234.街の巡回2
とりあえず、行ける所を回り終えてどうしようかと考えていたら―
「ねえ、お兄さん」
舞衣さんが、俺の服を引っ張ってきた。
「舞衣さん、なんですか?」
「お爺さんの所は大丈夫かな?」
「お爺さんの所?
ああ、魔族の街ですね」
「うん」
一度襲われたからもう大丈夫、ということにはならないもんな。
俺たちは、魔族の街に行ってみることにした。
~~~~~~~~~~
「セイジ殿、いいところへ来た」
舞衣さんの心配が当たっていたらしく、
魔族の街は魔物に襲われていた。
「ブンミーさん、大丈夫ですか?」
「今回の魔物は前回より強い、情けない話だが少し手こずっている」
「魔王と先代魔王様は?」
「もうすでに戦う準備をなさっている」
そんな状況か!
「お兄さん、ボクがここに残るよ」
「し、しかし……」
「危なくなったら助けに来てくれるんだろ?」
「舞衣さんにはビーコンを付けてないから、危険を察知できないですよ」
「じゃあ、そのビーコンをボクに付けておくれよ」
「いいんですか?」
「が、我慢する」
舞衣さんが言うんなら仕方ない。
べ、別に、幼女覗き放題とか思ってないんだからね!!
注射を我慢するように目をつぶっている舞衣さんに、【追跡用ビーコン】を取り付けた。
もう外せるビーコンが無いので、
仕方なしにアジドさんのビーコンを外してしまった。
ごめんねアジドさん。
「あれ? もう終わり?」
「ビーコン取り付けましたよ?
【鑑定】みたいに嫌な感じはしませんでした?」
「うん、何とも無かった」
なーんだ、もっと恥ずかしがるかと思ったのに……
べ、別に、幼女が恥ずかしがる姿を見たいとか、そんなんじゃないんだからね!!
「エレナは、例の魔法行けそうか?」
「もうちょっと和菓子を下さい」
「よし」
俺はインベントリから最後の和菓子を取り出して、エレナに食わせた。
「セイジ殿、エレナさんは、そんなに食べて何をしようとしているんだ?」
「街全体に魔法をかけます。
見てて下さい、凄い魔法ですよ~」
「ほう」
エレナは、口の周りに少しあんこを付けたまま、杖を構えた。
「行きます!」
杖から光が溢れだし、街全体を包み込む。
魔族の兵士たちは、少しびっくりしていたが、
変化があったのは、むしろ魔物たちの方だった。
魔物たちが嫌がって【回復精霊の加護】の中に入ってこないのだ。
「エレナ、魔物たちが嫌がっているみたいだけど、あれはなんだい?
「回復精霊が、中に入ってきた魔物たちを、くすぐってるそうです」
くすぐられて嫌がってるのか!
もしやられたら、地味に嫌な攻撃だな!
魔物たちのそんな行動を見て、魔族の兵士たちはすっかり押せ押せムードになっていった。
「エレナさん、ありがとう。
これで魔物たちを追い返せそうです」
「どういたしまして」
エレナはそう言いつつも、魔力切れで少し辛そうだった。
「ブンミーさん、舞衣さんのことはよろしくおねがいしますね」
「先代魔王様のお孫様ですから、この身に変えても守りますよ!」
「舞衣さんも、あまりムリしないでくださいね」
「おう!」
舞衣さんは、そう答えると―
魔物の群れに突っ込んでいった。
……俺の話を聞いてなかったのかな?
さて俺たちは、もう一度リルラの様子でも見に行ってみるかな。
~~~~~~~~~~
「ようリルラ、様子はどうだ?」
「セイジ! 来てくれたのか!
でも、敵は弱いし、エレナ様の魔法も効いているし、
今のところは大丈夫そうだ」
「そうか、それは良かった。
ところで『王都』の方はどうだ?
あれから連絡は来てないのか?」
「『王都』?
あ!
双子魔石の魔道具、屋敷に置きっぱなしだった……」
おいおい、テンパり過ぎだよ。
王都から連絡が来てたらどうするんだ。
留守番機能とか無いんだぞ。
リルラは、部下に命令して取りに行かせた。
「なあに、こんな敵くらい、お父様にかかれば余裕だ」
リルラにとって、ライルゲバルトは強い父というイメージなんだろうな。
もうすでにリルラの方が強いのに……
俺はしばらくの間、各街の様子を追跡用ビーコンを使って確認した。
エレナは、和菓子を全部食べてしまい、飴を舐めつつ魔力の回復に努めていた。
とりあえず、どの街の問題なさそうだ。
ひと安心した所で、リルラの部下が双子魔石の魔道具を持ってきた。
「ごくろう」
リルラが部下から受け取り、ライルゲバルトに連絡を入れた。
「お父様、王都の様子はどうですか?」
……
応答がない。
「お父様?」
……
ダメだ、いっこうに応答がない……
一体どうしたんだろう?
「どどど、どうしよう、お父様から返事が来ない!」
「リルラ落ち着け」
仕方ない、様子を見に行ってみるか。
「エレナ、王都の様子を見に行ってみよう」
「はい」
「セイジ、頼んだぞ!」
リルラは、泣き出しそうな表情で俺にすがりついてきた。
「任せておけ。
なーに心配ないさ、きっとトイレにでも行っているんだろうさ」
それにしても、まさか悪魔族がこんな大規模な行動に出てくるとは……
しかし、百合恵さんは何処へ行ってしまったのだろう……
百合恵さんの捜索のために来たのに、もうそれどころではなくなってしまった。
俺たちは、リルラと別れ、
一路、王都へ向かった。
ご感想お待ちしております。
今年は大変お世話になりました。良いお年を!




