けてる」
俺の言葉を聞いたエレナは、素早く百合恵さんに駆け寄った。
「セイジ様、大丈夫です。
百合恵さんは、どこも怪我をしていません」
「そうか! よかった」
百合恵さんは、どうやら魔力を消費して眠っているだけのようだ。
「セイジ様、百合恵さんを私の部屋に運びましょう」
「おう、任せろ」
自分の体についたベトベトの汁を拭い、
百合恵さんをバスタオルで包んで、
お姫様抱っこをして、エレナの部屋へ運んだ。
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エレナの部屋には、新しいベッドがおいてあった。
おそらく王様が、エレナがいつ帰ってきてもいいように新しいベッドを用意しておいたのだろう。
「おい、セイジ!」
誰かと思ったら、王様が勝手にエレナの部屋に入ってきていた。
「なんだ? 王様か」
「何だとは何だ!
そんな事より、その女をどうするつもりだ!」
「どうするも何も、介抱しているんだろうが」
「その女は、ワシを襲った敵なのだぞ!!」
「お父様、違います!」
エレナが急に反論してきたので、王様はびっくりしていた。
「この百合恵さんは、私の大事なお友達です!
悪魔族に操られていたのです!
敵などではありません!!」
「そ、そうか……」
エレナのあまりの剣幕に、王様はタジタジだ。
おっと、もう一人の女のことを忘れていた。
「エレナ、百合恵さんの事は任せた」
「はい、お任せ下さい」
「王様も、エレナのじゃまをするなよ」
「ワシに指図するな」
あーあ、王様は助けるんじゃなかったな~
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謁見の間に戻ると、盾を持っていた女はまだ気絶していた。
俺は、臭いベトベトを我慢して、女の身体検査をした。
女のかぶっていたフードを取ると、やはり角が2本。
予想通り悪魔族だ。
そして……
【混乱誘導の魔石】、【混乱抹殺の魔石】、【自害の魔石】を所持していた。
┌─<鑑定>────
│【混乱誘導の魔石】
│混乱している者を誘導出来る
│誘導時は近づく必要がある
│レア度:★★★★
└─────────
┌─<鑑定>────
│【混乱抹殺の魔石】
│混乱している者に接触して
│魔力を込めることで抹殺出来る
│レア度:★★★★
└─────────
┌─<鑑定>────
│【自害の魔石】
│魔力を込めることで自害出来る
│肉体や持ち物を完全に消し去る
│レア度:★★★★
└─────────
ヤバイ魔石ばかりだ。
この3つから見えてくるストーリーは……
1.一緒に行動して、百合恵さんを操作する
2.作戦が失敗したら百合恵さんを抹殺する
3.そして、自分は自害して証拠を隠滅する
こんな流れを想定していたのだろう。
ちなみに、真っ黒な盾は―
┌─<鑑定>────
│【常闇の盾】
│発動中の魔法を打ち消す盾
│物理攻撃は防ぐことは出来ない
│レア度:★★★★
└─────────
こんな感じだった。
3つの魔石と、盾をインベントリにしまい、
悪魔族の女を後ろ手に縛り上げた。
そこへ、ライルゲバルトが息を切らせて入ってきた。
「王様! ご無事ですか!!」
「なんだ、ライルゲバルト。
今頃のこのこやって来たのか?」
「セ、セイジ!!
王様は!?」
「無事だよ。
悪魔族もこの通り、捕らえてやったぞ。
ってか、今まで何してたんだ」
「どうやら眠らされていたようで、
先ほど気がついたんだ……
面目ない」
まあそうだろうな。
「リルラが、心配していたぞ。
さっさと連絡入れとけ」
「そ、そうか……」
王都は何とかなった。
百合恵さんも取り返せた。
あとは、さっさと他の街の戦いを終わらせて、日本に帰ろう、そうしよう。
俺は、疲れきっている体に鞭を打って、立ち上がった。
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