236.グロい女
百合恵さんのスカートの中から伸びてきた複数の真っ黒な触手は、
いやがるエレナに襲いかかった。
「エレナ!」
俺は、白帯刀を抜いて真っ黒な触手をぶった切った。
『ぎゃー! 乙女の大事な所に乱暴しちゃらめー』
百合恵さんが悲鳴を上げる。
大事な所ってなんだよ!
ぶった切った触手は、床に「べちょっ」と音を立てて落ちた。
なんだこれ!?
触手を切った白帯刀にも、なんかベトベトした液体が付着している……
ってか! このベトベトの液体、なんか腐ったチーズのような匂いがする!
切り取られた触手は、まだ床で『うねうね』と動いているし、気持ち悪い事この上ない。
しばらく観察していると―
切り取られた触手がピーンと硬直したかと思ったら、
どびゅーっと白い液体を吐き出しやがった。
白い液体は、床に扇状に飛び散って、なんかイカ臭い匂いが漂っている。
気持ち悪すぎる……
あんな触手を、大事な刀で斬りたくない。
部屋は、イカとチーズの腐ったような嫌な匂いで充満していた。
『あらら、よごしちゃった~』
百合恵さんは、さらに触手攻撃を仕掛けてくる。
あんな気持ち悪い触手でエレナを汚す訳にはいかない。
気持ち悪いけど、俺がなんとかするしか無い。
俺が触手を斬りまくると、
部屋のあちこちで床が汚されていく。
汚れた床には近づきたくないので、
触手を斬れば斬るほど、戦える場所が減っていってしまう。
これはヤバイ。
下手に動き回れば、あのベトベトの白い液体で足を滑らせ、転んで、そして体全体ベトベトに……
考えただけでも背筋が凍る。
百合恵さんに怪我をさせたくはなかったが、仕方ない。
やるしか無い!
俺は、【可燃ガス生成】と【着火】の魔法を使って、火炎放射器のように炎を吹き出した。
そして、炎は百合恵さんに向かっていく。
しかし俺の炎は、飛び出してきた盾の女性に阻まれ、百合恵さんには届かなかった。
『きゃー! 火の夢をみたら、おねしょしちゃう!』
夢じゃないし!
おねしょしてもいいから、早く目をさましてくれ……
百合恵さんは、あの盾の女性が守ってくれる。
俺は思う存分、炎を巻き上げた。
「やめろ! わしの城が燃える!!」
誰かと思ったら、部屋の陰で隠れていた王様かよ。
役に立たない王様は黙っててくれ。
城の1つや2つ、我慢しろよ!
炎が収まると、床に撒き散らされていた白い液体は―
カピカピになっていた……
しかも、炎で熱したことで、部屋中に腐ったチーズの焼ける匂いと、腐ったイカの焼ける匂いが充満してしまった。
エレナも口を抑えている。
しかし、これで足場の悪さを何とか出来た。
カピカピの部分を踏むのも嫌だけど、贅沢は言っていられない。
俺は、百合恵さん―
ではなく、盾の女性に向かって駈け出した。
『私の子猫ちゃんが危ない!』
百合恵さんは、盾の女性を守ろうと、触手を伸ばしてくる。
今だ!
俺は、盾の女性の後ろに【瞬間移動】して、女性の背中をドンと押した。
『え!?』
背中を押された女性は、襲い来る触手の中に……
『ぎゃー!!』
悲鳴を残して、女性は触手に飲み込まれていってしまった。
『あれ? 間違って子猫ちゃんを襲っちゃった』
女性を飲み込んでいた触手がにゅるにゅるとほどけると―
中なら汁まみれの女性がデロンと出てきた。
女性はピクピクと痙攣して、
ものすごい顔で気を失っていた。
ご愁傷さまです。
『さあ、百合恵さん。
もう守ってくれる人はいませんよ。
観念して下さい』
『まちがっちゃった~
でも、子猫ちゃんが飛び込んできてくれたから~
思わず、色々美味しく頂いちゃった~』
頂いちゃったのかよ!
俺はこの隙に、百合恵さんを【鑑定】してみた。
┌─<ステータス>─
│名前:三原 百合恵
│職業:短大生
│状態:呪い(悪魔化、混乱、幻惑)
│
│レベル:5
│HP:448
│MP:1,478
│
│力:65 耐久:15
│技:45 魔力:152
│
│スキル
│ 闇5、鞭術4
└─────────
状態異常の呪いがヤバイ、効果が3つも付いている。
『悪魔化』ってなんだ?
スキルもヤバイ感じだ。
闇5ってなんだ!?
なぜ鞭が使えるんだ!!?
おそらく、呪いの原因はあの般若の面だろう。
面も【鑑定】してみた。
┌─<鑑定>────
│【悪魔の面】
│装備した者に悪魔の心を植え付け
│正常な判断ができない状態にする
│レア度:★★★★
└─────────
やはりアレが原因か!
俺が、インベントリから【呪い治癒薬】を取り出していると―
触手が俺を襲ってきた。
「わっ!?」
何とか避けることが出来たけど……
服に腐ったチーズ臭い液がかかってしまった。
なおもしつこく攻撃してくる百合恵さん。
嫌だ!
触りたくない!
斬りたくもない!
必要以上に避ける必要が有るため、せっかく取り出した【呪い治癒薬】を使うヒマがない。
「エレナ頼む!
原因はあの面だ!」
俺は、【呪い治癒薬】をエレナに放り投げつつ叫んだ。
「セイジ様、分かりました!」
そして、触手攻撃を避け続けていた俺は……
徐々に押され始めていた。
ご感想お待ちしております。




